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301話 「ダンジョンと温泉と5」
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次の温泉へと向かった3人であったが、目の前にあるはずの温泉が見当たらず、辺りをキョロキョロと見渡していた。
「なんだここ? 石ころしかねえぞ」
ぽつんと地面に突き刺さった看板をバシバシと叩き、そう口にするヒューゴ。周りにあるのは大量の石ころと、何故か転がっているスコップ、それに看板が一つあるだけだ。
「ここはあれっす。石ころどかすと温泉出てくるんすよ」
やっぱりか、そんな感じの表情を浮かべてヒューゴへと温泉について説明をする八木。
「へえ……ああ、よく見りゃ看板に書いてあるじゃねえか」
看板をよく見ればスコップで地面を掘るように書いてあるのだが、最初に目に入るのはただ石ころが転がっているだけの地面である。周りでは先客が地面に穴を掘って温泉に入っていたりするのだろうが、ここはどうも他と比べて湯気が濃くあまり遠くまで見えない。それもあってヒューゴがそんな反応をするのは何となく予想できていたのだ。
「あそこのスコップで掘るのな。面白そうだけど……なんでまたわざわざこんなんにしたんだ?」
「面白そうだからっす……なんか最初からこの状態だったんすよ。石ころどかしても気が付いたら元に戻るし……んでせっかくだからこのままにしようって話になりまして……」
実際、野湯と呼ばれる自然の中に存在する温泉があったりする。
今彼らが入ろうとしている温泉はそれに近いものであろうか。
ヒューゴはスコップを手に取ると地面に突き刺し穴を掘り始めた。
「ほー……お、まじだお湯が出て来るぞこれ」
少し地面を掘っただけでお湯がわき出て水面が出来ていた。
気をよくしたヒューゴはどんどん掘り進めて行く。
にゃ(体冷えてきたー……)
「ここ結構肌寒いよな……加賀ちゃん、ここまだ小さいけど使いな」
地面で丸まる加賀を見て、途中まで掘り進めた温泉に入るよう声を掛けるヒューゴ。
外の気温と同じなのか、それともダンジョンの中が寒いだけなおかどちらなのかは分からないが、ダンジョン内は裸でいるには幾分気温が低いようだ。
「これ、掘るの結構きついぞ……」
「浅く広く掘って、寝ながら入るようにした方が楽っすよ」
「早く言ってくれよー……」
人ひとりがゆったり入れるだけの穴となると掘るのも中々に重労働である。
ヒューゴは額に浮かんだ汗を拭うと、今度は横に広く浅く穴を広げていった。
やがて大の字になって入れるだけの広さを確保したところでようやく温泉へと浸かると、深く息を吐く。
「あー…………あったまる」
寝転がって全身が何とか浸かる深さではあるが、温泉は温泉である。温かな湯に浸かって横になっているだけで気持ちよすぎて寝そうになる。
「やっぱ温泉いいなわ……次どっちはいるよ?」
にゃー(あと何あるんだっけ)
「白濁した温泉と、茶色っぽい温泉すね。あと一番でかいの」
揃って仰向けになったまま会話する3人。
次に入る温泉の話をするがお湯の温かさと外の寒さのせいで中々温泉から出ようとはしない。
「でかいのは最後かな……おし、次は白濁したのいってみよーぜ」
行ってみようとは言うが誰も動こうとしない。
「そうそう、男湯と女湯で温泉違ったりするんで、日替わりで入れ替わったりしまっせ」
「まじ? じゃあ明日はまた違うの入れるのか、すげえな」
誰かが何かしら話題を振り、それに対して会話が弾む。
そんな感じでいい加減のぼせそうになるまでダラダラと温泉に入り続ける3人であった。
「……? あれって売店か? 湯気で見えなかったけどそんなんあったのか」
その後二つの温泉に浸かった3人は、最後に一番大きな温泉へと向かっていた。
そして近付くにつれて遠くからは見えなかった、建物の存在に気が付く。
「眺めが良くて広くてゆったり出来るんで、酒でも飲みながら楽しんでくださいって奴っすね」
そこでは酒などの飲み物やつまみとなる食べ物を販売していた。
八木は眺めが良いと言うがヒューゴは首を傾げている。
「眺め? ……湯気であんま良くねーけど」
入ってからここに来るまで多少の濃さの違いはあれども、どこも湯気がたくさんあり、眺めが良いとは言えなかったのだ。
「それはまあお楽しみって事で」
だが眺めが良いと言えるだけの何かがあるのだろう。施設の設計に携わった八木はその事を知っている。
ヒューゴもその事は分かっているので一応納得した様子を見せ、そして売店へと視線を向ける。
「ほー……って、金ここまで持ってきてねえぞ? 取りに戻る面倒くせえな……」
「あ、無料っすよ。今だけですけど」
「おう、そいつあいいな。よっしゃ行くべ行くべ」
せっかくだから何か買おうと思ったヒューゴであったが、あいにく財布は部屋に中に置きっ放しであった。
幸いなことに今だけ無料ではある言うことで、それを聞いたヒューゴは嬉しそうに売店へと駆け寄って行った。
「……っと、危ね! 落とすとこだったぜ」
皿から料理が転げ落ちそうになり、慌てて手を添えるヒューゴ。
料理と飲み物を手に一番広い温泉へと向かった3人であったが、温泉に近付いた途端に視界を遮っていた湯気が一気に晴れ、視界が開けた。
にゃー(木が生えてる……)
「どうなっとんだこりゃ……」
開けた視界に移るのは端まで数百nはありそうな広大な温泉と、その温泉内にぽつぽつと生えている巨木の姿であった。
「なんだここ? 石ころしかねえぞ」
ぽつんと地面に突き刺さった看板をバシバシと叩き、そう口にするヒューゴ。周りにあるのは大量の石ころと、何故か転がっているスコップ、それに看板が一つあるだけだ。
「ここはあれっす。石ころどかすと温泉出てくるんすよ」
やっぱりか、そんな感じの表情を浮かべてヒューゴへと温泉について説明をする八木。
「へえ……ああ、よく見りゃ看板に書いてあるじゃねえか」
看板をよく見ればスコップで地面を掘るように書いてあるのだが、最初に目に入るのはただ石ころが転がっているだけの地面である。周りでは先客が地面に穴を掘って温泉に入っていたりするのだろうが、ここはどうも他と比べて湯気が濃くあまり遠くまで見えない。それもあってヒューゴがそんな反応をするのは何となく予想できていたのだ。
「あそこのスコップで掘るのな。面白そうだけど……なんでまたわざわざこんなんにしたんだ?」
「面白そうだからっす……なんか最初からこの状態だったんすよ。石ころどかしても気が付いたら元に戻るし……んでせっかくだからこのままにしようって話になりまして……」
実際、野湯と呼ばれる自然の中に存在する温泉があったりする。
今彼らが入ろうとしている温泉はそれに近いものであろうか。
ヒューゴはスコップを手に取ると地面に突き刺し穴を掘り始めた。
「ほー……お、まじだお湯が出て来るぞこれ」
少し地面を掘っただけでお湯がわき出て水面が出来ていた。
気をよくしたヒューゴはどんどん掘り進めて行く。
にゃ(体冷えてきたー……)
「ここ結構肌寒いよな……加賀ちゃん、ここまだ小さいけど使いな」
地面で丸まる加賀を見て、途中まで掘り進めた温泉に入るよう声を掛けるヒューゴ。
外の気温と同じなのか、それともダンジョンの中が寒いだけなおかどちらなのかは分からないが、ダンジョン内は裸でいるには幾分気温が低いようだ。
「これ、掘るの結構きついぞ……」
「浅く広く掘って、寝ながら入るようにした方が楽っすよ」
「早く言ってくれよー……」
人ひとりがゆったり入れるだけの穴となると掘るのも中々に重労働である。
ヒューゴは額に浮かんだ汗を拭うと、今度は横に広く浅く穴を広げていった。
やがて大の字になって入れるだけの広さを確保したところでようやく温泉へと浸かると、深く息を吐く。
「あー…………あったまる」
寝転がって全身が何とか浸かる深さではあるが、温泉は温泉である。温かな湯に浸かって横になっているだけで気持ちよすぎて寝そうになる。
「やっぱ温泉いいなわ……次どっちはいるよ?」
にゃー(あと何あるんだっけ)
「白濁した温泉と、茶色っぽい温泉すね。あと一番でかいの」
揃って仰向けになったまま会話する3人。
次に入る温泉の話をするがお湯の温かさと外の寒さのせいで中々温泉から出ようとはしない。
「でかいのは最後かな……おし、次は白濁したのいってみよーぜ」
行ってみようとは言うが誰も動こうとしない。
「そうそう、男湯と女湯で温泉違ったりするんで、日替わりで入れ替わったりしまっせ」
「まじ? じゃあ明日はまた違うの入れるのか、すげえな」
誰かが何かしら話題を振り、それに対して会話が弾む。
そんな感じでいい加減のぼせそうになるまでダラダラと温泉に入り続ける3人であった。
「……? あれって売店か? 湯気で見えなかったけどそんなんあったのか」
その後二つの温泉に浸かった3人は、最後に一番大きな温泉へと向かっていた。
そして近付くにつれて遠くからは見えなかった、建物の存在に気が付く。
「眺めが良くて広くてゆったり出来るんで、酒でも飲みながら楽しんでくださいって奴っすね」
そこでは酒などの飲み物やつまみとなる食べ物を販売していた。
八木は眺めが良いと言うがヒューゴは首を傾げている。
「眺め? ……湯気であんま良くねーけど」
入ってからここに来るまで多少の濃さの違いはあれども、どこも湯気がたくさんあり、眺めが良いとは言えなかったのだ。
「それはまあお楽しみって事で」
だが眺めが良いと言えるだけの何かがあるのだろう。施設の設計に携わった八木はその事を知っている。
ヒューゴもその事は分かっているので一応納得した様子を見せ、そして売店へと視線を向ける。
「ほー……って、金ここまで持ってきてねえぞ? 取りに戻る面倒くせえな……」
「あ、無料っすよ。今だけですけど」
「おう、そいつあいいな。よっしゃ行くべ行くべ」
せっかくだから何か買おうと思ったヒューゴであったが、あいにく財布は部屋に中に置きっ放しであった。
幸いなことに今だけ無料ではある言うことで、それを聞いたヒューゴは嬉しそうに売店へと駆け寄って行った。
「……っと、危ね! 落とすとこだったぜ」
皿から料理が転げ落ちそうになり、慌てて手を添えるヒューゴ。
料理と飲み物を手に一番広い温泉へと向かった3人であったが、温泉に近付いた途端に視界を遮っていた湯気が一気に晴れ、視界が開けた。
にゃー(木が生えてる……)
「どうなっとんだこりゃ……」
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