ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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ミドウ村へ

第511話 魔道具の完成

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 さてさて、あれから五日が経過しました。
 最終的に非常に素晴らしいものが完成したんですけれど、まあそこまでが大変でした。
 苦労話は端折りますけども、勇者チアキさんが非常に頑張ってくれましたね。

 まず、魔道具には作動させるための魔法陣が必要となります。
 今回の魔道具の場合、必要となる魔法が多かったんです。

 光の精霊が宿るために明かりを灯す魔法(光)
 風の精霊が過ごしやすくなるために風をおこす魔法(風)
 精霊を守るための結界の魔法(無)
 他から精霊が宿る魔道具だと感知されないようにする隠蔽の魔法(無)
 持ち主である私と精霊の縁をしっかり繋ぐ魔法(水)

 属性だけでも三種類の魔法が入る訳ですよ。無属性はどの魔法陣に混ぜてもいいんだけど、一つの魔法陣には一属性というお約束があるからね。
 だけど、一つの魔道具にこの魔法を込める為には三種類の魔法陣を組み合わせる必要があって、あれですよ、パズルゲームをしているみたいな感じでした。
 図形を書くのも難しければ、組み合わせ順が違えばうまく動かないっていう悲しみ。

 途中でちょっとしたトラブルというか、こだわりのお陰もあって、魔法陣を完成させるのに丸々四日間という時間を要しました。
 魔法陣スペシャリストがいてこの時間。普通の人には作れないという事がよく分かります。

 それもこれも属性違いの精霊を同じ魔道具に入れようとしたからというのが理由なんですけどね、だけど別々よりは一つの方が危険性は低いし、ふたりも一緒が良いというので頑張りました。
 チアキさんが話していた闇と土の精霊が宿った指輪というのも、其々別の人が持っていたもので、一体だけの為の魔道具だったというので、そこまで複雑ではなかっただろうとの事。

 ステンシル、あの時に作っておいて本当に良かったです。
 これに関してはイブさんも凄く褒めてくれました。

「それにしてもチャーキって本当に器用だよね。あのデザインをしたヴィオも大概だけどさ、それを再現できたチャーキの器用さに驚いた」
「これは、素晴らしい芸術品に見えるな。起動すればよく見えんようになるというのは勿体ない気がするな」

 完成品は魔力を流していないため、まだ隠蔽効果が出ていないのでじっくり観察することができています。
 イブさんはデザイン時点で僕には作れないと、魔法陣に力を貸すからそれは無理と宣言されました。白雪さんはネックレスを手に取って、上から下から、じっくりと観察しています。

「ヴィオの許可があれば、魔道具じゃないそのデザインの飾りは作れるぞ?」
「チアキさんが作ってくれるなら勿論どうぞですよ。思った以上に可愛いデザインですし、これがもう少し大きい状態で見られるなら私も嬉しいです」

 前世ではフィギュアなどを趣味で作っていたというチアキさん。驚くほど細かい作業を黙々と続け、丸一日かけてネックレスの本体を作ってくれたのです。

 チアキさんが作ってくれたのは、一見鳥籠のようにも見えるデザイン。
 細く加工したミスリルを編んで、屋根も床も網目状になっているので風通りが良くなっている。ああ、鳥籠というよりは、お洒落なガゼホという方が開放感もあって似ているかもしれない。
 そして網状の屋根はドーム型となっており、その天井からは小さなシーリングファンが吊り下がっている。
 このファンはゆっくり回る予定で、風通しが良いだけでなく、この中でも風をおこすことが出来るようになっているのだ。
 床部分には台座が固定されており、白い魔石が飾られている。
 魔力を流せばファンが回り、白い魔石に明かりが灯ることになっている。

 何故白い魔石にしたのかは、精霊を守る結界を作るなら聖結界が良いじゃない? とチアキさんが言い出したからです。
 お陰で魔法陣は更にややこしくなり、四日もかかることになったんです。
 だけど、聖結界の魔道具は光の精霊も気に入って頬擦りしてたくらいだし、この子達が過ごしやすいなら頑張った甲斐があるというものでしょう。


『わぁ! 本当に素敵だわ』
『ええ、とっても可愛らしいし、風も通り抜けているわ。あ、ほら見て。風を当てたら上の羽が回るわ』

 静かに興奮していた精霊たちも、白雪さんの手からテーブルに置かれた本体の周りを飛び回り、とても喜んでくれています。

「ふたりが休息する場所として過ごしやすそうですか?」
「ヴィオのネックレスになるからこの大きさにしているが、もう少し大きい方が良いのであれば調整は出来るから言ってくれ」
『とっても素敵よ! 直すところなんてないわ』
『ええ、私たちは大きさも自在だもの。この大きさで充分よ』

 大きさ変動ありなんですか? 一緒にいる間に変化したところは見たことないんですけど、いくつ隠し玉があるんですかね。そのうち教えてくださいね。
 住民の本精霊たちが喜んでくれたことで、完成という事で良さそうですね。

「じゃあ、あとはヴィオと、精霊たちがこの魔道具に魔力を注げば契約完了って事だね。
 さて、君たちはこれからヴィオに名前をもらって《個》の精霊となる。これまでのように仲間が吸収した魔素を還元してもらうことは出来なくなり、自身で吸収する必要が出てくる。それは良いね?」
『『ええ』』

 ええ? また知らん情報が出て来てますけど?
 チラリとチアキさんを見上げれば、コクリと頷かれた。いや、頷くんじゃなくてどういうことか聞きたいんですけど?

「どのみち精霊の気持ちは固まっておるのじゃろう? 見守っておけば良いのじゃ。ヴィオに悪い事は無いからな」

 白雪さんに窘《たしな》められて、大人しく儀式っぽいのを眺める事にしよう。
 完成披露から急に変わり過ぎじゃありません?
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