彼の妹にキレそう。信頼していた彼にも裏切られて婚約破棄を決意。

ぱんだ

文字の大きさ
8 / 39

しおりを挟む
「なんか急かしてるみたいで悪いな」
「でもそのために来たんでしょ?」
「まあそうだけどね……」

イブリンに事前に知らせることなく彼が来訪した理由はケーキでした。イブリンが話していた最高のケーキが早く食べたくて我慢できなかったのです。

彼はケーキを食べる気満々で来たくせに、申し訳ない顔で催促するみたいで悪いねと言ってきます。イブリンがケーキが目的で訪れたのでしょう?と尋ね返すと気まずそうに答える。

「じゃあ今から作るよ」
「えっ?イブリンが作るの?」
「そうだよ」
「大丈夫なの?」

イブリンからの意外な返事にホークは驚いて不安そうな顔で聞く。貴族の家には料理人がいますから貴族が料理をすることは基本的にはありません。

まして上級貴族である公爵令嬢のイブリンがケーキを作ると言い出すなんて想像もしない。当然ながら使用人のパティシエが作るとばかり思っていました。

だけどイブリンは普通に自分が作ると余裕のある声で答える。何を隠そうイブリンは以前からお菓子作りを習っていたのです。

イブリンも相当なスイーツ好きで自分も作ってみたいと思うようになり、情熱を込めて学んで気がついたらお菓子作りの魅力にすっかりハマっていました。今では結構な腕前で家族からも好評です。

「それは楽しみだな」
「期待しててね」

彼がオーシャンブルーの瞳を輝かせて屈託のない笑顔になる。イブリンも楽しみにしていてねという風に愛嬌を感じる澄み切った声で答えました。

「その間休ませてもらうよ」

ケーキを作るには準備にも手間取りますし、ケーキが完成するまである程度は時間がかかるので、出来上がるまで彼には部屋で休息してもらうことに。彼も疲れていたようでじきに眠りに落ちた。

数時間後、ケーキが仕上がる。イブリンが今できる最大限の力を発揮して作ったケーキ。思っていたよりも出来栄えも凄く良い。

彼がケーキを食べた時の喜ぶ顔を頭の中で描くと、希望で頬が緩み思わず笑みがこぼれる。早速彼のいる部屋に持って行こうと心が弾む気持ちでした。

あれ?部屋の中から楽しそうに喋っている男女の声が聞こえる。イブリンは不思議な顔になり、行儀の悪い事ですがつい聞き耳を立ててしまう。

「お兄様こちらはいかがですか?」
「とても美味しいよ」
「日頃からお兄様が気に入っているお菓子をたくさん持ってきましたの」
「本当に気が利くなあ」

ドアを開けたイブリンはやっぱりという残念な気持ちで無念の表情を浮かべました。

何という事でしょう……そんな事は絶対にあってはならないのに……イブリンが神経を集中させてケーキを作っている間に、彼の妹のフランソワが来ていたのです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者と養い親に不要といわれたので、幼馴染の側近と国を出ます

衿乃 光希
恋愛
卒業パーティーの最中、婚約者から突然婚約破棄を告げられたシェリーヌ。 婚約者の心を留めておけないような娘はいらないと、養父からも不要と言われる。 シェリーヌは16年過ごした国を出る。 生まれた時からの側近アランと一緒に・・・。 第18回恋愛小説大賞エントリーしましたので、第2部を執筆中です。 第2部祖国から手紙が届き、養父の体調がすぐれないことを知らされる。迷いながらも一時戻ってきたシェリーヌ。見舞った翌日、養父は天に召された。葬儀後、貴族の死去が相次いでいるという不穏な噂を耳にする。恋愛小説大賞は51位で終了しました。皆さま、投票ありがとうございました。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた── 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は── ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました

3333(トリささみ)
恋愛
「あなたのことが、あの時からずっと好きでした。よろしければわたくしと、お付き合いしていただけませんか?」 男爵令嬢だが何不自由なく平和に暮らしていたアリサの日常は、その告白により崩れ去った。 初恋の相手であるレオナルドは、彼女の告白を陰湿になじるだけでなく、通っていた貴族学園に言いふらした。 その結果、全校生徒の笑い者にされたアリサは悲嘆し、絶望の底に突き落とされた。 しかしそれからすぐ『本物のつまはじき』を知ることになる。 社会的な孤立をメインに書いているので読む人によっては抵抗があるかもしれません。 一人称視点と三人称視点が交じっていて読みにくいところがあります。

幼なじみのとばっちりに巻き込まれ、そんな彼女に婚約者を奪われるまでしつこくされ、家族にも見捨てられた私に何を求めているのでしょう?

珠宮さくら
恋愛
カミーユ・サヴィニーは、幼なじみに婚約者を奪われることになった。 実母はそんなことになった結果だけを見て物凄く怒っていた。そして、勘当でも、修道院にでも行かせようとして、恥を晒した娘なんて、家に置いておけないとばかりに彼女の両親はした。実の兄は我関せずのままだった。 そんなカミーユのことを遠縁が養子にしたいと言い出してくれたことで、実家との縁を切って隣国へと行くことになったのだが、色んなことがありすぎたカミーユは気持ちに疎くなりすぎていたからこそ、幸せを掴むことになるとは思いもしなかった。

【完結】気味が悪いと見放された令嬢ですので ~殿下、無理に愛さなくていいのでお構いなく~

Rohdea
恋愛
───私に嘘は通じない。 だから私は知っている。あなたは私のことなんて本当は愛していないのだと── 公爵家の令嬢という身分と魔力の強さによって、 幼い頃に自国の王子、イライアスの婚約者に選ばれていた公爵令嬢リリーベル。 二人は幼馴染としても仲良く過ごしていた。 しかし、リリーベル十歳の誕生日。 嘘を見抜ける力 “真実の瞳”という能力に目覚めたことで、 リリーベルを取り巻く環境は一変する。 リリーベルの目覚めた真実の瞳の能力は、巷で言われている能力と違っていて少々特殊だった。 そのことから更に気味が悪いと親に見放されたリリーベル。 唯一、味方となってくれたのは八歳年上の兄、トラヴィスだけだった。 そして、婚約者のイライアスとも段々と距離が出来てしまう…… そんな“真実の瞳”で視てしまった彼の心の中は─── ※『可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~』 こちらの作品のヒーローの妹が主人公となる話です。 めちゃくちゃチートを発揮しています……

妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った

ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。 昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。 しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。 両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。 「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」 父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。 だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。

処理中です...