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第26話
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【ローラ視点】
「皆様、今宵はごきげんよう。……ああ、あの方の噂で持ちきりですのね」
私がわざとらしく言うと、貴婦人たちは少し驚いた顔で私を見た。
「まあ、ローラ様。ええ、セシリア様の素晴らしいご功績を、皆様で称えておりましたのよ」
「功績? ふふ、大げさですわ。ただのまぐれ当たりですのに」
「え……?」
貴婦人たちの顔に、困惑の色が浮かぶ。いい、もっと聞いて。私が真実を教えてあげる。
「皆様、騙されてはいけませんわ。あの方は、私の姉ですけれど、昔からそういうところがあったのです。偶然うまくいったことを、さも自分の実力のように見せかけるのが、とてもお上手で」
「そ、そうですの……?」
「ええ。それに、男の方をたぶらかすのも……穏やかそうに見えますでしょう? とんでもない! 裏では何を考えているか、わからないような女ですのよ。今だって、レオナール様に取り入って……。本当に、昔から何も変わらない。人のものを欲しがる、強欲な女なんですの!」
言えば言うほど、頭に血が上っていく。
そうだ、あいつは昔からそうだった。私のものを、いつも欲しがった。
私がエリオット様と婚約した時だって、きっと裏では泣いて喜んでいたに違いない。厄介払いができて、せいせいしたって。全部、全部、姉が悪いんだ。
私の厳しい剣幕に、貴婦人たちの表情は次第に変わり、最初の興味が不安に変わっていった。同情じゃない。侮蔑と憐れみ。そんな冷たい空気が、私を包み込み始めた。でも、もう止まれなかった。
【エリオット視点】
地獄とは、きっとこういう場所のことを言うのだろう。
眩い光に満ちた華やかな夜会。優美な音楽と、喜びに満ちた笑い声。
そのすべてが、今の俺には断罪のゴングのように聞こえた。
俺の視線の先には、セシリアがいた。
レオナール大典医にエスコートされ、少しはにかみながらも、凛として立つその姿は、俺が知っていた頃よりもずっと輝いて見えた。
彼女は、自分の力で、自分の価値を証明したんだ。
俺がいなくても、いや、俺という足枷がなくなったからこそ、彼女は本来いるべき場所へと羽ばたいていった。
それに比べて、俺の隣にいるのは誰だ?
「聞いてくださいまし! あの女は!」
甲高い声で、実の姉の悪口を触れ回る俺の妻。
その瞳は、嫉妬に染まったかのように曇り、化粧で飾られた顔は憎しみによって引きつっていた。周りの貴族たちが、最初は好奇の目で、やがて冷ややかな目で、そして今では侮蔑の眼差しで俺たちを見ているのが、痛いほどにわかった。
エリオット伯爵家は、今この瞬間、王都の笑いものになっている。
「やめろ、ローラ。見苦しい!」
俺は、抑えきれない苦しみに近い声で、その言葉を絞り出した。
だが、彼女はもう、自分の作り出した激情の嵐の中にいて、周りが何も見えていない。
「エリオット様は騙されているのですわ! あんな女のどこがいいのですか!」
「……っ!」
その言葉が、俺の心の最後の何かを、ぷつりと断ち切った。
俺が、騙されている?
違う!
騙されていたのは、他でもない俺自身だ。
彼女の若さや愛らしさという、上辺だけの魅力に溺れた。
俺は、宝石だと思って、ガラス玉を拾い上げたのだ。そして、本物のダイヤモンドを自らの手で捨てた。その事実に、今更ながら気づかされる。
俺は、胸の内で泣きたくなるほど、情けない男だと思い知らされる。
皆の視線が、壇上へと集まる。
そこには、王太子エリアス殿下が立っていた。
そして、その隣へと招かれたのは――セシリアだった。
「皆様、今宵はごきげんよう。……ああ、あの方の噂で持ちきりですのね」
私がわざとらしく言うと、貴婦人たちは少し驚いた顔で私を見た。
「まあ、ローラ様。ええ、セシリア様の素晴らしいご功績を、皆様で称えておりましたのよ」
「功績? ふふ、大げさですわ。ただのまぐれ当たりですのに」
「え……?」
貴婦人たちの顔に、困惑の色が浮かぶ。いい、もっと聞いて。私が真実を教えてあげる。
「皆様、騙されてはいけませんわ。あの方は、私の姉ですけれど、昔からそういうところがあったのです。偶然うまくいったことを、さも自分の実力のように見せかけるのが、とてもお上手で」
「そ、そうですの……?」
「ええ。それに、男の方をたぶらかすのも……穏やかそうに見えますでしょう? とんでもない! 裏では何を考えているか、わからないような女ですのよ。今だって、レオナール様に取り入って……。本当に、昔から何も変わらない。人のものを欲しがる、強欲な女なんですの!」
言えば言うほど、頭に血が上っていく。
そうだ、あいつは昔からそうだった。私のものを、いつも欲しがった。
私がエリオット様と婚約した時だって、きっと裏では泣いて喜んでいたに違いない。厄介払いができて、せいせいしたって。全部、全部、姉が悪いんだ。
私の厳しい剣幕に、貴婦人たちの表情は次第に変わり、最初の興味が不安に変わっていった。同情じゃない。侮蔑と憐れみ。そんな冷たい空気が、私を包み込み始めた。でも、もう止まれなかった。
【エリオット視点】
地獄とは、きっとこういう場所のことを言うのだろう。
眩い光に満ちた華やかな夜会。優美な音楽と、喜びに満ちた笑い声。
そのすべてが、今の俺には断罪のゴングのように聞こえた。
俺の視線の先には、セシリアがいた。
レオナール大典医にエスコートされ、少しはにかみながらも、凛として立つその姿は、俺が知っていた頃よりもずっと輝いて見えた。
彼女は、自分の力で、自分の価値を証明したんだ。
俺がいなくても、いや、俺という足枷がなくなったからこそ、彼女は本来いるべき場所へと羽ばたいていった。
それに比べて、俺の隣にいるのは誰だ?
「聞いてくださいまし! あの女は!」
甲高い声で、実の姉の悪口を触れ回る俺の妻。
その瞳は、嫉妬に染まったかのように曇り、化粧で飾られた顔は憎しみによって引きつっていた。周りの貴族たちが、最初は好奇の目で、やがて冷ややかな目で、そして今では侮蔑の眼差しで俺たちを見ているのが、痛いほどにわかった。
エリオット伯爵家は、今この瞬間、王都の笑いものになっている。
「やめろ、ローラ。見苦しい!」
俺は、抑えきれない苦しみに近い声で、その言葉を絞り出した。
だが、彼女はもう、自分の作り出した激情の嵐の中にいて、周りが何も見えていない。
「エリオット様は騙されているのですわ! あんな女のどこがいいのですか!」
「……っ!」
その言葉が、俺の心の最後の何かを、ぷつりと断ち切った。
俺が、騙されている?
違う!
騙されていたのは、他でもない俺自身だ。
彼女の若さや愛らしさという、上辺だけの魅力に溺れた。
俺は、宝石だと思って、ガラス玉を拾い上げたのだ。そして、本物のダイヤモンドを自らの手で捨てた。その事実に、今更ながら気づかされる。
俺は、胸の内で泣きたくなるほど、情けない男だと思い知らされる。
皆の視線が、壇上へと集まる。
そこには、王太子エリアス殿下が立っていた。
そして、その隣へと招かれたのは――セシリアだった。
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