弟を溺愛していたら、破滅ルートを引き連れてくる攻めに溺愛されちゃった話

天宮叶

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拒否する必要ってあるのか?

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「そんなつもりはなかった。その魔具はやはり返してくれ。後日また別のものを用意する」

「だーめ。これはもう俺のだもん」

 背の後ろに隠されて奪うこともできなくなってしまった。よほど嬉しかったのか、いつもの倍以上も頬を緩めているルーカス。
その表情を見ていると毒気を抜かれてしまう。

「似合うかな」

 いつのまに着けたのか、左手の薬指に指輪がはめられていた。サイズもちょうどいいようだ。サイズのことなど考えていなかったため少しだけ安堵した。

「似合ってる」

 今だけは素直に思ったことを伝えてもいい気がしていた。
 まるで彼のためにあつらえたかのように思えたからだ。それほどまでに指輪はルーカスの手に馴染んでいる。

「酒を取ってくるよ。もう少しだけ話していたい」

「そうだな。たまにはいいだろう」

 こうやってルーカスとゆっくり話す機会も少ない。それにいままでは意図的に話すことを避けていた。
 ストーリーのことなど、もう気にする必要もなくなってきているのかもしれない。けれど、決められたことは起こる。だから完全に気を緩めることもできない。

「破滅ルートか……」

 酒を取りに行ったルーカスの背を見つめながらポツリとつぶやいた。
 ゼンはルーカスを殺そうとして僻地に追いやられ、フィーロはシャノンに嫉妬して悪逆の限りを尽くし処刑される。伯爵家は解体され、一家は罪を背負って生きていくことになった。 
 それがレゲンデア伯爵家の末路だ。
 そしてそのすべての要因にルーカスが関わっている。

 ──本当にそんな未来が訪れるのだろうか?

 フィーロとシャノンの笑い声が聞こえてきて胸が温かくなる感覚がした。
 今まで行ってきた努力も、そのおかげで得られた喜びや笑み、それに家族の温もりも、全部消えてなくなったりなどしない。

「ただいま。ゼンは甘いのは苦手だと思ったからスッキリしたものを持ってきたよ」

「……あぁ」

 それならルーカスを避ける必要も、執拗しつように拒否する意味もないのではないだろうか?
 受け取った酒を一口喉に流しこんだ。腹の奥に落ちて染みる温かな液体の感覚は久しぶりだ。
 そこでふとゼンは自分が下戸だということを思い出した。

「あ……飲んでしまったな」

「ゼンどうしたの?」

 固まっているゼンの顔をルーカスが窺うように覗き込んでくる。
 前世では大酒飲みだったため忘れていた。ゼン・レゲンデアというキャラは目っぽう酒に弱く、飲むとすぐにへべれけになってしまう。
 小説内でも一度だけそういう描写がされたことがあった。しかもいつもの反動か、酒を飲むと周りに絡みまくる。

「顔が赤いけど……。まさか一口で酔っちゃったの?」

「そんなことはない」

 否定したと同時に一気に顔が熱くなった。
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