美人な姉を溺愛する彼へ、最大の罰を! 倍返しで婚約破棄して差し上げます

佐藤 美奈

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第11話

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夜、なかなか寝付けずにいると、階下の書斎にまだ明かりが灯っているのが見えた。ヒューゴ様も、眠れずにいるんだ。そう思うと、居ても立ってもいられなくなった。

私はこっそり厨房へ向かい、サンドイッチと温かいミルクを用意して、彼の書斎を訪ねた。

「……ヒューゴ様、夜食です」

「マリア嬢か。……君も、眠れないのか」

「はい。なんとなく」

私たちは、広い書斎で、言葉少なにサンドイッチを頬張った。奇妙な共犯関係。同じ痛みを抱え、同じ人物を想って眠れない夜を過ごす、仲間。

「証拠は、まだ……」

ぽつりと私が尋ねると、彼は静かに首を横に振った。

「ああ。人を雇って調べさせてはいるが、カミーユは上手くやっている。確たるものは、何も」

その横顔があまりに辛そうで、私は思わず聞いてしまっていた。

「ヒューゴ様は……どうして、姉様と結婚しようと思われたのですか?」

私の唐突な問いに、彼は少し驚いたように私を見た。そして、ふっと自嘲するように笑うと、遠い目をして語り始めた。

「……初めて会った舞踏会で、あいつは、他の着飾った令嬢たちとは全く違って見えた。誰に媚びるでもなく、ただ自分の意志で、そこに立っていた。光り輝いて見えたんだ。ただ真っ直ぐで、強くて、そして、恐ろしく美しい。……手に入れたいと、心の底から思った。それだけだ」

その声には、深い深い愛情が滲んでいた。こんなにも人を愛せるヒューゴ様。彼の愛の深さを知れば知るほど、姉様の裏切り疑惑が、現実味を帯びて私にのしかかってくる。

結婚式の準備だけが、私たちの心を置き去りにして、着々と進んでいく。
今日は、ウェディングドレスの仮縫いの日だった。
大きな姿見に映る自分に、白いシルクのドレスを静かに重ねる。レースがふんだんに使われた、夢のように美しいドレス。

「まあ、お美しい」

「マリア様に本当にお似合いですわ」

周囲の侍女たちが、ため息を漏らす。

でも、鏡に映る私の顔は、能面のように無表情だった。
少しも嬉しくない。
これから始まる幸せな未来を象徴するはずの純白のドレスが、まるで私を縛り付ける拘束具のように思えた。

このまま、何も知らないふりをして、あの偽善者のもとへ嫁ぐのか?
でも、今すべてを打ち明けて、この婚約を破棄すればどうなる? 確たる証拠もないのに、大神官と姉のスキャンダルをでっち上げたとなれば、アルンハイム家は破滅だ。そして、ヒューゴ様と姉様の関係も、きっと修復不可能なほどに壊れてしまう。

どうすればいいの?

鏡の中の、青ざめた花嫁姿の私が、答えの出ない問いを、私に投げかけ続けていた。
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