ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
579 / 584
ミドウ村へ

第512話 名付けの儀式

しおりを挟む

「君たちが彼女と共にいる事を望んでいる事はよく理解した。
 今後離れたいと願うのであれば、君たち自身が力を付けてこの魔道具の縛りを無くす必要がある、それも良いね?」
『『もちろんよ』』

 真剣な表情のイブさんと向かい合う精霊さんふたり。
 なんだか重要な儀式っぽいのに、リビングで良いのでしょうか。いつの間にか室内に到着していたミケさんも静かに壁際に立って儀式(?)を見つめています。

 力を付けるまでは魔道具からはそう離れることは出来ない事、
 自分達で魔素を吸収するには契約相手からもらうでもいいけど、魔獣の討伐が手っ取り早いということ、
 外の世界グロンディール大陸には精霊を見たことが無い人が殆どで、存在を知られると私が危険に晒されるなど、精霊たちに説明をしています。
 真剣に頷いているけど、精霊が魔獣討伐するとかどんな感じなんでしょうかね。
 それに私が危険に晒されるというのは、その精霊を寄越しやがれとかいう輩にという事ですかね。
 また前のスチーラーズみたいなのが湧いてくるって事?
 それはどんな奴が来ても大丈夫なように鍛えないとだね。

「まあ、最終確認って事だけど大丈夫そうだね。
 じゃあ、ヴィオに名付けをしてもらおうか。僕も精霊の名付けの現場に立ち会うのは二回目だけど、楽しみだな」

 メラメラしていたら、いつの間にか儀式は終わっていたみたいですね。
 名付け、そうか名付けか。
 え? 私が名前を決めるんですか? マジで? センス無い事この上ないと思いますよ?
 助けて~勇者えもん! と思ってチアキさんを見つめれば、白雪さんとミケさんに視線を投げられた。
 あ……(察し)
 どうしようかな。可愛い女の子に変な名前を付けたら、それこそ毒親扱いされちゃいそうじゃない?

「可愛い名前の方が良いかな。それとも精霊っぽい属性にちなんだ名前の方が良いかな」

 本人の希望を叶えましたってことで赦されるならと思って聞いてみたら、ふたりが顔を合わせて悩み始めた。

「あ、そういえば契約後は大小大きさを変えれたとしても主となる姿は変えられなかったと思うよ。今は女の子の姿になってるけど、それでいいの?」
『そうね~、人の形が言葉を話すのに楽だからこの形にしてたけど、ずっと一緒にいるなら違うのもいいかも』
『そうね、びおが気に入った姿を選んでから、名前を決めてもらいましょ』

 おぉ、名付けの前に見た目コンテストが始まる感じですか?
 イブさん以外は名付けを見たことが無いという事で、とても楽し気に見つめているけど、私も当事者じゃなかったら純粋に楽しめたんだろうなぁ。

『じゃあ、私からね~』

 光の精霊が小さな少女の姿から、170センチ大の大人美女に変身した。ただし半透明だけど。

「おぉ! 大人になるとこれまた違って見えますね。これは大人姿のまま小さくなるんですか?」
『ちゃんと色付きになると思ったけど駄目だったみたい。小さくなってみるね』
「力を付けて精霊王とか言われるレベルになれば実体化できる筈だよ」
「精霊王なんているんですね! それは属性につき一人とかなんですか?」
「いや、小さい数多《あまた》の精霊と呼び名を分ける為だけの物じゃから、複数おるかもしれんよ? 
 ただ、元々飽き性の精霊じゃからな、気に入った相手がおらんようになったら力を世界に還元して消える者も多い。じゃから世界に精霊王がウヨウヨおるという事は無いじゃろうな」

 成程、精霊王だから何か試練があるとか、使命があるとかではないんだね。王って言っちゃうから仰々しくなるけど、大精霊とかにしておけばいいのかもね。
 小さくなった光の精霊は、大人美女がちんまり三頭身になった感じで、これはこれで可愛らしいです。

『あら、こっちの方がヴィオはお気に入り?』
「おぉ、大人になるとヴィオって言えるようになるんですね」

 舌足らずな感じも可愛いから捨てがたいけど、大人美女の方が相談はしやすいかもしれないね。

「相談というよりあれだね、暴走するヴィオを止める役目をするなら、大人の姿でいてくれた方が良いかもだね」

 ちょっとイブさん? それはどういう意味でしょうか。
 そして光の精霊さんも「じゃあこれで」じゃないんですよ。なんで暴走する前提で話が進んでいるんですか? しないとは約束できないですけど、するつもりも多分きっとないと思いますよ。

『そっか。じゃあ私はこんな感じにしようかな』

 風の精霊ちゃんもムクムクと大きくなっていく。そして前髪をかき上げた精霊ちゃんはガチムチの大人男子に変身していた。

「ええっ!? 男子? っていうかガチムチ、ええっ!?」
「ぶはっ、イメージが違い過ぎるだろ」
「ほう、性別も自由なんじゃな。そうか、精霊は無性じゃからな。確かに実体化することを目標とするなら男女の大人が居れば親子というふりも出来て安全かもしれんな」

 白雪さんだけが超冷静なんですけど? 
 え? この緑半透明のお色気むんむんガチムチ男子は大丈夫なんですか? イブさんですら驚いてますよ。

『鳥の子達を想像して作ったけど駄目だった? ヴィオはこの姿じゃない方が良い?』

 おぉ、ガチムチイケメンがションボリした顔とかやめてくださいませ。
 そうか、どこかで見たことがあると思ったら、アリオールさんとリザンドロさんとマムさんと足して三で割った顔立ちなんだね。
 そっくりなのは肖像権とかを考えて辞めたのかな。
 ガチムチは好物ですが、精霊というイメージを大事にするのであれば細マッチョくらいで抑えて頂けると嬉しいです。
 そんな感じの事をオブラート十枚くらいで包んで伝えたら、良い感じの細マッチョさんが出来上がりました。

「えっと、男性の姿はそのままで行く感じです?」
『ヴィオの事を守れるなら』

 女児の姿でいたのは、私が怖がらないだろうと思っての事だったみたい。優しすぎるオカン精霊たちだけど、オカンとオトンが出来ました。
 ふたりは大人サイズになった状態で私の前に跪き、私の片手を其々の両手で恭しく持ち上げる。

「ヴィオ、ふたりに名前を」

 イブさんに言われてコクリと頷く。

「では、光の精霊に名を授けます。あなたはルーチェ、光という意味がある名前よ。
 そして風の精霊に名を授けます。あなたはヴェント、風という意味があります。これからも末永くよろしくね」
『ヴィオ、素敵な名前をありがとう。ルーチェはヴィオをずっと守り続けるわ』

 ルーチェが私の右手の甲に口づけをすれば、なんだか手の甲がホンワカ温かくなった。

『ヴェント、良い名をありがとう。これからもヴィオを大切に守ることを誓う』

 同じ様にヴェントが口づけをしたら、左手の甲が温かくなった。
 その後イブさんに言われて、魔道具に私とルーチェ、ヴェントの三人で魔力を流せば魔道具がしっかり起動したことが分かる。
 ファンが回りはじめ、魔石に明かりが灯った事でとても幻想的なアクセサリーになった。

 チアキさん達からは何の変哲もない鳥籠ペンダントのように見えているというので、魔力を流した私達だけにこの素敵なペンダントが見えている事が分かった。
 ふぅ、なんだか緊張したけど、無事に精霊の依り代も完成して良かったです。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

処理中です...