彼の妹にキレそう。信頼していた彼にも裏切られて婚約破棄を決意。

佐藤 美奈

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「イブリンあのこと覚えてる?」
「あのことって?」
「ほら、少し前にデートした時に話して約束したよね?」
「ケーキのこと?」
「そうだよ。やっと思い出してくれた」

報告することなく急に家に現れた彼は、近づいてきてお茶目な顔になり問いかけてきました。あの事と言われてもイブリンはすぐに思い出せません。

すると彼は具体的に話してきます。デートと言われればイブリンも気がついたようにケーキ?と答えました。彼はとても嬉しそうな声で喜びいっぱいの顔に変わる。

「美味しすぎる。これは素晴らしい!」
「そんなに?」
「イブリンにはこのケーキの見事な出来栄えが分からないのか?」

彼は甘い物には目がない大のスイーツ好きの男性でした。ある日デートしていた時に訪れた店でのこと。彼はその店のケーキがとても気に入り風味がよい生地もしっとりしてクリームにコクがあると感激していました。

気持ちが高ぶったのか涙に声を詰まらせながらケーキの感想を語り続ける。彼のことは好きでしたが、あまりに一線を越えたリアクションにイブリンはちょっと引いてしまうほど。

その店のケーキは確かに美味しかったですけど正直に言うと、イブリンには彼が言うほどではありませんでした。何故ならばもっと美味しいケーキを食べたことがあるからです。

「これより美味しいケーキ食べたことあるけど?」
「それは本当か!」
「ホーク落ち着いて……」
「ごめんつい興奮してしまって……それより本当なのか!」

イブリンは隣で感動している彼を軽く受け流して、自分はこのケーキよりも極上な味のケーキを知ってるよと涼しい顔で喋り始める。

ケーキの美味しさにしみじみと感じて目を閉じたまま魅力に酔いしれていた彼が、もの凄い勢いでイブリンとの距離を縮めて強く求めるように聞いてくるのです。

明らかに興奮状態の彼をイブリンはなだめて手綱を引き締め大人しくさせる。彼も店の中で正気を保てなかったことに恥ずかしそうに謝りました。

「本当だよ」
「これよりも美味しいなんて僕には信じられないな……想像できない……」
「じゃあ今度食べにくる?」
「イブリン嘘じゃないよね?言っておくけど僕はスイーツの味にはうるさいよ?」
「そうなの?」
「その目は僕のことを疑ってる目だね。イブリンは僕が味が分からない男だと思ってるのかな?」
「そんなことないよ。でもホークも満足してくれると思う」

イブリンが平然と答えると彼はまだ現実が受け入れられなくて口を開いたまま言葉を失い、気持ちの整理がついていない感じでにわかに信用できないと言う。

彼はケーキに関してはグルメだから舌が肥えてるよ?と、目を大きく開いて得意げな顔で言い返す。逆にイブリンは怪しい視線を向けて彼も喜んでくれると笑顔で答えました。
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