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特級ダンジョン ウミノトモ
第469話 ウミノトモ その7
しおりを挟む肉と鰹節を手に入れてホクホク顔のバレンさんが戻り、午後の探索がスタート。
岩に囲まれた魚卵ゾーンとは違い、海を眺めながら歩く岩場はツルツルと滑りやすい……んだと思う。
相変わらず全員が少し浮いている状態なので、その歩き辛さというのは分からない。
時々起こる波に乗って魚が攻撃してくるけれど、こちらとしては豊漁だと喜ぶ相手しかおらず、遠くの方で飛び跳ねている大きな魚ですら、ドラ三人衆が飛んで獲りに行くレベル。
私達の方に飛んでくるお魚は蔦魔法で捕獲、ダンジョンの魔魚さんなので倒さないとドロップアイテムになりませんから、丸ごと活造りにするのは断念して倒しております。
「ヴィオは三枚卸もできるのか?」
「やった事は無いですけど、魔魚は良いですね。サクでドロップされるから捌く必要ないですもん」
サマニア村で獲れるトラウトは捌く必要があると聞いているけれど、同じ魔魚でもダンジョン産かどうかというのが大事なのだろう。
トビウオじゃなくても飛んで攻撃してくる魚たち、口が尖がった魚もいれば、漫画の魚拓でしか見たことが無いくらいデカい鯛みたいなのもいれば、川に戻ってくる前なのか鱒もいたし、ツナにしたことがあるマグロっぽいのもいた。
大型の魚はバレンさん達が沖で獲ってきたやつだけどね。
「この辺りは余計にぬるぬるしておるようじゃな」
壁もテカテカしている場所があり、白雪さんがそのぬるぬるに手を伸ばした瞬間、ぬるぬるが白雪さんの指に絡みついてきた。
「これも敵じゃったか!」
「白雪自身を守る壁を!」
「あい分かった。【ホーリーシールド】」
私の結界鎧と同じように、自分の身体にピタリとくっつくように聖壁を作り出した白雪さん。聖なる壁により絡みついていたヌルヌルは白雪さんから離れ、距離ができたところでチアキさんが壁を燃やした。
壁だけではなく、床にも広がっていたヌルヌルは一気に燃え上がり、魔獣というか、魔草はキラキラエフェクトを出して消えた。
残されたのは見覚えのある笊と山盛りの黒い塊。
「ヴィオ」
「鑑定します」
今までで一番鑑定眼鏡が活躍しているのではなかろうか。
分類:海藻(食材)
素材名:ノリ
採集地:ダンジョン産
親指を立てれば、チアキさんも大喜び。
マジでこのダンジョン、コアを壊さないと駄目ですか? このまま残したら駄目ですか?
特級ダンジョンは突然消えて、別のところに同じのが現れることがあるとも聞いたけれど、このダンジョンはマジで再発してほしいです。ミドウ村の近くにできたら日参するよ。マジで。
私達は浮いていたせいで気付かなかったけれど、どうやらここまでにも結構海苔は存在したっぽい。私達はそのまま先を進むことになり、見かけた海苔を採集しにドラゴンチームが戻ってくれてます。
「あと出て来てないのは主人公か?」
「チアキさん、それ以上は言っちゃ駄目ですよ」
コンプラで突っ込まれますからね。
だけどここまで出てきた相手を思えば、あとは永遠の24歳のあの人だけだろう。特技はゴリラのマネらしいけど、どんな感じで出てくるんだろうか。
「やっぱりボスとして出てくる感じですかね」
「まあそうだろうな」
「二人にはボスの想像がついておるんか?」
「ええ、可能性としては巨大な巻貝じゃないかと思っています」
じゃんけんをすれば、明日からまた仕事かと思って気分が落ち込む人を『サ〇エさん症候群』というらしい。そんな名前が病名になるほど有名なあの長寿番組。
このダンジョンはまさにその登場人物になぞらえた敵が出てきているとしか思えないのだ。
いや、あのアニメが海の生物をキャラクターにはめているから偶然かもしれないけれど、オークが野球帽をかぶっていなければそう思わなくて済んだはず。
いや、セージゴブリンの「バブー」もあったな。
大量の海苔と魚卵、オークの肉と鰹節を回収して来てくれた三ドラも戻ってきたところで夕食だ。
私達が最初にゲットした海苔は笊にモリっと盛られた海苔だったけど、回収してきた物の中には見慣れた正方形の焼き海苔もあった。
「という事で、今夜は巻き寿司にしようと思います」
「おお、良いな」
「それはどういう料理なんじゃ?」
魚も大量に手に入ったし、ご飯も海苔もある。これは手巻き寿司を楽しむしかないだろう。
薄切りにした魚、いくらの醤油漬けも良い感じ、ペルリラは好き嫌いがあるだろうから少しだけ。
すし飯は多めに準備したので、巻き寿司にしなくても良いと思う。
すし飯は作ってもらったミニお櫃に一人分ずつ入れて、海苔も折り紙サイズに切ってお皿に乗せて一人分ずつ置いておく。足りなければおかわりできるけど、二十枚もあれば十分な気はする。
「食べ方は自由なんです。まずはこの海苔に少しだけご飯をのせます」
スプーンで少し米をすくって海苔の上にのせる。その上にペルリラ、赤身魚、カンバー、卵焼きをのせて海苔でくるりと巻いて見せる。
「こうやって好きな具材をのせて、海苔でくるっと巻いたら完成です。のせすぎると巻けないので気を付けてくださいね。色んな具材を組み合わせることもできて楽しいんですよ」
「ほう、これは面白そうじゃな。何でもええんじゃろう?」
「え~、迷うね」
「これは大勢でやると楽しそうだな」
見本を見せたら皆がワクワクした様子でテーブルに並んだ具材を見定め始める。魚もあるし、甘辛の肉しぐれもある、魚卵もあるし、カンバ―以外の野菜スティックも準備した。卵焼きは短冊切りにしたのをそれなりに用意しているし、色々楽しんでほしい。
具をのせすぎて巻けなくなるのもお約束だし、野菜だけ、肉だけの巻き寿司にしても良い。勝手気ままに楽しめる手巻き寿司は『勝手巻き』という名で楽しんでいた記憶がある。
「ふぁってふぁきな。いいふぁ」
「自分勝手に楽しんで巻くという意味での勝手巻きか。面白い名前じゃな。勝手巻き、我も気に入った」
「これ、マムが絶対に喜ぶと思う。うちに帰ってからもやろうね」
お魚が好きって言ってたもんね。
明日ボス戦をする予定だったけど、村の皆と楽しむのなら心許ないという理由から、安全地帯でもう一泊延長し、全ての素材をおかわりしたのも仕方がないと思います。
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