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春樹と雪華2。
しおりを挟む俺はその後雪華をアパートまで送り届けた。
道中、雪華がぎゅっとくっついていて・・・不安ぶりがよくわかった。
雪華「ごめん・・・お仕事あるのに・・・。」
雄大「大丈夫。出動は他の隊だから。事務仕事だけだし。」
雪華「・・・ごめん。」
その『ごめん』が何に対しての『ごめん』なのかわからなかったけど、俺は雪華をアパートの部屋に入れた。
雄大「鍵かけて。ケータイはすぐそばに持ってて。」
雪華「・・・うん。・・・ごめん・・」
雄大「明日・・・仕事が一区切りついたら見に来るから・・・」
雪華「うん・・・。」
まだ唇をごしごしと拭く雪華。
よっぽど嫌で・・・気にしてる。
雄大「ほら、俺とキスしよ?もう拭かないで。」
そう言って雪華の唇を食べるようにして塞いだ。
ついでに唇をぺろっと舐める。
雪華「んっ・・・・。」
雄大「もう拭いちゃだめだからな?」
雪華「うん・・・。」
雄大「おやすみ。」
雪華「おやすみ・・・。」
アパートのドアを閉め、鍵がかかるのを待つ。
がちゃんっと音が鳴ったのを確認してから俺は署に戻った。
ーーーーー
翌日・・・
雪華side・・・
昨日雄大さんに送ってもらってからすぐにベッドに入った私は、朝早くに目が覚めた。
時計を見ると・・・5時だ。
雪華「・・・頭が朦朧とする・・・。」
ふらふらとする体に目がしっかりと開かない。
この症状は・・・風邪だ。
雪華「体温計・・・・」
ガサガサとベッド脇に置いてある小さな棚を開けて体温計を取りだした。
脇に挟んでボタンを押す。
ピピッ・・
しばらくして体温計が鳴り、取り出した。
表示窓には38度の数字がある。
雪華「あー・・・風邪引いた・・・。店、休むって連絡しなきゃ・・・。」
そう思ったものの、まだ朝の5時だ。
今、店長に電話するのもどうかと思い、アラームを仕掛ける。
雪華「7時なら店長も起きてる・・・それまでもっかい寝よ・・・。」
ゴソゴソと布団に沈み、私は目を閉じた。
ーーーーー
ピピピッ・・・ピピピッ・・・
7時のアラームで目が覚めた私はケータイを取った。
そのまま店長に電話をかける。
ピッ・・ピッ・・ピッ・・・
店長「もしもーし?せっちゃん?」
雪華「てんちょ・・・すみません、風邪引きました・・・。」
店長「えぇ!?大丈夫!?今日は休みなさい!」
雪華「すみません・・・」
店長「いいのよ!ゆっくり寝るのよ?」
雪華「はい・・・失礼します・・・」ピッ・・・
電話を切り、私はそのままメールを打った。
相手は・・・雄大さんだ。
『風邪引いて、熱があるから今日は来ちゃダメだよ。ごめんね。雪華』
雪華「そ・・送信・・・」
ピッと送信ボタンを押して、私はそのまま力尽きた。
雪華「・・・zzz。」
ーーーーーー
雄大side・・・
仮眠から起きて来た俺は、雪華から来たメールを読んでいた。
雄大「風邪引いたって・・・絶対昨日のことが原因だろ・・・。」
元カレに襲われそうになって・・・心がパニックになってる。
それで熱を出したと考えるのが妥当だった。
雄大「キス一つであんなに唇擦るんだもんな・・・。」
雪華が心の傷を負ってしまったことを・・・どうフォローしていくか考えながら俺は仕事に戻った。
ーーーーー
雪華side・・・
雪華「んぁ・・・・・」
長い間眠っていたような気がしながらも私は目を覚ました。
朝と同じで上手く頭で考えることをできなく、目も霞んで見える。
雪華「これは・・・やばい・・・?」
そんなこと思いながら喉の渇きを潤したく、私はベッドから体を起こした。
ケータイを持って・・・ふらつく身体を壁で支えながらキッチンに向かって歩く。
雪華「はぁ・・はぁ・・・雄大さんに・・・助けてもらったほうが・・・いいかも・・・・」
このまま意識を手離したら大変なことなりそうな気がして、ケータイの画面を開く。
霞む目で『雄大』って文字を探してると・・・玄関のドアがノックされる音が聞こえた。
コンコン・・・コンコン・・・・
雪華「?・・・雄大・・さん・・・?」
メールで『来ちゃだめ』とは伝えたけど、もしかしたら来てくれたのかもしれない。
風邪をうつしちゃうかもしれないけど・・・助けて欲しくて玄関に向かった。
コンコン・・・コンコン・・・
雪華「ま・・まって・・・今・・開ける・・・」
私はこの時、ドアの向こうは『雄大さん』だと信じ切っていた。
壁に手をつきながら玄関に行き、ドアを開けると・・・そこには雄大さんじゃない人が立っていた。
雪華「・・・は・・春樹・・・。」
そう、ドアの向こうにいたのは春樹だった。
雪華「帰って・・・・」
春樹「帰るさ・・・お前を抱いたらな。」
雪華「無理・・・・」
私は手に持っていたケータイの画面を見た。
さっきまで雄大さんのアドレスを探していて・・・よくよく見たらそのアドレスを開いてる。
雪華「助けて・・・雄大さん・・・」
私は通話ボタンを押した。
ーーーーー
雄大side・・・
デスクルームで書類仕事をしてると、雪華から電話がかかってきた。
ピピピッ・・・ピピピッ・・・
雄大「雪華からだ。熱・・・上がった?」
もしかしたら体調が悪化して俺に電話をしてきたのかもしれない。
俺は通話ボタンを押した。
ピッ・・・
その時、ちょうど俺の後ろを通った隊のメンバーが椅子にぶつかった。
どんっ・・・!
「あ、悪い。」
雄大「大丈夫ー。」
ぶつかった反動で、俺は通話ボタンのほかにスピーカーホンのボタンも押してしまった。
ピッ・・・
『やだ・・・!やめて・・・!』
『いいだろ!?あいつとはシたんだろ!?』
ガコンッ・・・!ドサッ・・・!!
『いやっ・・!!』
『大人しくしろって!!殴るぞ!?』
『いやぁぁーーーー!!』
雄大「・・・え!?」
「は!?」
デスクルーム中に響き渡った雪華の声。
どう考えても・・・異常事態だ。
雄大「お・・俺、雪華のとこいってきます!!」
「お・・おう!!」
雄大「警察に電話しといてください!場所は署の西側にあるアパート!」
「わかった!!」
俺はデスクルームを飛び出した。
走って階段を下りて、署の敷地を駆け抜ける。
雪華のアパートまで・・・走れば数十秒で着く。
1秒でも早く到着するために・・・俺は全力で走った。
雄大「はぁっ・・!はぁっ・・!くっそ・・・!!」
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