ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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閑話

〈閑話〉サマニアンズ 11

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 ~トンガ視点~

 ヴィオが送り先を書いてくれたお陰で、あれから僕達はダンジョンから出る度に手紙を送っている。
 あちらからは送れる場所が限られているようで、リズモーニだと王都のギルドだけ。なのでヴィオからの手紙はドゥーア先生から転送してもらっている。
 お貴族様にそんな手間をかけさせるのは申し訳ないと思ったんだけど、僕達宛ての手紙を送る時には必ず先生にも手紙が来るから良いんだって。

「あの屋敷の人達ってヴィオの事が好きすぎだよな。騎士が父さんの事を尊敬すんのは分かるけど、ヴィオの事も魔法騎士が尊敬してるのはマジですげえと思う」
「私と二対多数で対戦をしましたしね。あとは回復魔法の練習で騎士たちはヴィオさんのお世話になりましたから、尊敬するのはよく分かりますよ」

 ルンガとアスランさんが屋敷の騎士達の事を話しているのをぼんやり聞いている。
 今回は久しぶりに馬車の旅だから、索敵担当でも追い風担当でもなければ退屈になってしまう。

「それにしても、この魔道具はヤベエな」
「前に作ってくれたお守りでもヴィオが側にいてくれる気がしてよかったのに、まさか本気のお守りって驚きよね……」

 テリューとアンはまだ貰ったばかりのお守りの説明書を見ながら驚いている。
 うんうん、僕らも数週間前は同じ反応をしていたよ。
 ヴィオから届いたお守りという名の魔道具はやばかった。

 ◆◇◆◇◆◇


「ヴィオさんから皆に以前渡したお守りは”気の持ちようというだけのもので何の効果も無かったから、ちゃんと身を守れるお守りを作った”という事で届きました」

 ダンジョンから戻った僕達を待っていたドゥーア先生からそんな事を言われて手紙とお守り袋を渡されたんだよね。
 何故かプレーサマ前辺境伯閣下まで同席していたんだけど、どんな魔道具か見てみたいから待っていたんだって。先生とお揃いの耳飾りを付けていたから、閣下もヴィオのお守りを貰った事が分かったんだ。

「心して確認した方が良いぞ」

 ニンマリと笑いながら言われて袋をひっくり返せば、先生たちとお揃いの耳飾りが二つ出てきた。
 それは全員が同じで、彫られている絵柄が少しずつ違うだけだと分かった。

「ギルドタグにつける訳じゃないんだな」
「確かに。けどどんな効果があるんだ?」
「魔法陣は完全に隠蔽されていますね」

 耳飾りの内側には小さな白い魔石と色付きの魔石が嵌っているけれど、魔法陣は全く見えない。というか白い魔石?

「小袋の中に説明用紙が入っている筈ですよ」

 先生に言われて袋を触れば、カサリと音がして確かに小さな紙が入っていた。

《右耳は浄化の効果を備えた身心を守る魔道具なの、毒を飲んでも体内で浄化されるので安心してね。魅了魔法や洗脳の危険な魔法からも身を守るからつけっぱなしにしておいてほしいです。
 左耳は神様のおまじないのようなもので、前に作ったお守りモドキと同じ神様にしてるよ。
 トンガお兄ちゃんのは木属性の守護の神様マニアンドゥアで、危険な時にはお兄ちゃんと周囲の仲間を守るように木の檻ができると思う。本番前に一度試してみた方が良いかもです》

 白い魔石は聖属性の魔石だそうで、この魔道具だけでも王侯貴族が知れば略奪必須、オークションに出せば金板数枚はくだらないとの事。

「それでな、もうすぐ〔土竜の盾〕もこっちに来るという事だから、奴らの分を渡した後にこれを届けて欲しいのだ。これは儂から二パーティーへの指名依頼とさせてもらいたい」

 真剣な表情の閣下から渡された小袋には『フィルさん』と書いてあり、成程と思ったんだよね。

 ◆◇◆◇◆◇


 それで、数週間後にドゥーア先生宅に来た〔土竜の盾〕と一緒にメネクセス王国を目指して旅をしているって訳。

「けど、テリューたちはあっちから来たばっかりなのにとんぼ返りだな」
「まあそうだけど、これをもらったらすぐにフィルに届けてやらねえとな。浄化なんてフィルが一番必要な立場だろ?」

 自分の耳飾りをさすりながら言うテリューに皆も頷く。

《国の偉い人に素人の手作りを渡しちゃ駄目かもしれないので、無理に渡さないでもいいです》

 そう書いてあったヴィオの手紙だけど、あのフィルさんがヴィオからのプレゼントを受け取らないはずがない。僕達の手紙でもフィルさんの事は書いてあるけど、会った事がないから実感ができないんだろうね。

 皆自分たちのお守りの効果を話し合っているんだけど、これって本当に僕達が持ってて大丈夫? って思っちゃうよね。
 僕の魔道具もドゥーア先生の地下訓練場で試してみたんだけどさ、蔓草が僕とルンガとクルトを包み込んだと思ったら、隙間があるのに剣も魔法も通さないっていう仕様になってたわけ。
 アスランさんに結構な威力の魔法をぶち込んでもらったんだけど、全くの無傷だったんだよね。その上近付いてきた相手には蔓草が絡みついて捕獲する始末。

「なんか俺達魔草の中にいる気分だな」

 ルンガの呟きに納得しかなかったんだよね。
 ヴィオは僕達が何と戦うことを予想して作ってくれたんだろうね。
 もしかしたらヴィオがいる離島はこんな魔道具が必要なほど危険な魔獣が多いって事なのかな?
 お兄ちゃんは心配だよ。
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