ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
533 / 584
特級ダンジョン ウミノトモ

第468話 ウミノトモ その6

しおりを挟む

 あの後、セージゴブリンに何度も魚卵攻撃をさせてから倒し、大量の魚卵を手に入れた。
 その後、岩陰で魚を貪り食うゴブリンが、食べかけの魚を投げながら攻撃してくるという目にもあったが、倒して現れたドロップアイテムを見て、ゴブリンたちも殲滅した。

「今日の夕食はいくら丼とタラコスパゲッティです!」
「おぉ! 痛風になりそうなメニューだが最高だぞ!」
「キラキラして綺麗じゃな」
「あれがこんな風になるんだ。美味しそうだね」

 魚卵三昧のメニューはどうかと思うけど、皆が食べてみたいというのだから今日だけは仕方がない。いくらは最初からバラバラになってくれていたから面倒な皮を取り除く作業をしなくて良いというのが最高だった。
 醤油漬けの時間が短すぎる気がするけれど、我慢できない大人たちのお願い攻撃に丼一杯分だけ用意した。
 残りはウエストポーチの方のマジックバッグに収納してますよ。こっちは容量多めになってきているけど時間停止は無いので、明日にはそれなりに良い感じになっているだろう。
 良い感じになったところで時間停止に入れ直せばいつでも美味しいいくら丼が食べられる。

「これは、プチプチして食感が面白いな」
「あの攻撃を受けようとするのは驚いたけど、これは良いね。僕もこれからは水の壁で一回攻撃を受けてみるようにしようかな」

 いくら丼もタラコスパゲッティも好評のようで良かったですよ。

「そういえば奴らはいたか?」

 ある程度食事が終わったところでチアキさんから質問が。
 そういえばルイスさんが戻って確認しに行ったんだっけね。魚卵に興奮しすぎて忘れてたよ。

「ああ、ええ、いました。あの金ランクと言っていた冒険者だけではなく、他にもいましたね。金ランクは砂地で嵌って動けなくなっていたくらいでしたが、他のパーティーはオークにボコボコにされていたので助けてきましたよ」

 鰹節と肉の為に助けただけでは? という疑問は胸の中にしまっておきましょう。
 オークナイトにやられるレベルの奴らが何で入ってきたんだろう。

「金ランクはどうした?」
「蟹はまだリポップしていなかったようでしたので、放置してきました」
「そうか……。まあ貝だけだと大した攻撃力もなかったし、死ぬことはなさそうだな」

 マテ貝はそんな大量にいらないといったから、途中から放置してたもんね。それが出て来てたって事なんですね。まあそこから戻るなら良いのかもしれないね。
 前回はワカメちゃんの場所までは到達したはずなのに、その手前でそんな状態って、かなりギリギリな攻略をしてたっぽいね。

 どうやら金ランクも、他の冒険者も私たちに追いつく心配はなさそうですね。
 お腹いっぱいになったところで、魔力操作の訓練をして、お風呂に入っておやすみなさい。


 三日目の朝、24時間リポップという事が分かったので、今日は朝からバレンさんがオークナイトとワカメの採集をしに飛んで戻っておりますよ。
 昨日は他所の冒険者が居たので、オークナイト殲滅は遠慮したというルイスさん。なので残っている可能性があるからと朝から気合十分でしたよ。

 水辺と岩場が多い場所だけど、安全地帯はちゃんとあり、岩をくりぬいたような場所は岩窟ホテルのようでなかなか快適でした。
 ただ、その場所を越えた今、足場は非常に少なくなり遠浅の海が広がっています。

「所々にある飛び石が足場になるって事だな。飛べない連中だけでもなんとかなるだろうが、連携は難しいだろうな」
「まあ僕達には関係ないけどね」

 大小さまざまな足場となる岩は波に濡れて滑りやすくなっている。だけど大股で移動できる場所ばかりではなく、それなりにジャンプしないと無理な遠さの足場もあり、かなり大変そうだという感想を持つ。
 まあ、イブさんが言う通り、ドラ二人は翼を出しているし、水蜘蛛状態で浮いている私たちにはモウマンタイな訳ですけど。

 ここでもカモメが空から攻撃してくるので、【シャドーバインド】で海に墜落させながら避けている。
 壁のようにそり立っていた岩が途切れたところで、突然大波が押し寄せてくる。

「ヴィオ様、掴みますよ」
「白雪掴まれ」
「わかったのじゃ」
「イブは俺が」
「ありがと」

 ダルスさんはイブさんを、ルイスさんは私を抱え上げ、白雪さんの腰を抱いて浮遊魔法で空に駆け上がったチアキさん。
 私達がいた足場は高波にのみ込まれ、その波と共にゴブリン集団が現れた。
 ――大きな木の船に乗って。
 ヲイ、突っ込まないぞ、私は突っ込まないからな。

 幸いなことにセージゴブリンはいなかったので、船ごと【フレイムバレット】を打ち込んで沈めてしまいました。

「魔石は勿体ないけど、良いですよね?」
「まあな、肉も食えないし良いと思うぞ」
「このままあちらの岸辺まで行きましょうか」

 ルイスさんに抱きかかえられたまま空を飛び、小さな足場を越えた先の岩場に下ろしてもらった。

「あの場所は波が来る前に駆け抜けるのが正解だったのかもしれんな」
「そうじゃな、飛べんやつらは波にのまれる。先に行く者、後に残る者であの隙間だけは一気に駆け抜ける必要があるな」

 チアキさんと白雪さんが攻略方法を話し合ってるけど、それって一見さんには無理なやつじゃない? 
 それだけ危険な場所だと思って慎重に進めって事なのかもしれないけど。
 特級ダンジョンが特級と呼ばれる理由が分かった気がするね。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

処理中です...