ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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ミドウ村へ

第513話 タニアさん達帰宅

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 儀式が終わればすぐに掌大になった精霊ズ。
 シュルリとペンダントに吸い込まれていくのは、聞いていたけれども実際に見るとドキドキしちゃいます。

「うまくいった?」
「はい、ふたりがペンダントに触れたら吸い込まれました。籠の中に白い光の玉と緑の玉がフヨフヨしているんですけど、これが精霊たちなんでしょうか」
「指輪の時には魔石だったから分からなかったが、あの形だとそうなるのか。興味深いな」
「僕達には石の光も見えない小さな鳥籠にしか見えないから分からないけど、呼びかけてみればいいんじゃない?」

 そうか、隠蔽の効果で精霊も白い魔石も見えないんだね。確かにそれが見えるのは危険だと思っていたからいいんだけど、この不思議な状況を共有できないのは残念です。

「ルーチェ、ヴェント、住み心地というか中はどう?」

 この丸い玉がふたりだと想定して声をかければ、フヨフヨしていた玉が激しく動き回る。

「えっと、興奮しているのは何となくわかるけど、その状態だと言葉は分からないって事だね」

 縦横無尽に鳥籠内を高速移動している様を見れば、多分喜んでいるのだろうけど、ボディランゲージが過ぎると思います。
 声を掛けたらピタリと動きが止まった精霊玉。プルプルしたと思えばルーチェとヴェントが飛び出してきた。

『とっても素敵よ! あの状態だとお喋りが出来なかったのを忘れていたわ』
『ああ、風もだけど聖結界のお陰であの中はとても心地いい』

 美女とイケメンがとても嬉しそうなので、あの超絶面倒だった魔法陣を頑張った苦労が報われたね。

「成功、という事だな」
「うむ、精霊たちが喜んでいるようでなによりじゃ」
「おめでとうございます、ヴィオ様、ルーチェ様、ヴェント様」
「うん、良かったね。君らが今後ヴィオと一緒にいてどんな風に過ごすのか、楽しみに経過を見せてもらうよ」

 チアキさんも、白雪さんも、ミケさんも喜んでくれているし、イブさんはこれが良い効果をもたらすのであれば、精霊たちが一緒にいたいと希望する時に助言が出来ると喜んでいる。
 そうか、翼人のヒトたちはこの大陸から離れることは無いだろうし、遠くに行ったとしても帰ってくるのも早い。だけどエルフは一度外に出れば中々戻ってくることはできない。
 勿論イブさんみたくドラって高速移動するヒトもいるけど、それは稀だと思うしね。
 そうなれば生まれた時から見守っていた精霊がついて行きたいと希望することもあったんだろう。

『そうね、幸いヴィオは戦う人だから私達も強くなる機会は多いわ』
『ああ、ちゃんと成長できるところをみせられるように頑張るよ』
「ははっ、ヴィオだけでも中々のものだが、そこに精霊が加わればヴィオだけで一個中隊の戦力になるな」
「あれ? 暴走を止める予定だったのに酷くなってる?」

 天国のお父さんとお母さん、勇者と賢者が酷いんです。
 白雪さんも笑ってないで止めてください。私、暴走列車じゃないんですからね。



 名付けの儀式を終えた翌日、良いタイミングでタニアさんとバレンさんが戻ってきた。二人のホクホクした顔を見れば、大量に収穫できたという事が分かるね。

「狩りながら下まで行って、また上まで戻ってを何度か繰り返したの。ほら、リポップ時間があるじゃない? どうしても10階のボスをやらないと広範囲にならないから、鹿肉が大量に手に入ったわ」

 昨日の話じゃないけれど、一個中隊というのはこのヒト達の事を言うんだと思いますよ?
 まさか20階層のダンジョンを何往復かしていたとか、意味が分かりません。

「まあボス部屋はボス戦後に長居しても大丈夫だと分かっているからな、あそこで休んで、翌日に深層階と低層階に分かれて両方を往復したんだ」

 バレンさんの報告に、まさかの単独行動だった事が判明しました。
 夕食は10階ボス部屋で合流して風呂に入って、翌日また其々の階(9階分)を採集しながら回るというとんでもないダンジョン攻略です。行きは右側、帰りは左側とか、移動速度がおかしいと気付いて下さい。

「まあドラゴンだからな」
「そうだね、ドラゴンじゃないと流石にそれは無理だね」

『ドラゴンだから』は良い言葉ですね。そのうち私も『ヴィオだから』で免罪符になるようになりますかね?
 お兄ちゃん界隈では既に効果があるような気がしますが、更に範囲が広がることを希望いたします。

 二人が大量に収穫して来てくれた米と葡萄は買い取りをさせていただき(二人は代金不要と言ったので、調理済みの料理と交換)、仕込んでいた酒も一週間経過しているので完成具合を確認する。
 果物だけのお酒はリキュールに近い感じで、炭酸水があれば飲みやすそうだと思った。
 料理酒の一樽分は私の鞄に、二樽はチアキ邸のキッチンで保管。
 ドブロクは白雪さんも気に入ったようで、再度仕込みをした。

 タニアさん達も早く自分たちの分を仕込みたいという事だったので、再びの修行旅に出発することになりました。
 なんだかバタバタと慌ただしくてすみません。

「気を付けて行ってくるのじゃぞ」
「おかえりをお待ちしておりますね」

 白雪さんはフルーツ酒が美味しかったので、またヒスに潜るつもりだと言っていた。少し遠い豊作ダンジョンにも行くかもしれないと言っていたので、帰ってきたら新しいお酒が増えているかもしれないね。
 二人に手を振ってミドウ村を後にした。
  
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