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「イブリンから仲直りできる具体的な指示を出してもらったんだよ。それに従うしかないだろう?」
「ですが……身体のあちこちが痛くて」
「フランソワ!意気地のないことを言うな!」
彼女は自分との関係を修復するために明確な条件を出してくれている。それなのに後ろ向きな発言をするとは何事だと妹を責めた。
「お兄様……殴りましたね」
「仕方ないだろう。そもそもフランソワが悪いんだ。イブリンをいじめるから」
「それはお兄様も同じでしょう?」
「違う!僕はフランソワにそそのかされただけだ。妹の罠に引っかかるとは兄としても情けないことだが……」
「ホークお兄様ひどい!お忘れですか?最初はお兄様が強引に迫ってきましたよね?」
「だからそれはフランソワに誘惑されて……」
弱音を吐く妹に兄が頬を叩く。生まれてから初めて顔をぶたれた妹は、戸惑いを覚えましたが緩やかに怒りが湧いて兄への愛情を失っていく。
お前は殴られてもしょうがないだろ?妹が彼女を軽視して、ぞんざいな態度をとったのが原因だろう?
妹は直ぐに反発する。お兄様が私の身体を求めてきたのでしょう?そんなことは断じてない。妹が色気を覗かせてきたからだ。
二人は公衆の面前でしゃがんだ状態で醜い言い争いを始める。兄は自分の悪いところは棚に上げて、妹に一言も謝らない。
「お兄様がそのような態度なら私は謝罪行脚はやめさせていただきます」
「ふざけるな!そんなことは許さん!」
「暴力まで振るうお兄様に何を言われても無理ですから!」
「フランソワには本気でイブリンに誠意を見せようという気持ちがないのか!」
「ございません!最初からあの女は嫌いなの。お兄様に親愛の情があったから一緒に頭を下げに回っていたのです。でも、たった今お兄様への恋愛感情は粉々に消滅いたしました!」
二人の間に僅かな沈黙があり、決断した顔で妹が口を開く。あちこちにお詫びに行くのはもう嫌だ。これまでは兄への好きという特別な想いで妹は一生懸命に取り組んできた。
けれど、兄に顔をぶたれて心をズタズタにされ嫌悪感を感じる。前と打って変わって兄は冷たくするようになってしまい、自分の気持ちを汲みとり優しい言葉もかけてくれない。
そればかりか謝罪行脚を当然のように求める。彼女と結婚するために、自分に甘えてくるだけのみっともない兄。もうこんな兄は嫌いで虫唾が走る。
「待てフランソワ!この美しく整った顔立ちの兄を見捨てるというのか!」
「今のお兄様はヘタレで腰抜けの下品な男ですわ!」
妹は一心不乱にすがりついてくる兄を振り払い、その場に放置し実家に帰って行く。
「ですが……身体のあちこちが痛くて」
「フランソワ!意気地のないことを言うな!」
彼女は自分との関係を修復するために明確な条件を出してくれている。それなのに後ろ向きな発言をするとは何事だと妹を責めた。
「お兄様……殴りましたね」
「仕方ないだろう。そもそもフランソワが悪いんだ。イブリンをいじめるから」
「それはお兄様も同じでしょう?」
「違う!僕はフランソワにそそのかされただけだ。妹の罠に引っかかるとは兄としても情けないことだが……」
「ホークお兄様ひどい!お忘れですか?最初はお兄様が強引に迫ってきましたよね?」
「だからそれはフランソワに誘惑されて……」
弱音を吐く妹に兄が頬を叩く。生まれてから初めて顔をぶたれた妹は、戸惑いを覚えましたが緩やかに怒りが湧いて兄への愛情を失っていく。
お前は殴られてもしょうがないだろ?妹が彼女を軽視して、ぞんざいな態度をとったのが原因だろう?
妹は直ぐに反発する。お兄様が私の身体を求めてきたのでしょう?そんなことは断じてない。妹が色気を覗かせてきたからだ。
二人は公衆の面前でしゃがんだ状態で醜い言い争いを始める。兄は自分の悪いところは棚に上げて、妹に一言も謝らない。
「お兄様がそのような態度なら私は謝罪行脚はやめさせていただきます」
「ふざけるな!そんなことは許さん!」
「暴力まで振るうお兄様に何を言われても無理ですから!」
「フランソワには本気でイブリンに誠意を見せようという気持ちがないのか!」
「ございません!最初からあの女は嫌いなの。お兄様に親愛の情があったから一緒に頭を下げに回っていたのです。でも、たった今お兄様への恋愛感情は粉々に消滅いたしました!」
二人の間に僅かな沈黙があり、決断した顔で妹が口を開く。あちこちにお詫びに行くのはもう嫌だ。これまでは兄への好きという特別な想いで妹は一生懸命に取り組んできた。
けれど、兄に顔をぶたれて心をズタズタにされ嫌悪感を感じる。前と打って変わって兄は冷たくするようになってしまい、自分の気持ちを汲みとり優しい言葉もかけてくれない。
そればかりか謝罪行脚を当然のように求める。彼女と結婚するために、自分に甘えてくるだけのみっともない兄。もうこんな兄は嫌いで虫唾が走る。
「待てフランソワ!この美しく整った顔立ちの兄を見捨てるというのか!」
「今のお兄様はヘタレで腰抜けの下品な男ですわ!」
妹は一心不乱にすがりついてくる兄を振り払い、その場に放置し実家に帰って行く。
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