地方の田舎に住む女性、妹に幼馴染の彼をとられたけど、生徒に溺愛される医療魔法師

佐藤 美奈

文字の大きさ
29 / 29

第29話

しおりを挟む
誰もが、この劇的なプロポーズの結末を、固唾を飲んで見守っている。
私は、どうすればいいんだろう。
ロデリックの、悲しそうな顔が浮かぶ。アレリオやオルフェウスのことも大好きだ。

でも――私の心は、もう決まっていたのかもしれない。
この王都に来てから、常に私を導き、守り、そして私の力を揺るぎなく信じてくれた。この人の隣が、私の居場所なのだと。

涙が頬をひと筋に流れ、静かに頬を滑り落ちた。
その涙は、決して悲しみのものではなかった。
その涙は、温かな喜びと幸せに包まれ、心を満たしていった。

私は、ゆっくりと、一度だけ頷いた。

「……はい」

その小さな返事を聞いた瞬間、レオナールの顔が、ぱあっと喜びで輝いた。
彼がこんな表情をするのを、私は初めて見た。
そして、次の瞬間。
嵐のような拍手と、祝福の歓声が、私たちを包み込んだ。

レオナールは立ち上がると、優しく指輪を私の左手の薬指にはめてくれた。
ひんやりとした感触が、夢じゃないのだと教えてくれる。
彼は、そのまま私を強く抱きしめた。

「ありがとう、セシリア。必ず、君を世界一幸せにすると誓う」

耳元で囁かれたその声に、私はもう一度、強く頷くことしかできなかった。

遠くで、ロデリックが俯いて、肩を震わせているのが見えた。アレリオが、悔しそうに壁を殴り、オルフェウスが静かに涙を流しているのも。
ごめんなさい。
でも、私は選んだんだ。
私の未来を。私の幸せを。

バルコニーに出て、ひんやりとした夜風に当たると、ようやく火照った頬が少しだけ落ち着いた。隣には、いつの間にかレオナールが立っている。

「驚かせてすまない。だが、これが一番効果的だと思ったんだ。セシリアという才能を、ただ利用しようとする輩や、嫉妬する者たちから守るための、最善手だ。私が婚約者となれば、誰も迂闊には手を出せなくなる」

やっぱり、この人は策士だ。
私は、くすりと笑ってしまった。

「……少しは、本心も含まれていたのですか? 今の言葉に」
「少し、とは心外だな」

彼はそう言って、私の肩を優しく抱き寄せた。

「九割九分は本心だ。残りの一分は、君を永遠に私のものにするための、計算だよ」
「もう……」

彼の胸に顔をうずめると、安心する香りがした。
ああ、私の居場所は、本当にここなんだ。
田舎で、妹に婚約者を奪われ、もう恋なんてすることはないと思っていた。
でも、人生は何が起こるかわからない。
一番欲しかったものは、一番望んでいなかった場所に、用意されていたりするのだ。

眼下の庭園を、小さな人影が二つ、よろめくように去っていくのが見えた。
ローラと、エリオットだ。
もう、あの二人が私の心を乱すことはないだろう。
彼らは彼らの物語を、私は私の物語を。
ただ、生きていくだけ。

「愛しているよ、セシリア」

空に浮かぶ月だけが、私たち二人の未来を、静かに照らしていた。

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
この物語を、皆さまと共有できたことが何よりの幸せです。
またどこかの物語でお会いできますように。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたのでサブスク聖女始めました ―平民がダメ?なら侯爵令嬢にしますが、だから何?―

ふわふわ
恋愛
「真実の愛を見つけた」 そう告げられて、王太子との婚約をあっさり破棄された聖女シャマル。 泣かない。 責めない。 執着もしない。 だって正直、 好きでもない相手との政略結婚も、 毎日王宮に通って無償奉仕する生活も、 もう十分だったから。 「必要なときだけ呼んで。報酬は時給でいいよ」 そうして始めたのは、 前代未聞の サブスク式・聖女制度。 奇跡を振りまくのではなく、 判断基準を明確にし、 数字と仕組みで回す“無理をしない聖女業”。 ところがそれが、なぜか国にとって一番うまくいく。 しかし、 「平民の娘では納得できない」 「聖女は神聖であるべきだ」 そんな声が、王と貴族たちから上がり始め―― 「じゃあ、侯爵令嬢にしましょう」 肩書だけを差し替える、 中身は何ひとつ変えない痛快対応で、 価値観そのものを静かに詰ませていく。 これは、 怒鳴らない、争わない、感情に走らない。 それでも確実に“立場逆転”していく 理屈派・ドライ聖女の静かなザマァ物語。 働きすぎないこと。 全員に好かれようとしないこと。 納得しない自由も、ちゃんと認めること。 そんな聖女が作ったのは、 奇跡ではなく―― 無理をしなくても生きられる仕組みだった。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

小石だと思っていた妻が、実は宝石だった。〜ある伯爵夫の自滅

みこと。
恋愛
アーノルド・ロッキムは裕福な伯爵家の当主だ。我が世の春を楽しみ、憂いなく遊び暮らしていたところ、引退中の親から子爵家の娘を嫁にと勧められる。 美人だと伝え聞く子爵の娘を娶ってみれば、田舎臭い冴えない女。 アーノルドは妻を離れに押し込み、顧みることなく、大切な約束も無視してしまった。 この縁談に秘められた、真の意味にも気づかずに──。 ※全7話で完結。「小説家になろう」様でも掲載しています。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

婚約破棄して「無能」と捨てた元婚約者様へ。私が隣国の魔導予算を握っていますが、今さら戻ってこいなんて冗談ですよね?』

鷹 綾
恋愛
王太子アラルガンから「無能」「可愛げがない」と切り捨てられ、 夜会の場で一方的に婚約破棄された公爵令嬢エルフレイド。 だが彼女は、誰にも知られていなかっただけで―― 王国の魔導具開発、結界維持、そして莫大な魔導予算を 一人で回していた超実務型の才女だった。 追放同然で国を去ったエルフレイドを迎え入れたのは、 隣国の「氷の魔導皇帝」ゼノス。 彼は彼女の数字感覚と設計思想を即座に見抜き、 国家予算そのものを託す。 一方、エルフレイドを失った元王国は、 魔導障壁の不具合、予算破綻、偽聖女の無能露呈により 静かに、しかし確実に崩壊していく。 ――そして物語の後半、 焦点は「ざまぁ」から、さらに先へ。 裁かれない元王太子。 英雄を作らない制度。 責任を個人に押し付けない現場。 引き金を引かないという選択。 これは、 「誰かが偉かった」物語ではない。 「誰かを断罪する」物語でもない。 有能な人間が消えたあとも、世界が回り続けるようにする物語。 名前が消え、功績が語られず、 それでも街が守られ続ける―― そんな“完成した世界”に至るまでを描いた、 静かで痛快な大人向け婚約破棄ファンタジー。

処理中です...