地方の田舎に住む女性、妹に幼馴染の彼をとられたけど、生徒に溺愛される医療魔法師

佐藤 美奈

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第25話

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【ローラ視点】

王城のボールルームへと続く、深紅の敷物が伸びる大階段を、ゆっくりと上っていく。その一歩一歩を、私は女王にでもなったかのような気分で踏みしめていた。

「どう、エリオット様? 今日の私は、誰よりも美しいでしょう?」

隣を歩く旦那様に、私は自信たっぷりに微笑みかけた。
今日の私のためのドレスは、流行の最先端をいくデザイン。夜空の星屑をすべて集めて縫い付けたみたいに、無数の宝石がきらめく、贅沢で特別な品だ。

髪にはダイヤモンドのティアラ。首にも、腕にも、指にも。私という存在を飾り立てるための輝きを、これでもかと身に纏っている。この日のために、エリオット様にどれだけねだって用意させたことか。彼は少し渋い顔をしていたけれど、結局は私の望みを叶えてくれた。なんだかんだ言っても、彼は私に甘いのだ。

「ああ、綺麗だよ、ローラ。だが、少し……派手すぎやしないか?」

「まあ、失礼ね! 今夜の主役は、エリアス王子ですけれど、社交界の華は私ですもの。これくらいでなくっちゃ」

本当の主役が誰かなんて、百も承知だ。
今夜は、王太子殿下の快復を祝うための夜会。そして、その王子を救ったとされる女――私の姉、セシリアが王家から公式に賞賛される場でもある。
だからこそ、負けられない。見た目だけでも、存在感だけでも、あいつを上回ってやらなければ、私の気は済まない。

会場に足を踏み入れると、眩いばかりのシャンデリアの光と、人々の熱気に包まれた。誰も彼もが、着飾った貴族たち。その視線が、一瞬だけ私とエリオット様に注がれる。

「まあ、エリオット伯爵夫妻よ」
「奥様のドレス、すごいわね……」

ひそひそと交わされる会話が心地いい。そう、もっと私を見て。もっと感嘆なさい。
私は得意げに胸を張り、シャンパンのグラスを受け取った。

でも、そんな優越感は、長くは続かなかった。
会場が、ひときわ大きくどよめいたのだ。
人々の視線が、一斉に入り口へと注がれる。
私も、つられるようにそちらを見た。そして――息を呑んだ。

そこに立っていたのは、セシリアだった。
私の知っている、田舎くさくて、いつも地味な服を着ていた姉じゃない。
月の光をそのまま編み上げたかのような、シンプルだけど極上のシルクのドレス。派手な装飾など何一つないのに、彼女自身の存在が、どんな宝石よりも輝いて見えた。
そして、その隣には――医療魔法師団が誇る至宝、大典医レオナール様が、完璧な笑みを浮かべて彼女をエスコートしていた。

「セシリア先生……」
「なんてお美しい……まさに女神様だ」
「レオナール様と、お似合いですわね」

賞賛の声、声、声。
そのすべてが、私ではなく、姉に向けられている。
なんで? どうして!
あんな地味なドレスのどこがいいのよ。私の方が、よっぽどお金をかけて、よっぽど綺麗なのに。ぐらり、と世界が揺らぐような感覚。手の中のシャンパングラスが、カタカタと震えた。

「ローラ、落ち着け」

隣で、エリオット様が低い声で言った。
視線を向ければ、彼もまた言葉を失ったようにセシリアを見つめていた。その瞳に映っていたのは、驚きと後悔、そして私が一番見たくなかった焦がれるような熱を帯びた色だった。

「許さない」

私の幸せを、私の場所を、これ以上あんたなんかに脅されてたまるものか。
私は、周りにいた貴婦人たちの輪に、無理やり割り込むようにして入っていった。
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