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300話 「ダンジョンと温泉と4」
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宿を出て少し歩くと脱衣所はすぐそこであった。
男湯と女湯が綺麗に二つに分かれているので、合わせて脱衣所も二つのみ設置されている。
「脱衣所は共通なんだな……つってもあほみたく広いが」
「真ん中付近の宿だと近くて楽ですねえ」
男と女で別れ、それぞれ脱衣所へと向かう。
彼らよりも先にきた者達が利用していたが、脱衣所は温泉の規模と同じくかなり広かった。数十人単位が居てもまるで問題は無い。
「……おう、こりゃまたすごいな」
「端っこの方とか全然見えないっすよ!」
脱衣所を出るとそこは湯煙で真っ白となった世界であった。
通路部分はそうでもないが、温泉の近くは湯気でほとんど視界が効かない。
「確か入ってすぐ左に……あれか」
冊子には入口からすぐのところにあるであろう、温泉が描かれていた。
実際にそちらへと視線を向けると50m四方はありそうな温泉が目の前に広がっていた。
「一番狭いはずなんだが、相当広いな」
先客が入っていたが温泉が広いため気にはならない。
お湯で軽く体を流すと彼らは温泉へとつかるのであった。一斉に。
当然、お湯が一気にあふれ出す。100kgを超える巨体が30人である、溢れたお湯は3トン近くになるだろう。
にゃー!(ぎゃー)
「加賀ー!?」
そして加賀は流された。
「あ゛ぁ゛~……」
「温泉たまらんな」
温泉につかり、おっさんくさい声を上げる一同。
そんな皆を前に加賀は死んだ目でどこか遠くを見つめていた。
「加賀、どした?」
にゃ(視界が暑苦しい)
その様子に気が付いた八木が声をかける。
加賀の答えに周りを見渡し、きゅっと眉を顰める八木。
「……うん、まあ、確かに」
前を向けば、腕を回し肩をゴキゴキとならす髭面のドワーフ。筋肉質なその腕は種族柄もあるのだろう、八木の脚並みの太さを誇っている。
そして左右には陽気に鼻歌を歌う筋肉質な男に、伸びをして唸っているこれまた筋肉質な男。歌に合わせて腹筋がぴくりと動き。伸ばした腕はビキbキと筋が盛り上がっている。
ならば背後はというと、少しのぼせたのだろう。湯から上がり腰掛けたガチムチが脚を組んでいた。
割と地獄絵図かもしれない。
「別に皆で同じ温泉に浸かる必要は無いかと……」
「そうですね……後は好きにばらけましょう。各自夕飯までには宿に戻るように」
なんでそうなったかと言うと全員で同じ温泉に浸かって、しかも何故か一か所に固まっていたからである。
普段の風呂と同じ感覚で入っていたのだろう、ばらけて入ろうというアルヴィンの提案を受け、一人また一人と温泉からあがり、次の温泉へと移っていく。
「加賀、行かんの?」
にゃ(のぼれん)
「えぇ……それ猫としてどうなのさ」
人にとっては問題ない高さも小さくなった加賀には越えられない障害となる。
足をなんとか縁にかけ這い上がろうとしているが、どうにも届きそうにない。
「……少し時間置いて行くか? 先に洗っちまおうぜ」
そんなやり取りをしていた二人の横からひょいと手を伸ばすヒューゴ。
加賀を持ち上げると床にそっと降ろす。
「あれ? ヒューゴさん行かなかったんすか?」
「……ん? 悪ぃ、尻尾見てて聞いてなかった」
「……猫好きなんすね」
てっきり他の者と一緒に移動したと思っていた八木がヒューゴへと声をかけるが、ヒューゴがじっと加賀を見たまま反応をしめさない。
少ししてやっと八木の視線に気が付いたようだが、話はまった聞いてなかったらしい。
「まあな……でも俺が近付くと皆逃げるんだよな……こんな近くで観察なんて何時もはまず出来ない」
猫好きと言われ一瞬照れくさそうな表情を浮かべたヒューゴであったが、ふっと悲しげな表情へと変わる。
彼が近づくと猫はみんな逃げてしまうらしい。それを聞いた加賀はすすっとヒューゴから距離をとり、口を開く。
にゃー(理由はなんとなく分かる)
「まじかっ、お、おおおしえてくれ!」
理由は分かるという加賀に思いっきりくいつくヒューゴ。
加賀は再びすすっと距離をとると言葉を続けた。
にゃー……(猫になって分かったけど、まず自分の倍はある巨体が迫ってくると怖い)
「あー、確かにそうだろな」
「ぐぅ……」
今の加賀の伸長は1m未満である。
それに対しヒューゴは2m近い、人の感覚でいえば3~4mはある巨人が迫ってくるようなものだ。
体格の差は明らかであるので八木もヒューゴもそれは納得するしかなかった。
にゃ(あと目が血走ってて怖い。手を伸ばされると捕まえられる恐怖がある。要するに怖い)
「ぐぬぬぬぬ……」
猫好きであるが為。ヒューゴの加賀を見る目は血走っててとても怖い。
その状態で手を伸ばされたらそれはもう逃げるしかないだろう。
……にゃ(目線低くするとか、猫が興味持って寄ってくるまであまり動かないようにすればいいんでないかな)
「……なるほど! 今度からそうしてみる。あんがとな加賀ちゃん」
にゃ(おー。とりあえず洗って次の温泉いこー)
へこんでいたヒューゴも加賀のアドバイスを聞いて復活したようだ。
3人は体を洗うと次の温泉へと向かって行く。
男湯と女湯が綺麗に二つに分かれているので、合わせて脱衣所も二つのみ設置されている。
「脱衣所は共通なんだな……つってもあほみたく広いが」
「真ん中付近の宿だと近くて楽ですねえ」
男と女で別れ、それぞれ脱衣所へと向かう。
彼らよりも先にきた者達が利用していたが、脱衣所は温泉の規模と同じくかなり広かった。数十人単位が居てもまるで問題は無い。
「……おう、こりゃまたすごいな」
「端っこの方とか全然見えないっすよ!」
脱衣所を出るとそこは湯煙で真っ白となった世界であった。
通路部分はそうでもないが、温泉の近くは湯気でほとんど視界が効かない。
「確か入ってすぐ左に……あれか」
冊子には入口からすぐのところにあるであろう、温泉が描かれていた。
実際にそちらへと視線を向けると50m四方はありそうな温泉が目の前に広がっていた。
「一番狭いはずなんだが、相当広いな」
先客が入っていたが温泉が広いため気にはならない。
お湯で軽く体を流すと彼らは温泉へとつかるのであった。一斉に。
当然、お湯が一気にあふれ出す。100kgを超える巨体が30人である、溢れたお湯は3トン近くになるだろう。
にゃー!(ぎゃー)
「加賀ー!?」
そして加賀は流された。
「あ゛ぁ゛~……」
「温泉たまらんな」
温泉につかり、おっさんくさい声を上げる一同。
そんな皆を前に加賀は死んだ目でどこか遠くを見つめていた。
「加賀、どした?」
にゃ(視界が暑苦しい)
その様子に気が付いた八木が声をかける。
加賀の答えに周りを見渡し、きゅっと眉を顰める八木。
「……うん、まあ、確かに」
前を向けば、腕を回し肩をゴキゴキとならす髭面のドワーフ。筋肉質なその腕は種族柄もあるのだろう、八木の脚並みの太さを誇っている。
そして左右には陽気に鼻歌を歌う筋肉質な男に、伸びをして唸っているこれまた筋肉質な男。歌に合わせて腹筋がぴくりと動き。伸ばした腕はビキbキと筋が盛り上がっている。
ならば背後はというと、少しのぼせたのだろう。湯から上がり腰掛けたガチムチが脚を組んでいた。
割と地獄絵図かもしれない。
「別に皆で同じ温泉に浸かる必要は無いかと……」
「そうですね……後は好きにばらけましょう。各自夕飯までには宿に戻るように」
なんでそうなったかと言うと全員で同じ温泉に浸かって、しかも何故か一か所に固まっていたからである。
普段の風呂と同じ感覚で入っていたのだろう、ばらけて入ろうというアルヴィンの提案を受け、一人また一人と温泉からあがり、次の温泉へと移っていく。
「加賀、行かんの?」
にゃ(のぼれん)
「えぇ……それ猫としてどうなのさ」
人にとっては問題ない高さも小さくなった加賀には越えられない障害となる。
足をなんとか縁にかけ這い上がろうとしているが、どうにも届きそうにない。
「……少し時間置いて行くか? 先に洗っちまおうぜ」
そんなやり取りをしていた二人の横からひょいと手を伸ばすヒューゴ。
加賀を持ち上げると床にそっと降ろす。
「あれ? ヒューゴさん行かなかったんすか?」
「……ん? 悪ぃ、尻尾見てて聞いてなかった」
「……猫好きなんすね」
てっきり他の者と一緒に移動したと思っていた八木がヒューゴへと声をかけるが、ヒューゴがじっと加賀を見たまま反応をしめさない。
少ししてやっと八木の視線に気が付いたようだが、話はまった聞いてなかったらしい。
「まあな……でも俺が近付くと皆逃げるんだよな……こんな近くで観察なんて何時もはまず出来ない」
猫好きと言われ一瞬照れくさそうな表情を浮かべたヒューゴであったが、ふっと悲しげな表情へと変わる。
彼が近づくと猫はみんな逃げてしまうらしい。それを聞いた加賀はすすっとヒューゴから距離をとり、口を開く。
にゃー(理由はなんとなく分かる)
「まじかっ、お、おおおしえてくれ!」
理由は分かるという加賀に思いっきりくいつくヒューゴ。
加賀は再びすすっと距離をとると言葉を続けた。
にゃー……(猫になって分かったけど、まず自分の倍はある巨体が迫ってくると怖い)
「あー、確かにそうだろな」
「ぐぅ……」
今の加賀の伸長は1m未満である。
それに対しヒューゴは2m近い、人の感覚でいえば3~4mはある巨人が迫ってくるようなものだ。
体格の差は明らかであるので八木もヒューゴもそれは納得するしかなかった。
にゃ(あと目が血走ってて怖い。手を伸ばされると捕まえられる恐怖がある。要するに怖い)
「ぐぬぬぬぬ……」
猫好きであるが為。ヒューゴの加賀を見る目は血走っててとても怖い。
その状態で手を伸ばされたらそれはもう逃げるしかないだろう。
……にゃ(目線低くするとか、猫が興味持って寄ってくるまであまり動かないようにすればいいんでないかな)
「……なるほど! 今度からそうしてみる。あんがとな加賀ちゃん」
にゃ(おー。とりあえず洗って次の温泉いこー)
へこんでいたヒューゴも加賀のアドバイスを聞いて復活したようだ。
3人は体を洗うと次の温泉へと向かって行く。
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