ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
558 / 584
山籠もり

第491話 内緒の魔道具

しおりを挟む

 山籠もり修行で一番大変なのは、安全な拠点の確保という事なんだと思う。
 なのにそれはチート勇者が快適野営地を作ってくれるものだから、全く危険性を感じることなく過ごせている。
 野生動物(魔獣)が出てくるキャンプってだけだろう。

 森は深いけれど、出てくる魔獣はそこまで凶悪ではない。
 サマニア村の裏山はドラゴンの亡骸だったからこそあの魔獣だったんだとよく分かる。ここに出てくるのは、ダムのあったジョカイ山脈に出てくる魔獣と同じレベルの奴らだけだった。
 夜になったら宵闇茸をはじめとした夜にでてくるような魔獣もいるけれど、野営地の結界魔道具を聖結界に変えてからは、夜に野営地に近付く魔獣はいなくなった。

「この聖魔石は本当に凄いな。外に出すには危険な魔道具になったが、ダンジョン以外で野営する時には持っておきたい魔道具だな」
「ですね。自分で張る結界は寝ちゃうと切れちゃうけど、これなら時間がある時に魔力を溜めとけばずっと使えますし、普通の人が使うとしたら使い切りになっちゃうからかなり高価になりますね」

 今後これを販売するのかは未定だけど、売るとすればオークションで高額になることは間違いないと思われる。何故こんな魔道具が出来たのかは、チート勇者のせいだと言うしかないだろう。



 修行なのに朝から夕方までという優しいタイムスケジュールなんですけど、これは私の成長の為でもあるという事で、夕方以降は野営地で魔道具談義、試作などをして楽しんでいます。
 日中の魔獣討伐や散策は私がやるので、チアキさんは暇になる。
 一応見守りはしてくれているけど、私自身が結界鎧と無風の盾を展開しながら行動しているから、奇襲攻撃を喰らうことが無いんだよね。

 なので、暇なチアキさんは私の持っていた屑魔石に魔力を移す練習をずっとしていたのです。
 自宅でやり始めた時は魔石を破裂させまくっていたチアキさんだけど、まあ屑魔石だから駄目だっただけで、それなりの大きさだったら出来ることが分かったんですよ。

「なぁなぁ、ヴィオ、見てくれ!」

 ある夜、非常に嬉しそうなチアキさんが500円玉ほどの大きさがある黄色い魔石を見せてきました。
 ゴブリンなどの魔石は小指の爪程の大きさしかなく、こんな大きな魔石はオークジェネラルとか以上じゃないと無理だろう。
 だけどオークナイトはもう少し小さく黒っぽい魔石だし、こんな大きな木属性の魔石って誰が落としのだろうか。

「ギガントボアの魔石にしたら小さいですけど、誰の魔石ですか?」
「違う違う、ヴィオの持ってた屑魔石を合わせたんだよ!」
「は?」

 ニッコニコで説明してくれたチアキさんのとんでも理論に開いた口が塞がらない。
 ああ、私のやらかしを聞かされる大人って、こういう気持ちなんですねと思いましたマル。

「――でな、小さく砕けたやつを集めてたら砂場の砂っぽく見えてな、よく考えたら砂の城とかって水を加えて固めてただろう? そう思ったら魔力って水みたいなもんだなって思ってな、水の魔石でやってみたらくっついたんだよ。
 んで、他の魔石でもヴィオは人形を作れるだろ? あれと同じように砕けた魔石と魔力を混ぜて捏ねたら大きな魔石になったんだよ! これなら便利だろう?」

 確かに、小さすぎる屑魔石は殆どの魔道具に使えない。
 私達はそれなりの魔獣もガンガン倒しているので、大きな魔石もそれなりに持っていけど屑魔石に比べれば少ない。この屑魔石を使えるなら非常に助かるのは間違いない。
 間違いないんだけど……。

「これって魔石に魔力を移せる以上に知られるとやばくないですか?」
「え……?」

 キョトンじゃないんですよ。
 お願いしますよ183歳児! あなた一応私の保護者なんですよ?

「やばいか……? やばい……かもしれんな」

 成程、あまり考えずにやってしまったという事ですね。
 うんうん、私にも覚えはあります。これできたらおもしろいかもって思うと突っ走っちゃうっていうね。
 お父さん、ザックスギルマス、ドゥーア先生、やっと気持ちが分かりました、ごめんなさい!
 でもきっとこれからもやらかすと思います。先に謝っときます。ごめんなさい!!!

「まあ、俺とヴィオしか知らんしな、内緒って事にしとこう」

 ね? 私もそうなると思ってた。
 ここからは数が増えた魔石を使って何を作ろうかって話になるんだもの。
 それで色々話し合った結果、野営地で使用している結界魔道具を聖結界になる魔道具に出来ないかっていう話になったんだよね。

「成程な、今の結界は属性指定をしていないから無属性の結界って事だな。これを聖結界にするには、魔法陣のココを聖にする必要があるだろう? けど、普通の魔石でどれくらい持つかが不安だな」
「魔道具に使う魔石も聖属性のを使えば良いんじゃないですか? 私達魔石の魔力を変えれますし」
「おぉ! 確かにそうだな。俺もあの大きさの魔石だと壊さずに魔力を移せるようになったしな。じゃあ聖属性の魔石を作らないとだな」

 そんな話から、日中の見守り時間でチアキさんは聖属性の魔石を作り、無事聖結界が張れる魔道具が完成したという訳です。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

処理中です...