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第27話
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「国民の皆様、そして来賓の皆様。今宵は、私の快復を祝う席に、ようこそおいでくださいました」
エリアス殿下の、よく通る声が響き渡る。
「私が原因不明の病に倒れ、生死の境をさまよっていたことは、皆様もご存知のことと思う。国中から最高の医療魔法師を集めても、私の命の灯火は消えかかっていた。私は、絶望の淵に立たされていた」
会場が、しんと静まり返る。
「その絶望から、私を救い出してくれた者がいる。彼女こそ、医療魔法師団の新たな指南役、セシリア嬢である!」
エリアス殿下がセシリア嬢の手を取り、高々と掲げた。
その瞬間、割れんばかりの拍手と喝采が、ホール全体を揺るがした。
セシリアは、深々と頭を下げる。その姿は、どこまでも謙虚で、美しかった。
「セシリア嬢。あなたには、なんと礼を言えばいいかわからない。あなたは、王家にとって、いや、この国にとっての宝だ。本当に、ありがとう」
王太子直々の、最大級の賛辞。
セシリアの名声は、今、この瞬間、揺るぎないものになった。
人々は彼女を『光の祝福者』と呼び、その功績を称えた。
エリオットは、その光景を、ただ立ち尽くして見ていることしかできなかった。
「あれが、俺が隣を歩くはずだった女」
「……嘘よ」
隣から、か細い、信じられないという声が聞こえた。ローラだ。
彼女は、わなわなと震えながら、壇上のセシリアを睨みつけていた。
喝采が少しずつ鳴り止み、再び静寂が訪れようとした。その時だった。
「嘘よ! あんなの、全部嘘っぱちよ!」
ローラの金切り声が、静まりかけた会場に響き渡った。
しまった! と思ったが、もう遅い。
すべての視線が、一斉にエリオットとローラに突き刺さる。冷徹な視線に鋭さを加え、非難の意が滲み出ていた。
「あんな女に、王子様の病気が治せるはずないわ! きっと、王家に取り入るために、何か汚い手を使ったのよ! あいつはそういう女なの! 昔から、人のものを盗んでばかりの、泥棒猫なのよ!」
もう、誰もローラに同情しない。
王太子殿下が高く評価した人物を、公然と根拠もなく批判する。
それは、王家への侮辱と同義だ。
貴婦人たちは扇で口元を隠し、くすくすと笑い声を漏らす。男性貴族たちは、呆れたように首を振っている。
「ローラ! もうやめるんだ!」
エリオットは彼女の腕を掴み、無理やり黙らせようとした。
だが、ローラはそれを振り払い、さらに叫んだ。
「離して、エリオット様! あなたも騙されてるのよ! 私の方が、あの女より、私の方がずっと……」
「エリオット伯爵。奥方のご気分が優れないようだ。そろそろ、お引き取り願おうか」
冷たい声が、頭上から降ってきた。
見ると、近衛騎士団の団長が、氷のような目つきでエリオットを見下ろしている。
それは、命令だった。
これ以上、この場を汚すなという、無言の圧力。
エリオットは、もはや抵抗する気力も失せ、ローラの体を無理やり抱えるようにして、その場から逃げ出した。人々の冷徹な笑い声と哀れみの目を背中に受けながら歩く。大階段を転がるように降りていく途中、一度だけ、振り返ってしまった。
壇上に立つセシリアは、微かに困った表情を浮かべ、少し悲しそうな目で見ていた。
その隣で、レオナール大典医が、汚物でも見るかのような冷え切った目で、エリオットとローラに短く視線を投げかけた。
そして、彼はセシリアの肩を優しく抱き寄せると、彼女に何かを囁いた。セシリアはこくりと頷き、もうこちらを見ることはなかった。
「ああ、終わった……俺の人生も、伯爵家の名誉も、すべて」
エリオットは、ローラの細い体が必死に暴れる度に、その重みが自分の選んだ現実を象徴しているように感じていた。
エリアス殿下の、よく通る声が響き渡る。
「私が原因不明の病に倒れ、生死の境をさまよっていたことは、皆様もご存知のことと思う。国中から最高の医療魔法師を集めても、私の命の灯火は消えかかっていた。私は、絶望の淵に立たされていた」
会場が、しんと静まり返る。
「その絶望から、私を救い出してくれた者がいる。彼女こそ、医療魔法師団の新たな指南役、セシリア嬢である!」
エリアス殿下がセシリア嬢の手を取り、高々と掲げた。
その瞬間、割れんばかりの拍手と喝采が、ホール全体を揺るがした。
セシリアは、深々と頭を下げる。その姿は、どこまでも謙虚で、美しかった。
「セシリア嬢。あなたには、なんと礼を言えばいいかわからない。あなたは、王家にとって、いや、この国にとっての宝だ。本当に、ありがとう」
王太子直々の、最大級の賛辞。
セシリアの名声は、今、この瞬間、揺るぎないものになった。
人々は彼女を『光の祝福者』と呼び、その功績を称えた。
エリオットは、その光景を、ただ立ち尽くして見ていることしかできなかった。
「あれが、俺が隣を歩くはずだった女」
「……嘘よ」
隣から、か細い、信じられないという声が聞こえた。ローラだ。
彼女は、わなわなと震えながら、壇上のセシリアを睨みつけていた。
喝采が少しずつ鳴り止み、再び静寂が訪れようとした。その時だった。
「嘘よ! あんなの、全部嘘っぱちよ!」
ローラの金切り声が、静まりかけた会場に響き渡った。
しまった! と思ったが、もう遅い。
すべての視線が、一斉にエリオットとローラに突き刺さる。冷徹な視線に鋭さを加え、非難の意が滲み出ていた。
「あんな女に、王子様の病気が治せるはずないわ! きっと、王家に取り入るために、何か汚い手を使ったのよ! あいつはそういう女なの! 昔から、人のものを盗んでばかりの、泥棒猫なのよ!」
もう、誰もローラに同情しない。
王太子殿下が高く評価した人物を、公然と根拠もなく批判する。
それは、王家への侮辱と同義だ。
貴婦人たちは扇で口元を隠し、くすくすと笑い声を漏らす。男性貴族たちは、呆れたように首を振っている。
「ローラ! もうやめるんだ!」
エリオットは彼女の腕を掴み、無理やり黙らせようとした。
だが、ローラはそれを振り払い、さらに叫んだ。
「離して、エリオット様! あなたも騙されてるのよ! 私の方が、あの女より、私の方がずっと……」
「エリオット伯爵。奥方のご気分が優れないようだ。そろそろ、お引き取り願おうか」
冷たい声が、頭上から降ってきた。
見ると、近衛騎士団の団長が、氷のような目つきでエリオットを見下ろしている。
それは、命令だった。
これ以上、この場を汚すなという、無言の圧力。
エリオットは、もはや抵抗する気力も失せ、ローラの体を無理やり抱えるようにして、その場から逃げ出した。人々の冷徹な笑い声と哀れみの目を背中に受けながら歩く。大階段を転がるように降りていく途中、一度だけ、振り返ってしまった。
壇上に立つセシリアは、微かに困った表情を浮かべ、少し悲しそうな目で見ていた。
その隣で、レオナール大典医が、汚物でも見るかのような冷え切った目で、エリオットとローラに短く視線を投げかけた。
そして、彼はセシリアの肩を優しく抱き寄せると、彼女に何かを囁いた。セシリアはこくりと頷き、もうこちらを見ることはなかった。
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