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三十九話 懺悔
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視界がぼやけた時、セルジュは確実に水の中に落ちたような感覚を味わっていた。だが次に気がついた時、普通に呼吸もできるし周りもよく見えることが分かって、セルジュは思わず目を瞬いていた。
(ここはどういう所なんだ?)
聖樹の花の中は確かに赤い水のようなもので満たされていたが、自分たちが丸いシャボン玉のような膜の中に入っていることにセルジュは気がついた。青い光を放つその膜は、よく見るとセルジュの指輪が作り出しているものであった。
(これはもしかして、防御の加護なのか? 緑の光は攻撃の加護だったのかも)
四人と一緒に紛れて落ちてきた葉っぱが数枚、青い膜の外で赤い水に浮かんでいる。しかしよく見ると、縁から侵食されるように徐々に溶けて小さくなっているのが分かった。
(げっ!)
じゅわっと溶けて無くなってしまった葉っぱを見て、セルジュの背筋に寒気が走った。
(これ、消化液じゃないか? 聖樹の花って食虫植物……いや、食人植物だったのか? ロベール伯爵の指輪がなかったら、俺たちもあの葉っぱと同じ姿に……?)
「セルジュ!」
クロードの声がして振り返ろうとした瞬間、後ろから硬い腕にギュッと抱きしめられた。
「大丈夫か?」
「お前こそ大丈夫かよ? 掌すごいことになってんぞ」
「俺は平気だ」
クロードはきっと手首を切り落とされでもしない限り、大丈夫だと主張し続けるんだろう。エミールもいつのまにか泣き止んで、セルジュの腕の中に満足げに収まっていた。
「そうだ、フランソワは?」
セルジュの問いに、クロードはセルジュの背後を指差した。
「あそこだ」
フランソワはセルジュたちから少し離れた場所で、頭を抱えてうずくまっていた。何か大声で叫んでいるようだったが、青い膜が細胞壁のようにセルジュたちのいる部屋とフランソワのいる部屋を隔てていたため、何を言っているのかさっぱり分からなかった。
「お前の指輪の力に触れると、魔法生物の怒りを買った人間はどうも狂ってしまうようだ」
セルジュは黙ってうずくまっているフランソワを見つめた。
「……フランソワはどうしてこんな事を?」
その時、青い膜の壁に突然映写機で映したかのようにぱっと鮮やかな映像が浮かび上がった。長い金髪の美しい少年が二人、机に向かって何やら試験を受けているようだ。片方の少年は真面目に取り組んでいたが、もう一人の少年の方は上の空で、時折相方の用紙をチラッと盗み見していた。
『フランソワ!』
真面目に取り組んでいる方の少年が、カンニングされていることに気がついて厳しい声で咎めた。
『それじゃ意味ないだろ!』
『だって分かんないんだもん、兄さん』
『父さんが百回読めって言った所を読まなかったのか? お前の方が俺より賢いんだから、ちゃんと読んでいればできるはずだろ?』
『だって面倒だし』
『そんなことでは聖職者の厳しい修行に耐えられないぞ。お前も父さんみたいな立派な聖職者になりたいんだろう? 聖職者になれなかったら、騎士になって王家に仕えることになるが、お前はそれでいいのか?』
『でも兄さん、まだ修行も何もしてないけど、僕は魔法生物を見分けられるよ』
『それはただ聖職者の家系の人間が生まれながらに持つ才能だ。聖職者ってのは奇跡のような技をたくさん使えなくてはならない。北のステヴナン伯爵夫人が使うような治癒の力とかな』
そこで水が流れるように映像が横に流れ、場面は切り替わって十五歳くらいに成長したフランソワが映し出された。周りを気にするような素振りを見せながら、薄暗い倉庫のような場所で古めかしい本のページをめくっている。周りの本の背表紙の禍々しい雰囲気から、そこが禁書庫であることが伺えた。
『あった!』
フランソワは探していた情報に辿り着いたようで、羅列してある文字に興奮気味に指を走らせている。
『禁忌の術、黒魔術。聖樹の花が咲いた次の年の聖樹祭で魔法生物を生贄に捧げれば、誰でも聖職者の力が手に入る薬が作れる。そうか、果物を捧げてそれで作ったジュースを飲むっていう聖樹祭のしきたりは、元々この薬の生成方法をイメージしたものだったのか。魔法生物が絶滅危惧種になったから、黒魔術として禁忌になったんだな』
次の場面では、セルジュがよく知る現在の姿に成長したフランソワが、黒い毛皮をまとった大男と話し込んでいた。
『フランソワ殿、フエリト村にフェアリーが住んでいるというのは本当なのですか?』
『ああ、私が五年かけて探し出した。十五年前の話だが、今でもまだいるはずだ。聖樹の花が二十輪咲いたから、二十匹捕まえる。フエリト村で足りなければ、次は南の村だ。二十匹以上捕まえたら、お前らの好きにすればいい』
『とんでもない。フランソワ殿から頂いている報酬で十分です。我々も本来あまり危ない橋を渡りたくはないのですよ』
フランソワはふっと意地の悪い笑みを浮かべた。
『フエリト村にはいい思い出がある。あそこは私が初めて弱い魔法生物を見つけた場所であり、またなりたくもない騎士になった私の危険な任務を肩代わりしてくれる、都合のいいオメガを見つけた場所でもあるんだ』
ギリ、と隣で歯軋りしたクロードを、セルジュは片手でそっと制した。
「俺のことは気にするな。それよりあの毛皮を着た男は何者だ?」
「ロシェールの兵士だ。まさか密猟にも関わっていたとは」
二人が話している間に再び場面が変わり、フエリト村の跡地でフランソワとマルクが密会している場面が映し出されていた。
『記憶を失っているだと?』
『はい、フエリト村でのことは何も覚えていないそうです』
『それは好都合だ。私の顔は見られていないはずだが、フェアリーを集めていたことはできれば知られたくなかった』
『それでは、殺さなくても大丈夫なのですね?』
『ああ、私も役に立つ駒はできれば手放したくないからな』
マルクはそれを聞いて安堵の表情を浮かべた。
『しかしわざわざ本を使って暗号を送るなんて。私がこっそりお手紙を渡せば済むことでしたのに』
『お前が内偵だとセルジュに知られたくなかったんだ。とりあえず十月二十四日は頼んだぞ』
そこで映像は途切れて、膜の向こうで叫び続けているフランソワの姿が再び目に入った。
セルジュは絶句したまま、ただただフランソワを悲しい目で見つめていた。
(自分の私利私欲のために、自分より弱いものを食い物にしていたんだな。力の弱いフェアリーや、立場の弱いオメガの俺やスティーブを)
パチンッ! と膜が弾けて、フランソワの体が赤い液体に包まれた。おかしくなってしまったフランソワは何が起こっているのか気づかないうちに息を引き取り、虚な目をしたまま赤い液体の中に飲み込まれて、美しかった髪の毛一本残すことなく消化されてしまった。
(さようなら、フランソワ)
怒りとも悲しみともつかぬ感情に苛まれ、セルジュは少しの間抜け殻のようにその場に立ち尽くしていた。
「あー」
エミールに服の袖を引っ張られ、セルジュはようやく現実に引き戻された。
「……そうだね、ここから早く出ないと」
セルジュは左手を二、三度振ってみたが、彼らを保護している青い膜は赤い水の中でふよふよ浮いているだけで、特に上昇する気配は見せなかった。
「え、どうしよう。これどうやったら上に上がれるんだ?」
クロードも眉根を曇らせて上を見上げている。
「この膜の中にいては水を掻いて上がることはできないな」
「でも膜から出たらフランソワの二の舞……」
セルジュは跡形もなく溶けてしまったフランソワを思い出して、ぶるっと身震いした。
「上から引っ張り上げてもらうか、自力で膜ごと上昇するか」
「自力で?」
「もし俺に羽があったらさ、こう天井に手をついて、バタバタ~って」
その時、エミールが突然セルジュの腕の中で暴れ出した。今までにない強い力で、セルジュは抑えていることができずに思わずエミールを取り落としてしまった。
「危ないっ!」
蒼白になったセルジュの目の前でエミールが青い膜の地面に落ちた、と思った瞬間、緑色の光がエミールの体を覆った。
「うわっ!」
至近距離での眩しい光に、セルジュは慌てて両手を目の前にかざした。クロードがセルジュを守るように背後からさっと抱き寄せた。
「ふえ~!」
緑色の光の中から現れたのは、輝く緑の髪を持ち、穢れのない瞳は紫色で、大きさは大人の掌ほどしかない生き物であった。子供の可愛らしい顔つきをしていたが、セルジュに似ていると思っていたあのエミールの顔ではない。透き通った四枚の羽を小刻みに羽ばたかせた姿はまさしくフェアリーの姿そのものであった。
「エミール?」
エミールは二人の頭上へ舞い上がると、先程セルジュが言ったように膜でできた天井に手を当てて、必死に羽を動かし始めた。
「エミール、無理だって! そんな小さな体で……」
セルジュも慌てて手を伸ばしたが、天井はおろかエミールの足先にすら手が届かなかった。
必死に背伸びするセルジュの肩を、クロードがそっと押さえた。
「セルジュ、もういい」
「何でだよ」
「俺たちができることは何もない」
「でも、あんなに小さくて、まだ子供なのに……」
しかし少しずつではあったが、確かに彼らの入っている青い膜は、エミールのか弱い羽ばたきで徐々に上昇しつつあった。
(……嘘だろ、エミール)
「ここは聖樹の魔法が最高に濃く満ちた空間だ。魔法生物の力は最大限に発揮される」
クロードは再びセルジュの肩を優しく抱き寄せた。
「それに人間の一歳児とは違う。俺たちが思ってるより、ずっと逞しいのかもしれない」
セルジュは自分の肩を抱いているクロードをちらっと見上げた。
「お前……俺に説明することがあるんじゃないのか?」
クロードもセルジュの目をまっすぐ見返した。
「そうだな」
(ここはどういう所なんだ?)
聖樹の花の中は確かに赤い水のようなもので満たされていたが、自分たちが丸いシャボン玉のような膜の中に入っていることにセルジュは気がついた。青い光を放つその膜は、よく見るとセルジュの指輪が作り出しているものであった。
(これはもしかして、防御の加護なのか? 緑の光は攻撃の加護だったのかも)
四人と一緒に紛れて落ちてきた葉っぱが数枚、青い膜の外で赤い水に浮かんでいる。しかしよく見ると、縁から侵食されるように徐々に溶けて小さくなっているのが分かった。
(げっ!)
じゅわっと溶けて無くなってしまった葉っぱを見て、セルジュの背筋に寒気が走った。
(これ、消化液じゃないか? 聖樹の花って食虫植物……いや、食人植物だったのか? ロベール伯爵の指輪がなかったら、俺たちもあの葉っぱと同じ姿に……?)
「セルジュ!」
クロードの声がして振り返ろうとした瞬間、後ろから硬い腕にギュッと抱きしめられた。
「大丈夫か?」
「お前こそ大丈夫かよ? 掌すごいことになってんぞ」
「俺は平気だ」
クロードはきっと手首を切り落とされでもしない限り、大丈夫だと主張し続けるんだろう。エミールもいつのまにか泣き止んで、セルジュの腕の中に満足げに収まっていた。
「そうだ、フランソワは?」
セルジュの問いに、クロードはセルジュの背後を指差した。
「あそこだ」
フランソワはセルジュたちから少し離れた場所で、頭を抱えてうずくまっていた。何か大声で叫んでいるようだったが、青い膜が細胞壁のようにセルジュたちのいる部屋とフランソワのいる部屋を隔てていたため、何を言っているのかさっぱり分からなかった。
「お前の指輪の力に触れると、魔法生物の怒りを買った人間はどうも狂ってしまうようだ」
セルジュは黙ってうずくまっているフランソワを見つめた。
「……フランソワはどうしてこんな事を?」
その時、青い膜の壁に突然映写機で映したかのようにぱっと鮮やかな映像が浮かび上がった。長い金髪の美しい少年が二人、机に向かって何やら試験を受けているようだ。片方の少年は真面目に取り組んでいたが、もう一人の少年の方は上の空で、時折相方の用紙をチラッと盗み見していた。
『フランソワ!』
真面目に取り組んでいる方の少年が、カンニングされていることに気がついて厳しい声で咎めた。
『それじゃ意味ないだろ!』
『だって分かんないんだもん、兄さん』
『父さんが百回読めって言った所を読まなかったのか? お前の方が俺より賢いんだから、ちゃんと読んでいればできるはずだろ?』
『だって面倒だし』
『そんなことでは聖職者の厳しい修行に耐えられないぞ。お前も父さんみたいな立派な聖職者になりたいんだろう? 聖職者になれなかったら、騎士になって王家に仕えることになるが、お前はそれでいいのか?』
『でも兄さん、まだ修行も何もしてないけど、僕は魔法生物を見分けられるよ』
『それはただ聖職者の家系の人間が生まれながらに持つ才能だ。聖職者ってのは奇跡のような技をたくさん使えなくてはならない。北のステヴナン伯爵夫人が使うような治癒の力とかな』
そこで水が流れるように映像が横に流れ、場面は切り替わって十五歳くらいに成長したフランソワが映し出された。周りを気にするような素振りを見せながら、薄暗い倉庫のような場所で古めかしい本のページをめくっている。周りの本の背表紙の禍々しい雰囲気から、そこが禁書庫であることが伺えた。
『あった!』
フランソワは探していた情報に辿り着いたようで、羅列してある文字に興奮気味に指を走らせている。
『禁忌の術、黒魔術。聖樹の花が咲いた次の年の聖樹祭で魔法生物を生贄に捧げれば、誰でも聖職者の力が手に入る薬が作れる。そうか、果物を捧げてそれで作ったジュースを飲むっていう聖樹祭のしきたりは、元々この薬の生成方法をイメージしたものだったのか。魔法生物が絶滅危惧種になったから、黒魔術として禁忌になったんだな』
次の場面では、セルジュがよく知る現在の姿に成長したフランソワが、黒い毛皮をまとった大男と話し込んでいた。
『フランソワ殿、フエリト村にフェアリーが住んでいるというのは本当なのですか?』
『ああ、私が五年かけて探し出した。十五年前の話だが、今でもまだいるはずだ。聖樹の花が二十輪咲いたから、二十匹捕まえる。フエリト村で足りなければ、次は南の村だ。二十匹以上捕まえたら、お前らの好きにすればいい』
『とんでもない。フランソワ殿から頂いている報酬で十分です。我々も本来あまり危ない橋を渡りたくはないのですよ』
フランソワはふっと意地の悪い笑みを浮かべた。
『フエリト村にはいい思い出がある。あそこは私が初めて弱い魔法生物を見つけた場所であり、またなりたくもない騎士になった私の危険な任務を肩代わりしてくれる、都合のいいオメガを見つけた場所でもあるんだ』
ギリ、と隣で歯軋りしたクロードを、セルジュは片手でそっと制した。
「俺のことは気にするな。それよりあの毛皮を着た男は何者だ?」
「ロシェールの兵士だ。まさか密猟にも関わっていたとは」
二人が話している間に再び場面が変わり、フエリト村の跡地でフランソワとマルクが密会している場面が映し出されていた。
『記憶を失っているだと?』
『はい、フエリト村でのことは何も覚えていないそうです』
『それは好都合だ。私の顔は見られていないはずだが、フェアリーを集めていたことはできれば知られたくなかった』
『それでは、殺さなくても大丈夫なのですね?』
『ああ、私も役に立つ駒はできれば手放したくないからな』
マルクはそれを聞いて安堵の表情を浮かべた。
『しかしわざわざ本を使って暗号を送るなんて。私がこっそりお手紙を渡せば済むことでしたのに』
『お前が内偵だとセルジュに知られたくなかったんだ。とりあえず十月二十四日は頼んだぞ』
そこで映像は途切れて、膜の向こうで叫び続けているフランソワの姿が再び目に入った。
セルジュは絶句したまま、ただただフランソワを悲しい目で見つめていた。
(自分の私利私欲のために、自分より弱いものを食い物にしていたんだな。力の弱いフェアリーや、立場の弱いオメガの俺やスティーブを)
パチンッ! と膜が弾けて、フランソワの体が赤い液体に包まれた。おかしくなってしまったフランソワは何が起こっているのか気づかないうちに息を引き取り、虚な目をしたまま赤い液体の中に飲み込まれて、美しかった髪の毛一本残すことなく消化されてしまった。
(さようなら、フランソワ)
怒りとも悲しみともつかぬ感情に苛まれ、セルジュは少しの間抜け殻のようにその場に立ち尽くしていた。
「あー」
エミールに服の袖を引っ張られ、セルジュはようやく現実に引き戻された。
「……そうだね、ここから早く出ないと」
セルジュは左手を二、三度振ってみたが、彼らを保護している青い膜は赤い水の中でふよふよ浮いているだけで、特に上昇する気配は見せなかった。
「え、どうしよう。これどうやったら上に上がれるんだ?」
クロードも眉根を曇らせて上を見上げている。
「この膜の中にいては水を掻いて上がることはできないな」
「でも膜から出たらフランソワの二の舞……」
セルジュは跡形もなく溶けてしまったフランソワを思い出して、ぶるっと身震いした。
「上から引っ張り上げてもらうか、自力で膜ごと上昇するか」
「自力で?」
「もし俺に羽があったらさ、こう天井に手をついて、バタバタ~って」
その時、エミールが突然セルジュの腕の中で暴れ出した。今までにない強い力で、セルジュは抑えていることができずに思わずエミールを取り落としてしまった。
「危ないっ!」
蒼白になったセルジュの目の前でエミールが青い膜の地面に落ちた、と思った瞬間、緑色の光がエミールの体を覆った。
「うわっ!」
至近距離での眩しい光に、セルジュは慌てて両手を目の前にかざした。クロードがセルジュを守るように背後からさっと抱き寄せた。
「ふえ~!」
緑色の光の中から現れたのは、輝く緑の髪を持ち、穢れのない瞳は紫色で、大きさは大人の掌ほどしかない生き物であった。子供の可愛らしい顔つきをしていたが、セルジュに似ていると思っていたあのエミールの顔ではない。透き通った四枚の羽を小刻みに羽ばたかせた姿はまさしくフェアリーの姿そのものであった。
「エミール?」
エミールは二人の頭上へ舞い上がると、先程セルジュが言ったように膜でできた天井に手を当てて、必死に羽を動かし始めた。
「エミール、無理だって! そんな小さな体で……」
セルジュも慌てて手を伸ばしたが、天井はおろかエミールの足先にすら手が届かなかった。
必死に背伸びするセルジュの肩を、クロードがそっと押さえた。
「セルジュ、もういい」
「何でだよ」
「俺たちができることは何もない」
「でも、あんなに小さくて、まだ子供なのに……」
しかし少しずつではあったが、確かに彼らの入っている青い膜は、エミールのか弱い羽ばたきで徐々に上昇しつつあった。
(……嘘だろ、エミール)
「ここは聖樹の魔法が最高に濃く満ちた空間だ。魔法生物の力は最大限に発揮される」
クロードは再びセルジュの肩を優しく抱き寄せた。
「それに人間の一歳児とは違う。俺たちが思ってるより、ずっと逞しいのかもしれない」
セルジュは自分の肩を抱いているクロードをちらっと見上げた。
「お前……俺に説明することがあるんじゃないのか?」
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