美人な姉を溺愛する彼へ、最大の罰を! 倍返しで婚約破棄して差し上げます

佐藤 美奈

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第10話 

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「う、浮気……? あの、お姉様が? ヒューゴ様を裏切るなんて……? そ、そんなこと……あり得ません! 信じられませんわ!」

思わず立ち上がって叫ぶ私を、ヒューゴ様は静かに手で制した。

「座ってくれ。俺も、信じたくない。今でも、何かの間違いだと思っている。だが……」

彼は疲れたように息を吐くと、重い口を開いた。

「ここ数週間、カミーユは行き先を告げずに外出することが増えた。問い詰めても、『友人と会うだけよ』と曖昧に笑うばかりで、俺の目をどこか避けるような素振りを見せる」

「それは……何か、他に理由があるのでは……」

「俺もそう思った。だが、メイドたちにそれとなく様子を聞いてみたんだ。すると、妙な証言がいくつか出てきた」

ヒューゴ様は、机の上に置かれた一枚のメモに目を落とした。

『奥様は最近、お子様たちの面倒も以前ほど熱心ではなく、ぼんやりと上の空でいらっしゃることが多いです』

『先日、見慣れない男性からのものと思われる手紙を受け取り、慌てて隠すようにドレスの懐にしまったのを見ました』

子供の世話を怠る。見慣れない男からの手紙。
その言葉が、私の頭の中で、あの日のフレッド様の姿とカチリと音を立てて繋がってしまった。

あの、カミーユ姉様を見る、熱に浮かされたような目。
そして、あまりにも簡単にフレッド様を許そうとした、姉様の不可解な態度。

まさか。
いや、でも。
あの完璧な姉様が? この誰よりも姉様を愛しているヒューゴ様を裏切ってまで?

疑惑が、今度は具体的な形を持って、私の心の中に黒々と広がっていく。

「俺はカミーユを信じたい。だが、夫として、このまま見過ごすわけにはいかない。彼女がもし、道を踏み外そうとしているのなら、その前に止めなければならない」

ヒューゴ様の苦しげな横顔に、私の胸も締め付けられるように痛んだ。
信じたい。私も、姉様を信じたい。でも、あの光景は、時間が経ってもなお、心に刺さったまま抜けない。



ヒューゴ様の告白を聞いて以来、私の日常から色は失われた。
姉様と顔を合わせるのが、辛い。無意識に、その行動を目で追ってしまっている自分が嫌でたまらない。

ある日、姉様と一緒に、甥っ子や姪っ子たちの遊び相手をしていた時のこと。子供たちは無邪気に姉様にじゃれつき、姉様もそれに笑顔で応えている。その笑顔は、どこからどう見ても、子供を愛する優しい母親の顔だった。

でも、ふとした瞬間に、その笑顔がすっと消え、遠くを見るような、寂しげな表情をすることがある。その視線の先に、一体誰を見ているのだろう。

「お姉様、最近何か悩み事でもあるの?」

耐えきれず、遠回しに尋ねてみたことがある。二人きりで庭を散歩している時だった。腕を組んで、昔のようにおしゃべりをして。楽しいはずなのに、私の心は少しも晴れない。

「え? ううん、なんでもないわよ」

姉様は、一瞬だけ驚いたように目を見開いて、それからすぐにいつもの笑顔に戻った。

「それより、あなたこそ大丈夫? 結婚式の準備で、疲れているんじゃない?」

巧みに話を逸らされてしまった。その完璧な笑顔が、分厚い仮面のように見えて、私はそれ以上何も言えなかった。
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