ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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特級ダンジョン ウミノトモ

第466話 ウミノトモ その4

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 大満足の昼食後、オークナイトを探しつつ、採集地ではしっかり採集をしながら歩いている私達。寄り道をしている割には規格外の人しかいないから移動速度は遅くない。

 鬱陶しいカモメはあれからも数度登場し、黄色以外にピンクの鳥もいることが分かった。
 ピンクのカモメは花を落としてこなかったんだけど、どうやら甘い香りを振り撒いていたらしい。
 らしいというのは、私は結界鎧のせいで匂いが分からなかったからです。

 白雪さんが一番最初にその匂いに気付き、即座に状態異常回復の【リカバー】と、精神保護の【マインドプロテクション】を唱えたおかげで問題なかったんだけど、ピンクのカモメが振り撒くのは魅了、睡眠、混乱などの状態異常をおこすナニカだったみたい。
 私と白雪さん、チアキさんは状態異常回復のイヤーカフを着けているからその攻撃は喰らわなかったと思うんだけど、他のメンバーは危険だからね。
 鳥なのに花を落としたり、粉を落とすって、蝶の方があってそうな攻撃だけど、ダンジョン様の配置ミスだったりするのかな。

 踏み固められていた砂地は既に沈み込む砂地に変わっているけれど、私達の速度は変わらない。

「成程な、砂地での訓練はどうしたって気がしないでもないが、訓練じゃなければ体力を削らずに済むし、いいかもしれんな」
「本当に、ヴィオの頭の中ってどうなってるのか覗いてみたいよね」
「飛べない種族でも、これなら沼地や遠浅の海も活動できそうだな」
「じゃが普通の獣人やヒト族では魔力が足りなくなるじゃろうな。エルフでも通常種じゃと厳しいのではないか?」

 竜人族メンバーは翼を出してほんの少し浮きながら歩いている現在、私は自分の足元に【エアウォール】を出して歩いております。
 あれです、前に盾の中でチアキさんがやっていた盾を凝縮して足の下に置いてたやつ。忍者が水の上を歩くときに履く丸いやつ、あれをイメージしております

「あれだな、忍者の水蜘蛛、ヴィオは蜘蛛が好きなんだな!」

 それは私の結界鎧を思い出して言ってます? 別に蜘蛛が好きな訳ではないですよ、結界鎧に関してはあれが一番しっくり来たからやっているだけです。
 結局便利だという事で、白雪さんも、イブさんも、チアキさんだってやってるんだから、皆で水蜘蛛状態です。なので砂の上を滑るように歩いております。

 このフカフカの砂地になってから敵は出てこないんだけど、両端には採集地があるので時々寄り道をしています。どうやらオーク達もフカフカの砂地は苦手なのか、採集地の近くにしか現れない感じです。

「これだけ敵が出ないというのは珍しいんだよな。もしかしたら俺たちが浮いてるから感知しないのかもしれないぞ。砂漠エリアでも砂を踏みしめる振動で敵が襲ってくるというのはあるからな」

 それは美味しいかもしれない敵を見過ごしているという事になるのだろうか。砂地だと蟹とか、ヤドカリとかが出てくる感じかな? ヤドカリは食べれなさそうだけど、蟹は欲しいです。

「いやいや、ダンジョンで敵に会いたいとかおかしいからね?」
「だが美味い物は食いたいだろう? 
 ヴィオは危険だからな。足元から襲い掛かってくることもあるかもしれんから、俺達が歩けばいいだろう」

 イブさんが尤もなことを言っているけれど、美味しい物スキーな大人たちにとっては些細な事らしい。
 三ドラが足元だけドラ化して、歩いてくれることになりました。

 サク サク サク サク 

 本当にしばらく歩いていたら、砂が膨らみ始めて敵が現れました。ザバーっと砂をかき分けて出てきたのは蟹!

「来た来た!」
「おぉ! これはいいな! 今夜は蟹三昧だぞ!」

 チアキさん、そうだけど、そうだけどさ……まあいいか。
 足の長い蟹さんは、両手を振り上げて殴りかかろうとしたところでバレンさんに踏み潰されてキラキラドロップアイテムになってしまいました。
 落ちたアイテムはカニの甲羅と八本まとめられた蟹の足。お歳暮とかの写真で見るやつですね。

「甲羅か~」
「足だけじゃと食える場所がないのか? つまらんの」
「白雪さん、蟹の足は茹でても焼いても美味しいですよ」
「おお、そうか。それは良いな」

 とりあえず甲羅と足を鞄に収納、出てくる蟹は次々に踏み潰されて、まるでもぐらたたき状態です。
 とはいえ敵は蟹だけではなく、歩いている途中で急に足元に穴が開き、そこから何かが飛び出してくるというのもありました。
 ただ、ドラ化した大人たちの足は大きく、その穴に嵌ることもなく、出てきた相手に攻撃されることもなく踏み潰されるだけでしたけど……。可哀想な敵さんに合掌。

「これ、マテ貝みたいなものかもしれんな」
「それって塩を入れた飛び出してくる棒みたいな貝ですか?」

 ドロップアイテムは棒だと思ったけど、これは貝だったのか。
 鑑定眼鏡で確認すれば、確かに≪ラザクラム:食用貝≫と書かれていた。
 飛び出してきた相手はあまり見えなかったけど、この棒、私の腕くらいあるんですけど、美味しいのだろうか。

 どうやら砂地は蟹と貝の生息地だったようで、大量に甲殻類が集まった。途中で蠍が出てきたのは何かの間違いだったのか、何のドロップアイテムも落とすことなく消えていった。

「さて、今日はこのくらいにしておこうか」
「十分だと思うよ」
「そうですね、明日になれば手前のオークナイトも復活しているかもしれませんし、一度戻ってみてもいいかもしれません」

 安全地帯を見つけたところで、今夜はここで休むことになった。
 ルイスさんの言葉に驚愕の表情を浮かべているのはイブさんだけですが、豊作ダンジョンではこの人たち飛んで何往復もしてましたからね。

 晩御飯は蟹三昧になったのはお約束。茹で蟹、焼き蟹、カニチャーハン。
 蟹の甲羅の中には数個だけ蟹味噌が入っていました。レアドロップ的な感じだったのかもしれないね。大人たちが酒と一緒に食いたいと言っていました。
 蟹クリームコロッケはベル君が絶対に好きになるはずだから、エルフの里に戻るまではお預けにしておこう。他のダンジョンでも蟹が採れるところがあればいいな。
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