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特級ダンジョン ウミノトモ
第467話 ウミノトモ その5
しおりを挟むおはようございます。
特級ダンジョン二日目の朝、昨夜はイブさんからお風呂について突っ込まれましたが、本人も気持ちよく入っていたので文句は言わせません。
ヒスの森で貰ったギガントボアの一枚皮は、ミドウ村の職人によって男子用の大きなハンモック風呂に変身しております。なので、私のお風呂は白雪さんと二人で女子風呂として使っておりますよ。
「そういえば金ランクの人達、来ませんね」
「俺たちが早いから追いついてないだけかもしれんぞ」
「昼食後、オークナイトの様子を見がてら確認してきますよ」
という事になったので、気にしないようにしておきましょう。
さて、今日はちょっと水があるような場所に入るみたいなので、足元の【エアウォール】を展開して冒険スタートです。
「ああ、あいつらはこの辺りまでは来れたって事だな。あの魔木は絡みつき攻撃をしてくるらしいから気を付けろ」
「了解」
「わかりました」
私の身長よりは低い低木は、私達が近づいたところでワサワサと身を振りはじめ、柳の枝のようにしな垂れていた枝というか、葉っぱを振り回してくる。
「うおっ、伸びてきた!」
ヒョイと身をかわしたイブさんだけど、思ったよりも激しくしなる葉っぱはリボンのように伸びて攻撃してくる。メデューサみたいだね。
トレントみたいに顔がある訳でもなく、どこを攻撃すればよいのか分からないけど、植物だから燃やせばいいかな?
「【ファイア】」
低木に向かって久しぶりに使う青色ファイア。低木に火が到達した途端にボッと燃え上がり、リボンはシナシナと力を無くして萎びれた。
後に残されたのは笊に山盛りになったリボンの残骸?
「なんじゃこれは」
「なんでしょうね。牛乳は乳袋に入ってるし、卵も大量の時は籠に入っているから同じようなものなんでしょうが……」
とりあえず鑑定眼鏡で先に確認してみよう。
分類:海藻(食材)
素材名:ワカメ
採集地:ダンジョン産
思わず笊を頭の上に掲げてしまったのは理解して頂けるだろうか?
何このダンジョン、最高過ぎるじゃない。
何故こんな廃棄しないと駄目な場所に現れた?
もっと普通の場所に現れたらダンジョンコアを廃棄しないで良いのに、勿体ない、勿体なさ過ぎるよ。海の幸バンザイ!
「チアキさん、これワカメだって! ワカメうどんも食べれますよ」
「まじか! ってことはもしかしたら昆布も出てくるんじゃないか? 期待して良いかもしれんな」
「確かにそうですよね! これは探さないとですよ!」
二人でフンフンしていたら、皆に温かいというか、生ぬるい目で見つめられてしまったけど、美味しいものは好きでしょう?
狩り尽すのに異論は出ず、低木を見つけ次第燃やし尽くしていく私達。緑のリボンを投げてくる相手はワカメを落とし、もう少しだけ大きく茶色いリボンを投げてくる相手は昆布を落としてくれました。
勿論その日のお昼は昆布と鰹の合わせ出汁でのおうどんですよ。
昼食後はルイスさんがドラ化して入口付近までオークがリポップしていないか確認しに戻ったくらいで、私たちは先を進んでおります。
砂地は貝、蟹が出て、水気が多い場所にはワカメや昆布、硬い砂地の場所にはオーク。海の豊作ダンジョンと呼んでも良いと思います。
水気は少しずつ増えてきて、普通に歩けば踝くらいまでは浸かるのではと思う場所を歩いている現在。
ずっと水という訳ではなく、大きな岩が真っすぐには進めないように邪魔してくるようになっております。
【索敵】では岩場に隠れる魔獣が確認できており、ゴブリンたちの巣窟エリアだと判明しました。
「洞窟とかで巣を作っているのかもしれんな」
「ダンジョンでも巣をつくるんですか?」
夜になったら消えることが多いゴブリン、彼らはどこかに巣を作っていたのだろうか。朝晩交代制だと思ってましたよ。
チアキさんにも明確な答えは分からないという事で、巣に関しては気にしない事で決定しました。うん、知らなくていいこともあると思うんだ。
「バブー」
「なっ、セージゴブリンか!? 【アースウォール】」
岩場の影から突然の声と赤い光が飛んできた。
ゴブリン軍団にはそういえば魔法を使える奴もいたね。
狙われたのはイブさんで、即座に土壁を作って防いだので問題なかったんだけど、岩の上には三匹のローブを纏ったゴブリンが立っていた。
「攻撃ちょっと待ってください。皆さんは私の後ろにお願いします。【ウォーターウォール】」
即座に攻撃しようとする大人たちを制止し、全員が入れる水の壁を作り出す。
皆も不思議な顔をしているけど、私の壁が丈夫な事は分かっているので黙ってやりたいようにやらせてくれる。ありがとうございます。
「ヴィオ、何か分かったのか?」
「確認したいだけなんですけどね、さっきのセージの攻撃、イブさんの壁にぶち当たって潰れちゃったんですけど、卵っぽいんですよね」
「燃えておったが、よく見ておったな」
そう、壁に当たったところで燃えたんだけど、赤い魚卵に見えたんですよ。
「「「バブーーーー」」」
さっきも気になったけど、何でその声?
ゴブリンといえば「GYAGYAGYA」みたいな濁声というか、汚い鳴き声を出すことは多いけど、バブーってギャグですか?
三匹揃って杖を振り上げ、私の水の壁に向かって赤い光を打ち込んでくる。ビームっぽく見えるその光は壁に当たったところで吸着されるので燃えることは無い。
「あ、ほら、やっぱり魚卵っぽくないです?」
「本当だな、いくらみたいに――ん?」
「――チアキさん、気付かなかったことにしません?」
「ああ、そうだな、そうしよう」
鑑定眼鏡で確認すれば、魚卵(食用)と書いてあるので、この卵の種類が何であれ、食べることができそうです。
私達の反応を不思議そうに見てはいるものの、そっとしておいてくれる大人たちに感謝です。
そう考えると、オークの野球帽も、メデューサのようなアレも、それこそ最初に出てきたカモメだってそうなのかもしれない。
いやいやいや、そんなことある?
偶然ですよね?
ダンジョン様? 偶然ですよね?
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