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特級ダンジョン ウミノトモ
第465話 ウミノトモ その3
しおりを挟むポタポタという音を聞きながらチアキさんの方を見れば、慎重に、だけど大量にうどんを切っている最中でした。ここから茹でることも考えればまだ時間はあるね。
黄金色のスープの味見もしたいけど、止まらなくなる自信しかないから一旦マジックバッグへ収納しておきましょう。
「ヴィオ様こちらの搾りカスは捨てますか?」
「ルイスさん、これもとても美味しいので使いますよ。白いご飯と食べるのにぴったりなモノを作りますね」
「カスまで使うとは恐れ入るな」
「完全に木くずなのに食べれるの?」
イブさんとは色々オハナシアイが必要かもしれませんね。
確かにオークナイトは武器として使用していましたが、立派な鰹節二本を提供してくれたんですよ。ああ、このままじゃ他のダンジョンで普通のこん棒を持ってきたオークをタコ殴りしてしまいそうな予感。
巨漢オークナイトが武器として使っているこん棒バットを丸々一本鰹節にしたので、かなり大量の鰹出汁がとれ、だしがらも大量に出た。全部を同じにするのは勿体ないからふりかけ以外にも色々作ろう。
バレンさんにお願いしてお米も炊いてもらう。
だしがらを三分割にして、一つは料理に使うからそのままマジックバッグへ。
「ダルスさん、こっちのだしがらは少し大きいのでハンバーグに入れるマルネギくらいの大きさにみじん切りしてもらえますか?」
「よし、任せろ」
腕まくりをしたダルスさんがやる気満々なのでお願いしよう。白雪さんはチアキさんが作っているうどんを大笊に取り分けてお湯の準備を始めているし、良い感じですね。
ふりかけ用のだしがらは乾煎り……しなくていいか。
「【ドライ】からの【ウインド】で閉じ込めて【エアカッター】」
一塊になっているだしがらに【ドライ】で乾燥させて水分を一気に飛ばす。便利な魔法バンザイですよ。
その後小麦の製粉と同じで【ウインド】を使って風の膜の中にだしがらを閉じ込めれば【エアカッター】で粉砕する。
「は? え? なにやってんの?」
「おー、ミキサーいらずだな」
「汁物を作る時にはミキサーが便利ですけど、粉物の時は粉の飛び散りも無くて便利ですよ」
「いや、ちょっと、そんな魔法の使い方する人いる?」
「乾燥野菜に【ドライ】はよく使っとるじゃろう?」
イブさんだけがアワアワしているけど、皆は見慣れているから普通です。製粉機はチアキさんが魔道具で作ってくれていたけど、お米の脱穀で似たような魔法を使っているし、そもそも料理に魔法は結構使うもんね。
「え、僕の方がおかしいの?
僕ハイエルフだし、それなりに高名な魔法使いなんだけど、え? 古臭いの? チャーキも大概だったから慣れてるつもりだったけど、あっちの大陸ってそんなに進んでるの? え、もう一回旅に行くべき?」
「ヴィオとチャーキだけが特別なんじゃと思うぞ」
ブツブツ言ってるイブさんを慰めている(?)のは白雪さんだけで、魔法に元々そんな興味がない竜人族は無反応です。カオス!
粉末状になっただしがらは蓋つきの瓶に取り出し、塩といりごまを入れてから、ふたを閉めてシャッフルシャッフル!
「ヴィオこれくらいでいいか?」
「あ、ばっちりです。ありがとうございます」
ダルスさんによってみじん切りにされただしがらを受け取り【ドライ】で乾燥させておく。
フライパンに醤油、酒、砂糖を入れて火をつける。クツクツしてきたところに乾燥させただしがらを入れてしっかり絡めていく。
「タレに入れるなら乾燥させなくて良かったんじゃないのか?」
「乾燥させておいた方がタレを吸収できるでしょう?」
時々こうして質問に答えながら、水分が飛ぶまでしっかり炒めていく。良い感じにしっとりしてきたところで白ごまを入れて完成です。
ああ、変わり種味も作ろうと思ってたのに忘れてた。次の鰹節の時はそうしよう。
とりあえず大量にできただしがらふりかけの半分は瓶詰めしてマジックバッグに収納し、残っている分を炊きあがった炊飯魔道具に投入。一部悲鳴が上がったけど、大丈夫、美味しくなるからね。
真っ白なお米が茶色く色づけされていくのを悲しげな顔で見ているけど、醤油の香りが立ち上ってくることでワクワクの表情に変わっていくのが面白い。
この人たちにおにぎりを作るのは無理だというのは既に分かっているのでお願いしません。あ、イブさんだったらできるかな?
「イブさん、このご飯をおにぎりにしたいんですけど、お手伝いお願いできますか?」
「いいよ、何すればいいの?」
料理の手伝いをやっとできると嬉しそうなイブさんにおにぎりのお手本を見せる。他の大人たちは握り過ぎて米がツルンとするよく分からない塊にしてしまう為、手出しは不要です。
「おにぎりは優しく、包み込むように、ギューではなく、キュッキュと握って下さいね」
「うん、って熱っっっ! え? これ何でそんな平気な顔で握れんの?」
あ、私結界鎧常備だから熱さは感じないんでした。
「ナニソレ、そんな高度な魔法使い続けてるとか、本気で意味わかんないんだけど? とりあえずそれ後で教えてよね」
怒りながらもおにぎりは頑張ってくれるようで、熱い熱いと言いながら頑張ってくれています。大量のおにぎりの半分は行動食というか、おやつにするためにマジックバッグへ。残りはお昼御飯用に。
コラ、まだつまみ食いはだめですよ!
そうこうしているうちにうどんの準備も整い……ってどんだけ食べるつもりなんですか?
「いや、別に今からこれを全部食べようってんじゃないぞ。一気に作っておいた方が楽だろう? マジックバッグに入れておけば直ぐに食べれるしな」
本当ですか? 白雪さんが笑いをかみ殺していますよ?
とりあえず一人二玉(私は一玉)分で茹でていくことになり、ラーメン屋さんでしか見たことのない持ち手がついた笊を寸胴鍋に突っ込み、うどんを大量に茹でていく。
ああ、だから鍋二つ分も沸かしてたんですね。どこのチェーン店ですか状態ですよ。
「だって待つのは無理だろう? かといって後の人を待っても伸びるしな、な?」
茹で上がりでマジックバッグに入れたら大丈夫というのは言わないお約束なのかな。
ラーメン丼(チアキさんが頼んでミドウ村には沢山ある)に鰹出汁を注げば、時間停止のバッグに入っていたから湯気がふわりと立ち上がる。
そこに茹で上がったうどんをそっと入れ、刻んだネギを散らせば完成だ。
甘めの醤油で煮込んだお肉は後から乗せて食べられるように、一人分ずつお皿に入れてうどんの隣に並べていく。おにぎりは取り合いが少しでもましになるように大皿三つに分けてある。
ワクワクが隠せていないチアキさんも着席し、全員でいただきますを言ったらまずはうどんから。
チアキさんは豪快に丼に口を付けて啜っているけど、この丼重いんですよ。私はレンゲですくって一口。
「「ふわぁぁぁぁぁぁ」」
「ぷっ、おんなじ反応してる」
「ほう、これは美味いな」
「ええ、香りも素晴らしいですが、なんでしょう、非常に濃いですね」
「これはオークナイトを探さないとだな」
オークナイト君の殲滅が今決まりました。
そこからはしばらく無言での昼食会となりました。おにぎりも非常に好評で、チアキさんも喜んでくれたことを報告しておきます。
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