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新しい出会い
第399話 この島に来た理由
しおりを挟む「君――じゃなくてヴィオは覚えていないかもしれないけど、白雪、ベル坊、ルイスの命の恩人なんだよ。改めて礼を言わせてほしい。三人を救ってくれてありがとう」
チアキさんがそう言って頭を下げれば、三人もそれに倣って頭を下げてくる。
「いやいや、覚えてないし、ベルフォンスさんを治療したのは白雪さんなんですよね? 私は何もしてないですよ」
「いや、其方は鞄の中から大量の回復薬を出してくれてな、我も魔力切れにならずに済んだし、ベル坊の体力回復が早まったのもそのお陰じゃった。ルイスはそれこそ薬が無ければ回復魔法が間に合っておらんかったかもしれんしな」
「ええ、小瓶を口に突っ込まれるという初体験には驚きましたが、あの時はそれが一番手っ取り早かったのだという事もよく分かりましたから」
なんと、この青年の口に私が回復薬を突っ込んだんですか……。まあ、記憶がない時間の事なので無罪という事でひとつ。
「それにしても、なぜ私はこの島に来たのでしょうか?」
「ああ……」
「それは……」
大人二人が言い淀む中、チアキさんがベル少年に何かを告げている。ベル少年は少し驚いた顔をした後、一つ頷いて私に向き合って真剣な顔でこう言った。
「俺が惚れたんだ。おまっ……、ヴィオをあのままあそこに置いておくわけにもいかないけど、俺達もあそこにずっといる訳にもいかなくて、だから連れて帰ってきた! 俺の嫁になってくれ!」
「え? 無理」
ガァ~~~~~ン、という言葉が背景に見える位、少年が椅子から滑り落ち、その場に崩れ落ちましたけど大丈夫ですか? いやいや、だって知らん人だし、子供じゃん?
「あっはっはっは、即答だったな」
「ベル坊残念じゃったな」
「ベルフォンス、流石に順序と言うものが……」
大人たちも容赦がない。唯一心配している風なルイスさんも、慰めているというよりは諫めている感じ?
その言葉を受けてプルプル蹲っていたベル少年は、文字通り「わ~ん」と泣き叫びながら出て行ってしまった。一体何だったんだ?
「ふっふっふ。ベルはこの村で久しぶりの子供だから、皆から甘やかされて可愛がられておったからな、まさか自分の求婚が断られるとは思っていなかったんだろう。
まあだが、今回の無茶な脱走の件もある、これで少しは反省するのであれば良いかもしれないな。ところで即答で断った理由を聞いても?」
「え? いや、普通断りません? だって知らない子だし、さっき会ったばっかりですよ? 会ったばっかりの知らない人から求婚されてハイ喜んでって答える方がやばくないですか?
貴族なら政略結婚とかで顔合わせの日に婚約とかはあるかもですけど、それとは違いますし、そもそも私がなぜこの国に来たの? と言う理由が本当にアレなら、ちょっとどうかと思いますよ」
笑を納めたチアキさんが私に問いかけるけど、逆に受けると思っていた人がいるならその人の方がどうかと思う。
「くはっ、ふっ、くふっ、ふっふっふ、確かに、そりゃそうだ」
「其方はまだ洗礼の年頃のわりに随分しっかりしておるのだな。ヒト族というのはそういうものなのか? この国に住む獣人の子供らなど、10歳頃までは野生動物そのものじゃぞ?」
「…………」
思わずと言った感じで噴き出すチアキさん、不思議そうに私を眺める白雪さん、気不味そうに顔を逸らしているルイスさん、三者三様の反応ですね。
「ほら、ルイスからそれは説明すべきだぞ」
「は、はい。――ヴィオ様、この度は申し訳ありませんでした!!!」
いきなりDOGEZAされましたけど? 綺麗に正座してからの額を床にこすりつけるかの如く綺麗な土下座です。多分二度目の人生にして初めて見ました。
白雪さんに促されて再び着席なさったルイスさん曰く、私を運んだのはルイスさんだったとの事。
聖獣だからといって空を飛べるわけではないらしく(元々空を飛べる種族は別)、大陸に移動する時も白雪さんはルイスさんが竜化した背中に乗っての移動だったんだって。
行きはベル少年も飛んでたけど、帰りは山から飛び出してすぐが皇国だから、まだ飛び慣れていないベル君には飛翔が難しかったみたい。
なので蔓草を編んだ大きな籠に私とベル君を入れて、白雪さんが抱えた状態でルイスさんの背中に乗って帰ってきたらしい。
ルイスさんは見た目年齢30代、サブマスと同じくらいに見えるけど実年齢は106歳、竜化した時の大きさはこの部屋には納まらないというから、どういう縮小率を持っているのか確かめてみたいところ。
ちなみに竜人族の106歳はピチピチの若者らしく、竜人族は平均寿命が500~1000歳という中々幅広すぎる平均寿命でした。
チアキさんはヒト族だと思ってたけど魔人族というこれまた初めて聞く種族で、見た目はヒト族と似ているけど魔力が非常に多くて、その昔は魔人族が治める国の王が魔王と呼ばれて迫害されていた事もあるとのこと。
大陸での国同士の戦争が結構多かった時代で、基本的に争いを望まない人が多かった魔人族はこっちの大陸に移動したんだと。その時に友人知人がいるからと残った人や、旅に出ていた人は大陸に残り、ヒト族に紛れるように生活していたんだそう。
チアキさんが勇者時代に倒したとされるのはダンジョンスタンピード数件で、全く魔人族とは関係なく、魔王討伐というのは神国が流したガセだったんだって。
「あの時はオークもゴブリンもエンペラーが出たからなぁ。あいつらは共通言語も使えたし、見た目もヒト要素が多かったことを思えば、それを魔王だとか言ったのかもしれないな」
「勇者様は聖女様と結婚して神国の王様になったって習いました。だから今の神国にいる大司教は勇者と聖女の子孫だって……」
「ああ、あのクソビッチな」
な、なんですと?
聖女をクソビッチ扱い。というかその言葉がでるという事は、やはりチアキさんも日本人で結構現代っ子? 私の記憶の最後の方は『昭和百年』とか言ってたから、更に五十年前ってことは明治時代とかだもんね。流石に明治時代の人がビッチという言葉を使っていたとは思えない。
「あー、お察しの通り俺は転生者だな。40歳過ぎくらいで過労死したらこっちにいたって感じだな。チビの時に嵐で死にかけて、神国に流れ着いたことで記憶が蘇ったってやつだ。んで、聖女の方は召喚者だな。こっちの世界で召喚をした訳じゃないけど、雷と共に現れたってやつだ」
なるほど、それは偶々時空が裂けたとかそんな感じだったのかな? 私も死にかけからの記憶回帰だった事を思えば、そっちの方はそれなりにいるのかな? ダムの公爵に話を聞ければ多数決で分かりそうだけど、大陸も違えば立場も違うから聞けそうにないね。
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