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スワンプの森ダンジョン
第482話 スワンプの森 その8
しおりを挟むカエリアンさんが偵察してくれたことで、太くて立派なエルダートレントを発見。大きな丸太が一本と、マグロ解体ショーで使えそうな板が手に入りました。
板に関しては、私が解体ショーのことを言ってしまったせいで、チアキさんがまな板として欲しがり、それが手に入るまでトレント狩りが行われましたが、まあ大したことではありません。
「米は沢山見つかったわ~。リポップの時間が分からないから、各階少しずつ残してきたから、明日も確認に行ってくるわね」
「あれが最近食べている米なんだな。枯れた草だと思っていたが、これまで採集してこなかった事を後悔しているぞ」
十九階まで潜ったというタニアさん達。左右に分かれて各階を確認してきたというのに夕食には戻って来れるんだから、ドラゴンって凄いとしか言いようがない。
お昼にはお弁当を持たせていたし、二人のマジックバッグは時間停止があるから、熱々のままで食べられたけど、皆で出来たてを食べるのは美味しさが倍増するんだって。
「今日はシチュ―なのですね。ああカウカウもいましたものね」
「ボアもいっぱいいたからな、今日は焼肉もやるんだぞ」
シチューと焼き肉。ちょっとあり得ない組み合わせだけど、食べたいと希望する人が多かったのでこのメニューになりました。
肉串ではなく焼肉ですが、これはチアキさんが焼肉鉄板を作ってくれたことでやるようになったんだけど、これが結構人気なんですよ。
一枚板の鉄板ではなく、格子状に穴をあけた鉄板は余分な脂を落とし、それによって燃え上がる炭の火も楽しいイベントになっているのです。
二人で一枚のお皿に山盛りの肉を渡し、自分達で焼いてもらうようにしているんだけど、それもまた楽しいんだって。
「これは子供達が喜ぶな。里に戻ったら焼肉パーティーもしよう」
「うん、ほへはっははひひほへ」
「野菜も焼いたら甘くなる。取らない奴もいるだろうが、スープを野菜多めにしてもいい」
アリオールさんはこないだの勝手巻きパーティーも楽しかったと言ってたもんね。イブさんは何を言ってるか分かりませんが、マムさんも賛成しているから、帰ったら焼肉パーティーが開催されるのは決定したようなものだね。
焼肉パーティーをした翌日、タニアさん達はリポップ時間の確認のためにも、また十九階まで飛んで行った。群生地は分かったという事で、アリオールさん達は同行していない。
林を抜けて高原を進んでいると、アリオールさんが何かに気付いた。
「お! いたぞ!」
「おお! 赤だな。大当たりだ」
アリオールさんとカエリアンさんが興奮しているので、その相手を探せばすぐに分かった。
「うわぁ、何だあれ」
「ヘッジホッグだな」
ベル君が驚き、チアキさんがうんざりしたように言うけれど、そこにいたのはヤマアラシにそっくりな魔獣だった。
ヤマアラシは針鼠の巨大な奴と言えば分かるだろうか。
怒ると毛を立ててその毛を飛ばしてくるという危険な相手だけど、このヘッジホッグというのも似ているようだ。
ヤマアラシと違うのは、その身体と針が赤いという事だろう。
カエリアンさんが赤を大当たりと言っているということは、きっと別の色もいるんだと思うけどね。
まずは倒し慣れている翼人族三名による討伐実演を見せてもらう事になったので、私たちは少し離れた場所に風の盾を作って見学することになった。
「イブさんだったらあの相手にどう戦うんですか?」
「とりあえず全部針を出させて倒すだけだよ」
成程、それは素材回収をしてからって事なのかな。針が辛い素材だって言ってたもんね。パッと見は唐辛子が刺さっているようにも見えないし、ただ赤い針ってだけだけど、あれを食べるのか? 齧《かじ》るのかな、それとも削って使うのかな。
気になることはあるけれど、まずは三人の戦いを見てみよう。
アリオールさんとカエリアンさんは鳥化し、レッドヘッジホッグの周辺を煽るように飛び始めた。ヘッジホッグは毛を震わせて、四方八方にその赤い針を飛ばしている。
「何かすげぇ」
ベル君がポカンとしているけれど、赤い針が周辺に飛び散る様は、ヘッジホッグが激しく爆発しているようにしか見えずに、確かにすげえという感想しか出ない。
針は無限ではなく、全身を覆っていた針がスカスカになり、ただの鼠にしか見えなくなった頃、待機していたリザンドロさんが剣でサクっと倒して終了した。
ああ、剣を使えたんですね。今まで戦っているところを見てなかったから違和感が凄い。
その後、ヒト化した二人も一緒になって飛び散っている赤い針を嬉々として集めているから、やっぱりあの赤い針が素材なんだと分かる。
「こんな感じだな。針が素材だから出来るだけ飛ばさせたいんだ。遠すぎると諦めるから、ある程度近付く必要があって危険なんだ」
リザンドロさんにお願いして、赤い針を一本貰った。
匂いは赤唐辛子と似ているね。
ちょっとナイフで削ってその欠片を一舐めしてみる。
「!!!!!! か、から~~~~~~い!」
舌先がピリピリする。
泣きそうになっていたら身体が毒だと判断したのだろう。急に辛味が消えた。
つけたことすら忘れていたけど、凄いよ浄化の魔道具、ありがとう!
「そのまま舐めれば辛いだろう。レッドペッパーよりも辛味が強いからな。これはスープなどに混ぜて食べるか、粉状にして肉に塗して食べるんだ」
リザンドロさんがカバンから取り出したのは瓶詰めされた赤い粉。昨日の焼肉でも何か振りかけてたのはそれだったんですね。
この辛さはハバネロ的な感じですよ。直接舐めるのは駄目でしたね。
私の反応を見て、一本握っていた赤い針を直ぐにルイスさんに渡しているベル君。まだまだ豆板醤でも辛味が強いと思うベル君には早いと思います。
アリオールさんの情報では、赤の他に黄色と緑色のヘッジホッグがここにはいるとの事。
緑は刺激が強すぎるのでハズレという事だけど、ハバネロが大丈夫な人でも刺激が強いというなんて、ジョロキアかなんかなのでしょうか。ちょっと怖いですよ。
そんなドキドキを抱えながらも、高原の散策は続けています。
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