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第24話
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【エリオット視点】
では、なぜ俺はローラを選んだのか?
若さ、だろうか。
セシリアの完璧さが、時々、息苦しく感じられた。
そんな時に現れたのが、ローラだった。
未完成で、危うくて、そして必死に俺に手を伸ばしてくる妹。
その危うさが、俺には魅力的に見えた。守ってやりたいと、そう思ってしまったのだ。なんと愚かだったことか。
コンコン、と書斎のドアがノックされる。
「旦那様、執事のマーカスでございます」
「……入れ」
入ってきた老執事は、一枚の招待状を銀の盆に乗せて差し出した。
「王家主催の夜会への招待状が届いております。来週の、金曜日。なんでも、王太子殿下のご快復を祝う、内々の祝宴だそうで」
「……そうか」
「本来であれば、喜ばしい席なのですが……」
マーカスが言いにくい、という顔で口ごもる。
言いたいことはわかっている。
「その祝宴の主役は、エリアス王子を救った……セシリア、だろう?」
「……はい。王都では、その話題で持ちきりでございます」
行かなければ、ならない。
伯爵として、王家からの招待を断るわけにはいかない。
そして、ローラも必ず行きたがるだろう。どんなに着飾ってでも、セシリアに負けたくないと意地を張るに違いない。
その夜会で、俺はセシリアと顔を合わせることになる。
ローラを連れて。彼女の妹であり、俺の妻であるローラを。
想像するだけで、胃が重くなる。
セシリアは、俺をどう思うだろうか?
軽蔑するだろうか。それとも、哀れむだろうか。
いや、あの人だ。きっと、昔と何も変わらない穏やかな笑みを向けてくるに違いない。それが、一番堪える。
グラスに残っていたブランデーを、一気に飲み干した
喉が、焼けるように熱い。
俺は一体、どこで間違えたのだろう。
ローラを選んだことか?
いや、ローラを選んだ俺自身が、彼女をここまで追い詰めてしまったのではないか。
彼女の弱さから目を逸らし、ただ愛らしい人形としてしか見ていなかった……俺のせいではないのか。
寝室に戻ると、ローラがすうすうと安らかな寝息を立てていた。
涙の跡が残る頬。無防備に開かれた唇。
その寝顔は、出会った頃と何も変わらない無邪気な少女のようだった。
俺は彼女の隣にそっと腰を下ろし、乱れた髪を優しく撫でる。
すると彼女は、ん、と甘えるような声を漏らして、俺の手に頬をすり寄せた。
「……エリオット、さま……」
寝言で、俺の名前を呼ぶ。
その声に、胸が締め付けられた。
そうだ。俺が守ると決めたんだ。
このどうしようもなく不器用で、脆くて、そして俺を愛してくれる妻を。
たとえ、それが茨の道だとしても。
俺は、もう一度ローラと向き合わなければならない。
彼女の姉の影に怯えるのではなく、二人で、前を向いて。
「大丈夫だ、ローラ」
俺は眠る彼女に、そして自分自身に言い聞かせるように、そう呟いた。
その声が、やけに虚しく書斎の闇に響いたことには、気づかないふりをした。
では、なぜ俺はローラを選んだのか?
若さ、だろうか。
セシリアの完璧さが、時々、息苦しく感じられた。
そんな時に現れたのが、ローラだった。
未完成で、危うくて、そして必死に俺に手を伸ばしてくる妹。
その危うさが、俺には魅力的に見えた。守ってやりたいと、そう思ってしまったのだ。なんと愚かだったことか。
コンコン、と書斎のドアがノックされる。
「旦那様、執事のマーカスでございます」
「……入れ」
入ってきた老執事は、一枚の招待状を銀の盆に乗せて差し出した。
「王家主催の夜会への招待状が届いております。来週の、金曜日。なんでも、王太子殿下のご快復を祝う、内々の祝宴だそうで」
「……そうか」
「本来であれば、喜ばしい席なのですが……」
マーカスが言いにくい、という顔で口ごもる。
言いたいことはわかっている。
「その祝宴の主役は、エリアス王子を救った……セシリア、だろう?」
「……はい。王都では、その話題で持ちきりでございます」
行かなければ、ならない。
伯爵として、王家からの招待を断るわけにはいかない。
そして、ローラも必ず行きたがるだろう。どんなに着飾ってでも、セシリアに負けたくないと意地を張るに違いない。
その夜会で、俺はセシリアと顔を合わせることになる。
ローラを連れて。彼女の妹であり、俺の妻であるローラを。
想像するだけで、胃が重くなる。
セシリアは、俺をどう思うだろうか?
軽蔑するだろうか。それとも、哀れむだろうか。
いや、あの人だ。きっと、昔と何も変わらない穏やかな笑みを向けてくるに違いない。それが、一番堪える。
グラスに残っていたブランデーを、一気に飲み干した
喉が、焼けるように熱い。
俺は一体、どこで間違えたのだろう。
ローラを選んだことか?
いや、ローラを選んだ俺自身が、彼女をここまで追い詰めてしまったのではないか。
彼女の弱さから目を逸らし、ただ愛らしい人形としてしか見ていなかった……俺のせいではないのか。
寝室に戻ると、ローラがすうすうと安らかな寝息を立てていた。
涙の跡が残る頬。無防備に開かれた唇。
その寝顔は、出会った頃と何も変わらない無邪気な少女のようだった。
俺は彼女の隣にそっと腰を下ろし、乱れた髪を優しく撫でる。
すると彼女は、ん、と甘えるような声を漏らして、俺の手に頬をすり寄せた。
「……エリオット、さま……」
寝言で、俺の名前を呼ぶ。
その声に、胸が締め付けられた。
そうだ。俺が守ると決めたんだ。
このどうしようもなく不器用で、脆くて、そして俺を愛してくれる妻を。
たとえ、それが茨の道だとしても。
俺は、もう一度ローラと向き合わなければならない。
彼女の姉の影に怯えるのではなく、二人で、前を向いて。
「大丈夫だ、ローラ」
俺は眠る彼女に、そして自分自身に言い聞かせるように、そう呟いた。
その声が、やけに虚しく書斎の闇に響いたことには、気づかないふりをした。
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