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変わってきているものもある
「怪我してるでしょう。さっき踊ったときだよね」
「気づいていたのか」
いつもなら怪我などしていないと否定するが、気づかれていたことに驚いて素直に白状してしまった。
馬鹿にしてくるかもしれないと思っていたのに、ルーカスが眉をハの字に下げて心配そうな表情を浮かべながら見つめてくるから、そんな考えは消え去ってしまう。
「ゼンは隠しごとが上手だけど、ちょっとだけ左足をかばうように体の重心が右に傾いていたから。座って治療して。ここなら誰も見ていないから」
傾いているといってもかすかな違いだ。そんな小さなことに気がつくのは騎士団長をしているルーカスくらいだろう。
お言葉に甘えて備え付けのベンチに腰掛けると、治療魔術で左足首を癒す。
「俺のことをよく見ているんだな」
「いつも見つめてるよ」
「そんなに俺のことが好きか?」
冗談で尋ねたつもりだった。それなのに、ゼンが言葉を発した瞬間お互いの間に流れる空気感が変化した気がした。
「愛してるって言ったら、もう少しだけ俺の気持ちを受け止めてくれる?」
真剣な眼差しに心臓が射抜かれる感覚がした。
曖昧な言葉で返せるような雰囲気ではない。
ずっと強い言葉で拒否してきた。それは単純に小説のストーリーから外れて、彼の思いを受け止めることが怖かったからだ。
現実は物語とは違うとわかっていても、いつかルーカスが自分を殺す日が来るのかもしれない。そんな結末を知っているから、どこか壁を作って彼を遠ざけようとしてしまう。
「ルーカス、俺はお前が羨ましい」
小説のストーリーなんて気にせず、思うままに動いていける。その自由さや強さ、完璧なアルファである面。彼のなにもかもがゼンの目には眩しく映るから、ただ羨ましかった。
「俺はいつもなにかに縛られている。だから俺とは正反対のお前が心底羨ましくて、憎かった」
「……今もそれは変わらない?それとも変えられないのかな?」
「変わってきているのかもしれない」
楽しそうに踊っていたフィーロとシャノンの姿を思い浮かべると笑みをこぼした。
いまこの瞬間には悪役も主役も存在しない。それはきっと変えようと努力してきた証なのだろう。
「これをやる」
ゼンはポケットから指輪の入ったケースを取り出すとルーカスの目の前に差し出した。
「これって……」
「誕生日おめでとう。少なくとも前よりはお前のことを好ましいと思っている。だから、誕生日の祝いにこれをやる」
もらえると思っていなかったのか、目を瞬かせて固まっているルーカスの手に、無理やりケースを押し付けた。
贈り物をするのがこんなにも気恥ずかしいことだとは思ってもいなかったため、ゼンも少しだけ緊張している。
「中を見てもいいかな?」
「好きにしろ」
返事を受け取ったルーカスが慎重にケースの蓋を開けた。
会場内から漏れているかすかな照明の光が反射して、ゴールドの指輪が一際輝き、存在を主張していた。
「指輪だね」
「それは優れた魔具で、持ち主に幸福を──」
指輪の説明をしようと口を開いた瞬間、ルーカスが強く強くゼンのことを抱きしめた。
甘いフェロモンの香りが鼻を抜けていく。よく知っているルーカスのにおいと、温かすぎる体温が全身を包む。
突然のことに動揺を隠せないゼンは、抵抗することもできず固まっていた。
「ゼンはズルいなぁ……」
「なにがズルいんだ?」
「絶対に無自覚にプレゼントを選んだんだろうなってわかっちゃうところが可愛くて、でもズルい。俺だけがどんどん好きになっていくのに、君はまったく意識してくれないところもズルいよ」
そんなことを言われてもまったくゼンにはピンとこなかった。
フィーロも可愛いと言っていたけれど、いまだに理解できていない。
「ただの魔具だろう。喜びすぎだ」
「婚約者に指輪を贈るなんて、プロポーズしているのと変わらないよ」
笑いまじりの声が耳元から聞こえてきた。同時にその言葉を聞いた瞬間に、ようやくフィーロが何度もプレゼントについて尋ねてきた理由がわかった。
「気づいていたのか」
いつもなら怪我などしていないと否定するが、気づかれていたことに驚いて素直に白状してしまった。
馬鹿にしてくるかもしれないと思っていたのに、ルーカスが眉をハの字に下げて心配そうな表情を浮かべながら見つめてくるから、そんな考えは消え去ってしまう。
「ゼンは隠しごとが上手だけど、ちょっとだけ左足をかばうように体の重心が右に傾いていたから。座って治療して。ここなら誰も見ていないから」
傾いているといってもかすかな違いだ。そんな小さなことに気がつくのは騎士団長をしているルーカスくらいだろう。
お言葉に甘えて備え付けのベンチに腰掛けると、治療魔術で左足首を癒す。
「俺のことをよく見ているんだな」
「いつも見つめてるよ」
「そんなに俺のことが好きか?」
冗談で尋ねたつもりだった。それなのに、ゼンが言葉を発した瞬間お互いの間に流れる空気感が変化した気がした。
「愛してるって言ったら、もう少しだけ俺の気持ちを受け止めてくれる?」
真剣な眼差しに心臓が射抜かれる感覚がした。
曖昧な言葉で返せるような雰囲気ではない。
ずっと強い言葉で拒否してきた。それは単純に小説のストーリーから外れて、彼の思いを受け止めることが怖かったからだ。
現実は物語とは違うとわかっていても、いつかルーカスが自分を殺す日が来るのかもしれない。そんな結末を知っているから、どこか壁を作って彼を遠ざけようとしてしまう。
「ルーカス、俺はお前が羨ましい」
小説のストーリーなんて気にせず、思うままに動いていける。その自由さや強さ、完璧なアルファである面。彼のなにもかもがゼンの目には眩しく映るから、ただ羨ましかった。
「俺はいつもなにかに縛られている。だから俺とは正反対のお前が心底羨ましくて、憎かった」
「……今もそれは変わらない?それとも変えられないのかな?」
「変わってきているのかもしれない」
楽しそうに踊っていたフィーロとシャノンの姿を思い浮かべると笑みをこぼした。
いまこの瞬間には悪役も主役も存在しない。それはきっと変えようと努力してきた証なのだろう。
「これをやる」
ゼンはポケットから指輪の入ったケースを取り出すとルーカスの目の前に差し出した。
「これって……」
「誕生日おめでとう。少なくとも前よりはお前のことを好ましいと思っている。だから、誕生日の祝いにこれをやる」
もらえると思っていなかったのか、目を瞬かせて固まっているルーカスの手に、無理やりケースを押し付けた。
贈り物をするのがこんなにも気恥ずかしいことだとは思ってもいなかったため、ゼンも少しだけ緊張している。
「中を見てもいいかな?」
「好きにしろ」
返事を受け取ったルーカスが慎重にケースの蓋を開けた。
会場内から漏れているかすかな照明の光が反射して、ゴールドの指輪が一際輝き、存在を主張していた。
「指輪だね」
「それは優れた魔具で、持ち主に幸福を──」
指輪の説明をしようと口を開いた瞬間、ルーカスが強く強くゼンのことを抱きしめた。
甘いフェロモンの香りが鼻を抜けていく。よく知っているルーカスのにおいと、温かすぎる体温が全身を包む。
突然のことに動揺を隠せないゼンは、抵抗することもできず固まっていた。
「ゼンはズルいなぁ……」
「なにがズルいんだ?」
「絶対に無自覚にプレゼントを選んだんだろうなってわかっちゃうところが可愛くて、でもズルい。俺だけがどんどん好きになっていくのに、君はまったく意識してくれないところもズルいよ」
そんなことを言われてもまったくゼンにはピンとこなかった。
フィーロも可愛いと言っていたけれど、いまだに理解できていない。
「ただの魔具だろう。喜びすぎだ」
「婚約者に指輪を贈るなんて、プロポーズしているのと変わらないよ」
笑いまじりの声が耳元から聞こえてきた。同時にその言葉を聞いた瞬間に、ようやくフィーロが何度もプレゼントについて尋ねてきた理由がわかった。
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