ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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閑話

〈閑話〉サマニアンズ 12

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 ~トンガ視点~

 ドゥーア先生のお屋敷を出て一か月半という速さでメネクセス王国の王都に到着した。
 閣下のホースヴァルルをお借りできたし、風魔法と回復魔法を全員が使えるというのがかなり大きいと思う。

 この移動中に〔土竜の盾〕の魔道具性能もしっかり確認することが出来たよ。
 僕達は先生の屋敷にいる時間がそれなりにあったから、色々実験したからね。
 僕のはこないだ説明した通り、性能がやばすぎる盾。盾だけじゃなく攻撃にも転ずるけどね。

 ちなみにルンガの魔道具は遠見の神ヘイルダムで、視覚と聴覚が強化されるって事だった。身体強化を切ってもそれ以上の効果というから森の中やダンジョンではいいよね。気配察知能力も上がるので奇襲攻撃も心配無用と書いてあったけど、視覚と聴覚だけでも十分なのにね。
 ルンガは索敵をする必要が無くなったって言ってたよ。

 クルトの魔道具は調理の神様だったんだけど、料理の腕が上がるとかそういうのではなかったんだ。

「俺が作った料理は回復量が上がるらしいぞ。あと、知らねえ食材でも調理方法が分かるって」
「え? ってことはヴィオに聞かなくてもハズレ素材が使えるかもしれないって事?」
「おぉ! それはヴィオが喜びそうだな。いつもは教えてもらってばっかりだからな、これも美味いんだぞって教えてやろうぜ」

 分かる食材しか採集してこなかったけど、これは豊作ダンジョンにどんどん潜るべきじゃない?
 ナンダコレっていうものでもクルトが調理できれば食えるものって事だもんね。
 ふふっ、ヴィオが驚く顔を見てみたいね。

「私の魔道具は学生たちもそうですが、研究者なら垂涎という感じですね。今まで読んだ資料ももう一度読み直して知識を入れ直したいところですよ」

 アスランさんの魔道具は研究の神様で、一度読んだ資料の内容は忘れないんだって。頭の中にある知識って思い出せない事がよくあるけど、それが無くてするっと出てくるっていうから、凄く便利だよね。確かに学生たちが欲しがる魔道具だよね。

 テリューの魔道具は僕と似た感じだね、水の盾で仲間ごと守ってくれる。敵がくっついたら離れることはできないから、中から攻撃してねって書いてあったよ。

「俺は魔法の使いどころを考える必要があるかもしれんな」

 レスは魔法の神様マジドミラル、魔法の威力が倍増してるらしくって、思った以上の攻撃力になるみたい。確かに素材確保したい外の魔獣が丸焦げになるのは困るね。
 ヴィオがよく使っていたポアレスサイズのファイアボールを伝えておいたよ。極小にすれば威力が上がっても傷は小さくて済むからね。

 アンは武勇の神様バロルーガで、どんな武器でも使いこなせるようになるんだって。試しにルンガのトンファーを渡したら、初めて使ったのに完璧に使いこなしていたね。ヴィオはアンに最強の武人を目指してほしいのかな? 本人がやる気だから止めないけど、テリュー頑張って。

 シエナは愛と豊穣の女神テクスアモール、これは説明用紙だけで確認できていないんだけど、豊作ダンジョンでの収穫量が増えるんだって。これは朗報だよね。珍しい素材の時はシエナに頑張ってもらわないとだね。
 あとは、縁結びの神様でもあるから、良縁は近づきやすく、悪縁は避けやすいんだって。こればっかりは移動で町に寄らない今は確認のしようが無いんだよね。
 王都で買い物にでも出かければ効果が分かるかもって楽しみにしてる。

「ネリアはあれだな、アンデッド相手だったら完全ワンパンだな」
「ちょっと、これは回復魔法の効果増大で、あれは浄化魔法じゃない。違う魔法よ~」

 ウミユダンジョンの最終ボス、アンデッド集団を瞬殺したのは今でも時々笑い話になっている。あの時は効果を増大させるのと、範囲魔法にする魔法陣を使っていたけど、今なら魔法陣が無くても行ける気がするけどね。

「オトマンは森に入ったら無敵って事よね」
「確かに。周辺の木々がざわざわ動き出した時はビビったけどな」

 オトマンは森の守護神アルヴィーザル、確か聖獣フェンリルが友人とか書いてあった気がするけど、森自体が仲間になるみたいで、敵が近づいてこれないという効果が発揮されたんだよね。

「けど、敵が近付けないから討伐が必要な時は困るだろう。魔の森でどれくらい効果があるのかが分かれば、ヴィオが攫われたあの場所までも行けそうな気はするけど」

 確かに討伐をするのに木々が魔獣を追い払うなら困っちゃうね。魔道具は魔力を込めなければ良いだけだけど、ヴィオが討伐を嫌がるとは思えないし、もう一つの効果を期待してたのかな?

「家畜とかと仲良くなるってのはどうなんだろうな」
「この辺に家畜も動物もいなかったからね。帰りにヘイジョーによればカウカウがいた筈だから確認してみようかな」

 王都に到着した僕たちは、以前と同じ宿に入った。
 フィルさんとの待ち合わせはいつも通りギルドの会議室なんだけど、王都に来た時はこの宿に泊まるように言われているんだよね。
 僕たちが乗ってきた馬車はドゥーア先生の家門が入っているし、ホースヴァルルは高級な魔馬だからね。下手な場所に預けて襲われでもしたら宿が潰れちゃうからね。
 ああ、ホースヴァルルは強いからね、余程の相手じゃないと組み敷くなんてことは出来ないし、襲ったら逆に瀕死になると思うから馬の心配はしていないよ。
 客の大事な馬を襲われたって事で宿の信用がガタ落ちになるって事ね。

 指定されている宿は高級宿だし、流石に今回は馬鹿な貴族が出てくるという事は無いと思うから安心してほしいと言われている。
 例の悪侯爵たちも処刑されて半年以上だし、大分王都の風通りは良くなったって事だと思う。
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