6 / 11
第6話
しおりを挟む
「でも……」
「言い訳は後で聞きます!それよりも今はローサちゃんです!」
さらに父が自己弁護をするために口を開こうとした時だった。母は甲高い声を天井の上まで響き渡らせる。そして数ヶ月前に結婚した娘の名前を叫んだ。
「ローサがどうしたんだ?」
強烈な言葉を浴びせられて心理的な圧迫感を覚えた父は、自信をなくし心がひるんでしまう。だがローサという娘の名前が耳に入り込んで意識せずに尋ねていた。
「お父様、今日ローサから手紙が届いたのです」
「これは……ローサが助けを求めているということか?」
ローサに何があったんだ?そう言った父にクレアは、いきなり早口に喋り出して手紙を渡した。手紙を受け取って一通り目を通すと、戸惑いの表情を浮かべている。
差出人の名前が書かれていないので、父は本当にローサが寄こした手紙なのか分からなくて、再び真剣な口調で問いかけた。
「間違いなくローサが書いた字です」
「そうよ!だからあなたの情婦のことは今はどうでもいいの!ですがローサちゃんを助けた後で覚悟してくださいね?」
「分かった……」
だが、ローサの字なのは火を見るよりも明らかであるとクレアは主張する。ローサの部屋に行き机の引き出しからノートを取り出して、後で筆跡を確かめたのだ。
続いて夫人も切々と訴えかけるような目で、感情を爆発させる姿を見せる。夫の不倫問題にも頭を悩まされるが、今は娘のほうが何倍も心配する気持ちの方がずっと強い。
ローサを救い出した後で、ゆっくり話し合いましょうね?妥協いたしませんよ?夫人はそう念押しすると公爵家の主は消えそうな声で返事をした。
「うおおぉおおおぉぉおおおおおっっ!」
父はローサの見覚えのある筆跡のメモと、手紙を交互に見比べながら文字の検証を行った後、力を振り絞って動物が吠えるような凄まじい絶叫を放った。
「お父様?」
「あなた?」
突然この人は何を騒いでいるの?やかましい声を立てる父に、美しい母と娘は少しの間、どうしたものかという感じで顔を見合わせている。
「頼りない男の家に嫁がせてしまったようだな……。ローサを助けに行くぞ!」
伯爵家の分際で娘に不当な仕打ちを行うなど、公爵家の血と誇りが許さない。その怒りは自然とローサの結婚相手のリチャードに向けられた。
腹の底に湧いた怒りと興奮が収まらない様子で、正当な理由がない場合は、伯爵家を永遠に葬り去ると判断したのである。
相手の家に嫁いだ大切な娘が、粗末な扱いを受けている。そのまま放置しておくことに耐えられなくて、再び声を張り上げた父はローサの命を救うべく行動を開始した。
「言い訳は後で聞きます!それよりも今はローサちゃんです!」
さらに父が自己弁護をするために口を開こうとした時だった。母は甲高い声を天井の上まで響き渡らせる。そして数ヶ月前に結婚した娘の名前を叫んだ。
「ローサがどうしたんだ?」
強烈な言葉を浴びせられて心理的な圧迫感を覚えた父は、自信をなくし心がひるんでしまう。だがローサという娘の名前が耳に入り込んで意識せずに尋ねていた。
「お父様、今日ローサから手紙が届いたのです」
「これは……ローサが助けを求めているということか?」
ローサに何があったんだ?そう言った父にクレアは、いきなり早口に喋り出して手紙を渡した。手紙を受け取って一通り目を通すと、戸惑いの表情を浮かべている。
差出人の名前が書かれていないので、父は本当にローサが寄こした手紙なのか分からなくて、再び真剣な口調で問いかけた。
「間違いなくローサが書いた字です」
「そうよ!だからあなたの情婦のことは今はどうでもいいの!ですがローサちゃんを助けた後で覚悟してくださいね?」
「分かった……」
だが、ローサの字なのは火を見るよりも明らかであるとクレアは主張する。ローサの部屋に行き机の引き出しからノートを取り出して、後で筆跡を確かめたのだ。
続いて夫人も切々と訴えかけるような目で、感情を爆発させる姿を見せる。夫の不倫問題にも頭を悩まされるが、今は娘のほうが何倍も心配する気持ちの方がずっと強い。
ローサを救い出した後で、ゆっくり話し合いましょうね?妥協いたしませんよ?夫人はそう念押しすると公爵家の主は消えそうな声で返事をした。
「うおおぉおおおぉぉおおおおおっっ!」
父はローサの見覚えのある筆跡のメモと、手紙を交互に見比べながら文字の検証を行った後、力を振り絞って動物が吠えるような凄まじい絶叫を放った。
「お父様?」
「あなた?」
突然この人は何を騒いでいるの?やかましい声を立てる父に、美しい母と娘は少しの間、どうしたものかという感じで顔を見合わせている。
「頼りない男の家に嫁がせてしまったようだな……。ローサを助けに行くぞ!」
伯爵家の分際で娘に不当な仕打ちを行うなど、公爵家の血と誇りが許さない。その怒りは自然とローサの結婚相手のリチャードに向けられた。
腹の底に湧いた怒りと興奮が収まらない様子で、正当な理由がない場合は、伯爵家を永遠に葬り去ると判断したのである。
相手の家に嫁いだ大切な娘が、粗末な扱いを受けている。そのまま放置しておくことに耐えられなくて、再び声を張り上げた父はローサの命を救うべく行動を開始した。
1
あなたにおすすめの小説
運命の人は貴方ではなかった
富士山のぼり
恋愛
「パウラ・ ヴィンケル……君との婚約は破棄させてもらう。」
「フレド、何で……。」
「わざわざ聞くのか? もう分かっているだろう、君も。」
「……ご実家にはお話を通されたの?」
「ああ。両親とも納得していなかったが最後は認めてくれた。」
「……。」
「私には好きな女性が居るんだ。本気で愛している運命の人がな。
その人の為なら何でも出来る。」
【完結】小さなマリーは僕の物
miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。
彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。
しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。
※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)
私の旦那様はつまらない男
おきょう
恋愛
私の旦那様であるロバート伯爵は、無口で無愛想な仕事バカ。
家庭を返り見ず仕事に精を出すのみのつまらない男である。
それでも私は伯爵家の妻として今日も面倒な社交の場に出なければならないのだ。
伯爵家の名を落とさないために。あぁ面倒くさい。
※他サイトで投稿したものの改稿版になります。
冷淡姫の恋心
玉響なつめ
恋愛
冷淡姫、そうあだ名される貴族令嬢のイリアネと、平民の生まれだがその実力から貴族家の養子になったアリオスは縁あって婚約した。
そんな二人にアリオスと同じように才能を見込まれて貴族家の養子になったというマリアンナの存在が加わり、一見仲良く過ごす彼らだが次第に貴族たちの慣習や矜持に翻弄される。
我慢すれば済む、それは本当に?
貴族らしくある、そればかりに目を向けていない?
不器用な二人と、そんな二人を振り回す周囲の人々が織りなすなんでもない日常。
※カクヨム・小説家になろう・Talesにも載せています
【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす
春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。
所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが──
ある雨の晩に、それが一変する。
※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。
君に何度でも恋をする
明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。
「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」
「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」
そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる