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魔道具製作
第451話 魔力操作の練習
しおりを挟む水魔法で人形を作るのは三日で会得したチアキさん。白雪さんたちは一週間程かかった事を思えば、フィギュアなどを作った経験の差と言えるのかもしれないね。
チアキさんはモフッコの毛刈りが安全に行えるかどうか試すためにもエルフの里にお出かけです。
一緒に行くと思った白雪さんは、まだ上手にできないのが悔しいらしく、ルイスさんとベル君も誘って一緒に練習をするようになりました。
「この魔法は良いですね。攻撃魔法ではないですから危なくないですし、魔力操作に集中しなければ形を保つことができません。これは非常に良い訓練になりますよ」
「俺もこれなら練習が嫌じゃない」
あ~、そういえば魔力が多い竜人族と魔人族のヒトたちは、魔力操作の訓練が苦手って言ってたもんね。ルイスさんは基本的にまじめな性格で、水生成魔法の練習をするようになってから、魔力操作の重要性を意識して練習をするようになったって言ってたけど、大抵は溢れる魔力でごり押しをするって感じだったもんね。
そんな二人も小さい水ドラゴンを作ってドラ相撲をできるようになったんだから凄いと思います。
「ヴィオちゃん、風魔法でもできないかしら。私も一緒にチビ竜相撲をしたいわぁ」
可愛いお願いをしてくるのは、ベル君のお母さんファニアさんです。300歳弱――ではないです、250歳を少し超えたはずなのに、二十代そこそこにしか見えないキュートなお母さんです。
風竜人族のファニアさんは、息子と夫が楽しそうにしているチビ竜相撲が羨ましいと、お勉強会で訪問した時に泣きついてきました。
「風魔法の魔力操作の練習は葉っぱを飛ばす練習だったんですけど、人形は作ったことが無いんで――で、でも、【ウインドボール】がありますもんね。風の玉が作れるって事は作れるはずですよね。一緒に作ってみましょう、ね?」
あからさまにショボーンと凹んだ姿を見せられて放置するとか無理っす。小麦色の髪に、緑の瞳なので色味は全く違うのに、今の中性的ベル君をそのまま大人美女にした見た目なのだ。そんな美女が人差し指をクルクル回しながらショボーンとしている姿を見て、平気でいられますか? いや、無理だ!
できるか分からないけど、と提案したらパアッ! と煌く微笑を見せられたらさ、やるしかないっしょ。
「基本は同じで良いと思うんです。水の人形も、最初は水玉を作り出してそれを動かしてるので……【ウインドボール】、これをどうしようかな。色を付けた方が分かりやすいかな」
「おぉ、色を付けるのは良いな。俺も一緒にやる。母さんも一緒にやろう」
「ええ、そんな小さな風の玉を作るの? できるかしら」
風竜と水竜のハーフであるベル君は、水の方が得意だけど、風も扱えるんだよね。だからこそ11歳という若さで海を渡っちゃったんだろう。
ファニアさんは両掌大の風の玉にする事が最初の課題になりそうですが、我が子が一緒になって練習してくれるのが嬉しいようなので、すぐにできるようになるでしょう。私も負けないように練習しないとね。
風の玉を色付けすると緑色の丸い玉になる。
最初は風がフワフワするので形を固定するのが難しかったんだけど、風船を思い出してからは早かった。ビニールの外袋はないけれど、水クッションだって同じだしね。
丸い緑の玉はマリモにしか見えないけど、コケモモお父さんがバク宙するのは可愛くて良きです。
水魔法で成功しているベル君は、比較的早くコツを掴んで形を作ることができてるんだけど、初挑戦のファニアさんはなかなか難しそうです。
「そうじゃないってば、渦は巻かないの!」
「ええっ、こうかしら?」
「も~、母さんそうじゃなくって!」
「難しいわぁ~」
手助けが必要かと思ったけど、ベル君とのやり取りを非常に楽しんでいるようなので、そっと様子見することにしましたよ。百年もあれば習得できるだろうし、焦ることはないでしょう。
魔力操作の練習をしつつ、魔法陣の練習も引き続き行っている現在。
「マジックバッグは作ったが、次は何を作りたいんだ?」
「そうですね、私誘拐されたじゃないですか、あの時は寝起きだったという理由もあるんですけど、うっかり眠り薬が入った飲み物を口にしちゃったんですよ。
普段は知らない人からもらうものは臭いとか確認してからにしてたんですけど、よく考えたらお店とかでも、店員さんが悪者と手を組んでる可能性もあるなって。だから状態異常回復というか、自然解毒みたいなのができる魔道具を作りたいんです」
作りたい魔道具を聞かれたので、考えていた魔道具を相談してみる。
あちらの大陸に戻ったとしても、私が冒険者として活動するのは変わらない。であれば、また同じような変態に絡まれる可能性はあると思うんだよね。だとしたら防御する術は持っておいた方が良いと思う。
「なるほどな、確かに作れるが、その場合は浄化の魔道具って事になるだろうな。体内に入れないっていうのは難しいと思うから、入ったところで即浄化できるようにするって事だな」
なるほど、確かにあの時も私は解毒の魔法ではなく【浄化】の魔法を使ったよね。口にしない訳にはいかない時でも、自動浄化ができるなら安心だね。作ることはできそうだと思ったら、チアキさんが言い難そうに口を開く。
「ただなぁ、その魔道具を作るなら聖属性の魔石が必要になるんだが……」
「聖属性の魔石は滅多にないぞ」
「あ、持ってます」
白雪さんがチアキさんの言葉に被せてくるけど、私の鞄の中には真っ白な魔石が幾つかある。ネリアさんに教えてもらってから、魔力操作の訓練として幾つか練習していたのだ。
「は?」
「どういうことじゃ?」
二人とも吃驚してますけど、そういえば魔石を作れるのは内緒って言ってたっけ。
「んと、お母さんのお友達の人が教えてくれたんです。魔力を移せば魔石の属性は変えることができるよって」
ポカン顔のままの二人を前に、やってみて欲しいと言われたので屑魔石を一つ取り出してみる。
黄色っぽい魔石だからフォレストウルフの魔石かもしれないね。
今この魔石は木属性の魔力が含まれている。
キッチンでは火をつける魔道具に火属性の魔石が、水を出すのは水属性の魔石が使われる。お風呂の湯沸かしは火属性の魔石だし、洗濯、トイレの魔道具は水属性の魔石が必要だ。
なので、火と水の魔石は日常生活でも非常によく使われるので、ギルドでも常設買取依頼が出ている。
土属性の魔石は畑関係の魔道具で使われるし、風属性の魔石は乾燥の魔道具で、冷凍庫には氷属性の魔石が必要だ。
氷属性は特定のダンジョンに行かないと出ないから非常に高価買取されるし、冷凍庫の魔道具は貴族でも高位貴族じゃないと買えないくらい高価なのはそれが原因だ。
一方買取価格が安いのは木属性の魔石と、闇属性の魔石だ。
闇属性の魔石は魔道具作りに使われることがそれなりにあるけど、特定の属性を持っていない魔獣はほとんどが黒っぽい魔石なので、数が多いから安い。
木属性の魔石は魔道具の使い道がないから安いのだ。確かに木魔法って魔道具でどうにかする事がないもんね。私が使っているみたいな蔓草を出せる鞭という感じで作れるかもだけど、ただの蔓草の鞭だと殺傷能力は低そうだから、使い勝手は良くないだろう。
魔石は魔道具作りに使えると思って売らずに残しているんだけど、木属性のは積極的に聖属性の魔力を詰め込む練習台に使っている。
「見ててくださいね」
少し大きな黄色の魔石を下に置いて、その上に小さな黄色の魔石を置く。
そして小さな魔石に人差し指を添えて、自分の中の白い魔力をゆっくり注いでいく。
「まじかよ」
「ヒトとは不思議な事を考え付くものじゃな」
二人が呟く声を聞きながらも、集中を切らさないように魔力を注ぎ続ける。入れるだけなら簡単なんだけど、元々ある魔力を押し出さないと駄目だから、結構大変なのだ。気を抜くと混ざってマーブルになっちゃうんですよ。
黄色だった魔石は段々色が薄くなり、十分程で真っ白な魔石になった。小指の先程の小さな魔石でもこれだけ時間がかかる事を思えば、私が身に着けていたペンダントと同じ大きさの魔石を用意した母さんって、マジで規格外な人だったんだと思います。
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