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07 不器用な狼
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何をするつもりか考える間もなく、月島が俺の性器をかぷりと口に含む。
そのまま音を立てて吸い上げられると、腰が浮くような快感に襲われた。
「あっ、ああ……! そ、んな」
制止しようと試みるが、上手く言葉が出てこない。いつもは油を塗ったかのように滑らかに動く舌も、酒のせいですっかり鈍ってしまっていた。
喉の奥まで含まれると、抵抗しようという気勢まで削がれてしまう。酔いと快感に浮かされて、俺はいつしか与えられるままに快楽を享受していた。
「うあ、あぁ……うぅ」
同じ性を持つだけあって、月島は気持ちの良い箇所を正確に把握していた。あっという間に上り詰めていくが、どうにもあと一歩絶頂には辿り着けない。
月島の技量が問題な訳ではない。飲み過ぎているせいだった。
そんな事情を月島が知るよしもなく。月島は一層激しく責め立ててくるが、快楽はやがて苦痛へと変わっていく。
「待て、月島ぁ、まって……ッ! おれ、イけな……ああっ!」
途切れ途切れの抗議は全く取り合ってもらえない。快感を逃がそうと、靴下を履いたままの足でシーツをにじるが、無駄な努力に終わった。
イけそうで、イけない。もどかしい苦しみに視界が滲んでいく。
「い、や、やだ、やだぁ……!」
「……そんなに嫌がられると、興奮するからやめてくれないか?」
半ばぐずりながら月島の髪を握りしめていると、ようやく口が離された。
今の言葉は皮肉なのか本気なのか分からなかったが、とにかく今しかないと必死で事情を説明する。
「おれ……俺、酒飲んでるから……い、イけなくて……!」
「ああ、それでいまいち固くならなかったのか」
言いながら、月島が俺の性器の端を指ではじく。
一応勃ってはいるものの、まだまだ柔らかいそれはゆるりと振れた。
「……ッ」
小さな痛みに息を詰める。
俺の反応に、月島は意地の悪い顔をして、鞄の中から携帯用のローションとゴムを取り出した。
「気にするな。君が勃たなくても問題はない」
「てめぇ……」
あんまりな発言に牙を剥く。
月島は俺の視線を無視して、唾液と先走りによってぐちゃぐちゃになった下着を奪い取り、ぞんざいに後ろへ放り投げた。それから、ローションの封を切り、どろりと溢れた液体を直接俺の下肢へと滴らせる。
突然の冷たさに身を竦めると、微かな笑い声が聞こえてきた。どうやら確信犯のようだ。
文句を言ってやろうと口を開いたが、見計らったかのように秘部へと指を忍び込まされて、苦情は嬌声へと変わる。
「うあ、くっ……」
「どうした、何か言いたげだな」
「冷た、あ、うあ」
「よく聞こえないのだが」
「いっ、お、ま……わざとだろ……ッ!」
全く話を聞く気の感じられない指使いに、拳を握り締める。そっちがその気なら、こちらも肉体言語で応じるまでだ。
力なく振るった拳はあっけなく避けられたが、言いたいことは伝わったらしい。月島は口先だけで怖がると、肩をすくめた。
「思ったより元気だね、結構飲ませたつもりだったが」
「あ……?」
何か今、聞き逃せないことを言ったような気がする。
送り狼。そんな言葉が脳裏によぎったが、浮かびかけた疑念は快感に流されていく。
ぐりぐりと前立腺を押し込まれ、口元からは唾液が零れ落ちた。
「あ、ああっ」
頭が真っ白になっていくような感覚に、背中を弓なりにしならせて喘ぐ。月島の長い指は、俺の中でばらばらに動いて快楽を生み出していくが、どうにももどかしい。
もう少し。いや、もっと強い快楽が欲しくて仕方がなかった。
「つ、きしまぁ……!」
もっと、と口の動きだけで伝えると、ごくりと生唾を飲み込む音が聞こえた。
感触を確かめるように、ぐるりと内壁をなぞってから指が抜き取られる。そして軽い金属音がしたかと思うと、火照った俺の身体よりも熱いモノが体内へ突き立てられた。
「あまり煽らないで欲しいと言ったのだが」
「う、あ、熱い……!」
「我慢してくれ」
堪らず声を上げるが、聞き入れられることはなかった。付いて行かない心とは裏腹に、慣らされた秘部は月島の欲望を易々と受け入れていく。身体の中を焼かれていくような感覚に目の前が明滅した。
やがて月島は自身を全て収めると、性急に律動を開始する。
「ちょっ……と、待てよ……!」
「我慢なら、もう充分しただろう?」
間近で囁いた月島の瞳はぎらぎらと輝いており、思いの外切羽詰まっていた。いつもと大差のないすました表情をしていながらも、その目と体内の熱が雄弁に物語っている。
欲しくて欲しくて堪らない——と。
こんな顔をさせているのは自分だと思うと、腹の奥がぞくりと疼いた。
「ははっ、余裕ない、な」
「そういう君は随分と余裕そうじゃないか、刺激が足りないのかね?」
そう言うと月島は、性懲りもなく俺の性器へと手を伸ばしてきた。
唾液で濡れたままの亀頭を撫でられると、忘れていた苦しみがぶり返してくる。
「あ、やめろ、や、イけないって……!」
「知ってる、先ほど聞いたからな」
ふてぶてしく述べながらも、その手を止める気配はない。強引に引き剥がそうにも、腕に力が入らなかった。
「な、ら、触るなよぉ……ッ」
「気持ちいいのだろう?」
「ちがっ……つら……」
「こら、あまり邪魔をするな」
抵抗しているうちに爪を立ててしまったらしく、月島が一瞬顔をしかめる。反射的に手が引っ込められて苦しみから解放されたが、それも一瞬の事だった。
体内の熱が引き抜かれたと思うと、間髪入れずにひっくり返される。俺の背後に回った月島は、そのまま力任せに俺の腰を持ち上げて再び体内へ侵入してきた。
体勢が変わり、より奥まで犯される感触に息が詰まる。声にならない声を漏らしていると、不意に右腕を掴み取られて後ろ手に固定された。嫌な予感がした時にはもう遅い。
「あっ、ひっ、触るなぁ……!」
身動きを封じられた状態で性器を嬲られ、なす術もなく身悶える。集中的に亀頭を擦られ、絶頂間近の快感に襲われながらも、決して達することはできない。
「あああッイけない、イけないから……ッ」
必死に訴えかけても手は緩まない。それどころか、嫌がる姿を見て興奮しているようにすら感じる。
「うあ、やめ、やめ……ろっ! 先ばっか……ぁ!」
「は……人に物を頼むときは、もっと言い方があるんじゃないか」
「……ッ!」
鬼だ。顔は見えないが、月島が悪魔のような笑みを浮かべていることは分かった。
ぐっと唇を噛み締めて黙り込むと、わずかに爪が立てられる。
「それとも、もっと虐めて欲しかったのか? 気が付かなくて悪かった」
「違っ、あああッ!」
忘れかけていた後ろの動きが再開される。ごりごりと前立腺を突き上げられ、もはや悲鳴に近い喘ぎ声が絞り出されるが、手心を加えてくれる気配はない。
月島は跳ねる俺の身体を抑えつけると、乱暴にシャツを引き下げて肩口に歯を立てた。
「ひ、ひいっ、ひあ……! 痛……っ!」
「満更でもなさそうじゃないか」
くっきりと残った歯型をぺろりと舐め、あちこちに所有の跡を残していく。随分と好き勝手しているが、そんな些細なことに構っていられるだけの余裕はなかった。
前からも後ろからも執拗に責められ、頭の中は快楽で一杯だ。零れ落ちる涙もそのままに、ただただ喘がされる。
悲鳴が泣き声へと変わっていくのに、それほど時間はかからなかった。
もう、限界だ。
「つき、しまぁ……ッ!」
「……何だね」
振り返って悪魔の名を呼べば、月島はややペースを落として聞く姿勢をとった。
「頼む……から、も……やめてくれ……!」
小さく懇願すると、月島は優しく微笑んでこう言った。
「嫌だね」と。
しばし、発せられた言葉の意味が理解出来なかった。じわじわと月島の言葉が脳に染み込んでいくと同時に、顔が紅潮していくのを感じる。
……信じられない。
「う、嘘吐き……ひっ!」
「別に嘘を吐いてなどいない、私は君の態度を正しただけであって——」
そこで月島は一度言葉を区切り、歯を見せて獰猛に笑った。
「丁寧に頼めばやめてやるなど、一言も言っていない」
「~~っ!」
言葉も出なかった。とんだ外道である。
まんまと月島の手のひらで踊らされた悔しさに歯噛みするが、相手はいつまでも待ってくれるような男ではなかった。
「く、そ! 鬼畜野郎! はなせ、んう……!」
「酷い言われようだな」
くすくすと軽く笑っているくせに、その動きに一切の慈悲は無い。俺は掠れた声で悪態の限りを吐きながらも、あっという間に追い詰められ、待ち望んだ絶頂に身を委ねた。
「んあ、ああああッ! ひっ、ひい……ッ!」
「っは、締まるな……」
全身を痙攣させて恍惚としていると、咥え込んだ熱も共に弾けるのを感じた。
これでやっと解放される。そう思ったが、未だ俺の性器を嬲り続ける月島の指に意識を引き戻された。
「ああ、あ、イったから……! も……」
「こっちはまだ出してないだろう?」
「ひあ、ああ、ううぅ……ッ!」
これだけ蹂躙しても物足りないのか、達したばかりで敏感になっている全身を撫で回される。いつの間にか俺の右手は解放されていたが、もはやシーツに縋りつくことしかできなかった。
強すぎる快楽に言葉を紡ぐこともままならず、それでも何とか苦しみから逃れたくて、ぐずる子どものように首を横に振る。
「うぐ、うう、うううっ……!」
「いい加減、酒も抜けてきただろう」
月島の言う通り、酔いも醒めてきていた。
しかしそれでも達することが出来ず、先走りばかりがぽたぽたとシーツに染みを作っていく。一体、この男は何処まで嬲れば気が済むのだろうか。
「あ、ぐ……! ————ッ! ひああっ、ああッ!」
やっとの思いで絶頂を迎えるが、焦らされていたせいか、なかなか波が引かない。月島の手の動きにそって、次から次へと白濁が溢れ出してくる。
狂ったように嬌声を上げながら、延々と終わらない絶頂に恐怖を覚える。
「つき、しま、つきしまぁぁ……!」
「篠崎」
不安な気持ちに追い立てられ、縋るように月島の名を呼ぶ。情けない痴態を嘲笑われるかと思ったが、意外にも月島は優しく口付けてきた。
柔らかく触れるだけのキスが思いの外心地よくて、俺は目を閉じ——そのまま意識を手放した。
そのまま音を立てて吸い上げられると、腰が浮くような快感に襲われた。
「あっ、ああ……! そ、んな」
制止しようと試みるが、上手く言葉が出てこない。いつもは油を塗ったかのように滑らかに動く舌も、酒のせいですっかり鈍ってしまっていた。
喉の奥まで含まれると、抵抗しようという気勢まで削がれてしまう。酔いと快感に浮かされて、俺はいつしか与えられるままに快楽を享受していた。
「うあ、あぁ……うぅ」
同じ性を持つだけあって、月島は気持ちの良い箇所を正確に把握していた。あっという間に上り詰めていくが、どうにもあと一歩絶頂には辿り着けない。
月島の技量が問題な訳ではない。飲み過ぎているせいだった。
そんな事情を月島が知るよしもなく。月島は一層激しく責め立ててくるが、快楽はやがて苦痛へと変わっていく。
「待て、月島ぁ、まって……ッ! おれ、イけな……ああっ!」
途切れ途切れの抗議は全く取り合ってもらえない。快感を逃がそうと、靴下を履いたままの足でシーツをにじるが、無駄な努力に終わった。
イけそうで、イけない。もどかしい苦しみに視界が滲んでいく。
「い、や、やだ、やだぁ……!」
「……そんなに嫌がられると、興奮するからやめてくれないか?」
半ばぐずりながら月島の髪を握りしめていると、ようやく口が離された。
今の言葉は皮肉なのか本気なのか分からなかったが、とにかく今しかないと必死で事情を説明する。
「おれ……俺、酒飲んでるから……い、イけなくて……!」
「ああ、それでいまいち固くならなかったのか」
言いながら、月島が俺の性器の端を指ではじく。
一応勃ってはいるものの、まだまだ柔らかいそれはゆるりと振れた。
「……ッ」
小さな痛みに息を詰める。
俺の反応に、月島は意地の悪い顔をして、鞄の中から携帯用のローションとゴムを取り出した。
「気にするな。君が勃たなくても問題はない」
「てめぇ……」
あんまりな発言に牙を剥く。
月島は俺の視線を無視して、唾液と先走りによってぐちゃぐちゃになった下着を奪い取り、ぞんざいに後ろへ放り投げた。それから、ローションの封を切り、どろりと溢れた液体を直接俺の下肢へと滴らせる。
突然の冷たさに身を竦めると、微かな笑い声が聞こえてきた。どうやら確信犯のようだ。
文句を言ってやろうと口を開いたが、見計らったかのように秘部へと指を忍び込まされて、苦情は嬌声へと変わる。
「うあ、くっ……」
「どうした、何か言いたげだな」
「冷た、あ、うあ」
「よく聞こえないのだが」
「いっ、お、ま……わざとだろ……ッ!」
全く話を聞く気の感じられない指使いに、拳を握り締める。そっちがその気なら、こちらも肉体言語で応じるまでだ。
力なく振るった拳はあっけなく避けられたが、言いたいことは伝わったらしい。月島は口先だけで怖がると、肩をすくめた。
「思ったより元気だね、結構飲ませたつもりだったが」
「あ……?」
何か今、聞き逃せないことを言ったような気がする。
送り狼。そんな言葉が脳裏によぎったが、浮かびかけた疑念は快感に流されていく。
ぐりぐりと前立腺を押し込まれ、口元からは唾液が零れ落ちた。
「あ、ああっ」
頭が真っ白になっていくような感覚に、背中を弓なりにしならせて喘ぐ。月島の長い指は、俺の中でばらばらに動いて快楽を生み出していくが、どうにももどかしい。
もう少し。いや、もっと強い快楽が欲しくて仕方がなかった。
「つ、きしまぁ……!」
もっと、と口の動きだけで伝えると、ごくりと生唾を飲み込む音が聞こえた。
感触を確かめるように、ぐるりと内壁をなぞってから指が抜き取られる。そして軽い金属音がしたかと思うと、火照った俺の身体よりも熱いモノが体内へ突き立てられた。
「あまり煽らないで欲しいと言ったのだが」
「う、あ、熱い……!」
「我慢してくれ」
堪らず声を上げるが、聞き入れられることはなかった。付いて行かない心とは裏腹に、慣らされた秘部は月島の欲望を易々と受け入れていく。身体の中を焼かれていくような感覚に目の前が明滅した。
やがて月島は自身を全て収めると、性急に律動を開始する。
「ちょっ……と、待てよ……!」
「我慢なら、もう充分しただろう?」
間近で囁いた月島の瞳はぎらぎらと輝いており、思いの外切羽詰まっていた。いつもと大差のないすました表情をしていながらも、その目と体内の熱が雄弁に物語っている。
欲しくて欲しくて堪らない——と。
こんな顔をさせているのは自分だと思うと、腹の奥がぞくりと疼いた。
「ははっ、余裕ない、な」
「そういう君は随分と余裕そうじゃないか、刺激が足りないのかね?」
そう言うと月島は、性懲りもなく俺の性器へと手を伸ばしてきた。
唾液で濡れたままの亀頭を撫でられると、忘れていた苦しみがぶり返してくる。
「あ、やめろ、や、イけないって……!」
「知ってる、先ほど聞いたからな」
ふてぶてしく述べながらも、その手を止める気配はない。強引に引き剥がそうにも、腕に力が入らなかった。
「な、ら、触るなよぉ……ッ」
「気持ちいいのだろう?」
「ちがっ……つら……」
「こら、あまり邪魔をするな」
抵抗しているうちに爪を立ててしまったらしく、月島が一瞬顔をしかめる。反射的に手が引っ込められて苦しみから解放されたが、それも一瞬の事だった。
体内の熱が引き抜かれたと思うと、間髪入れずにひっくり返される。俺の背後に回った月島は、そのまま力任せに俺の腰を持ち上げて再び体内へ侵入してきた。
体勢が変わり、より奥まで犯される感触に息が詰まる。声にならない声を漏らしていると、不意に右腕を掴み取られて後ろ手に固定された。嫌な予感がした時にはもう遅い。
「あっ、ひっ、触るなぁ……!」
身動きを封じられた状態で性器を嬲られ、なす術もなく身悶える。集中的に亀頭を擦られ、絶頂間近の快感に襲われながらも、決して達することはできない。
「あああッイけない、イけないから……ッ」
必死に訴えかけても手は緩まない。それどころか、嫌がる姿を見て興奮しているようにすら感じる。
「うあ、やめ、やめ……ろっ! 先ばっか……ぁ!」
「は……人に物を頼むときは、もっと言い方があるんじゃないか」
「……ッ!」
鬼だ。顔は見えないが、月島が悪魔のような笑みを浮かべていることは分かった。
ぐっと唇を噛み締めて黙り込むと、わずかに爪が立てられる。
「それとも、もっと虐めて欲しかったのか? 気が付かなくて悪かった」
「違っ、あああッ!」
忘れかけていた後ろの動きが再開される。ごりごりと前立腺を突き上げられ、もはや悲鳴に近い喘ぎ声が絞り出されるが、手心を加えてくれる気配はない。
月島は跳ねる俺の身体を抑えつけると、乱暴にシャツを引き下げて肩口に歯を立てた。
「ひ、ひいっ、ひあ……! 痛……っ!」
「満更でもなさそうじゃないか」
くっきりと残った歯型をぺろりと舐め、あちこちに所有の跡を残していく。随分と好き勝手しているが、そんな些細なことに構っていられるだけの余裕はなかった。
前からも後ろからも執拗に責められ、頭の中は快楽で一杯だ。零れ落ちる涙もそのままに、ただただ喘がされる。
悲鳴が泣き声へと変わっていくのに、それほど時間はかからなかった。
もう、限界だ。
「つき、しまぁ……ッ!」
「……何だね」
振り返って悪魔の名を呼べば、月島はややペースを落として聞く姿勢をとった。
「頼む……から、も……やめてくれ……!」
小さく懇願すると、月島は優しく微笑んでこう言った。
「嫌だね」と。
しばし、発せられた言葉の意味が理解出来なかった。じわじわと月島の言葉が脳に染み込んでいくと同時に、顔が紅潮していくのを感じる。
……信じられない。
「う、嘘吐き……ひっ!」
「別に嘘を吐いてなどいない、私は君の態度を正しただけであって——」
そこで月島は一度言葉を区切り、歯を見せて獰猛に笑った。
「丁寧に頼めばやめてやるなど、一言も言っていない」
「~~っ!」
言葉も出なかった。とんだ外道である。
まんまと月島の手のひらで踊らされた悔しさに歯噛みするが、相手はいつまでも待ってくれるような男ではなかった。
「く、そ! 鬼畜野郎! はなせ、んう……!」
「酷い言われようだな」
くすくすと軽く笑っているくせに、その動きに一切の慈悲は無い。俺は掠れた声で悪態の限りを吐きながらも、あっという間に追い詰められ、待ち望んだ絶頂に身を委ねた。
「んあ、ああああッ! ひっ、ひい……ッ!」
「っは、締まるな……」
全身を痙攣させて恍惚としていると、咥え込んだ熱も共に弾けるのを感じた。
これでやっと解放される。そう思ったが、未だ俺の性器を嬲り続ける月島の指に意識を引き戻された。
「ああ、あ、イったから……! も……」
「こっちはまだ出してないだろう?」
「ひあ、ああ、ううぅ……ッ!」
これだけ蹂躙しても物足りないのか、達したばかりで敏感になっている全身を撫で回される。いつの間にか俺の右手は解放されていたが、もはやシーツに縋りつくことしかできなかった。
強すぎる快楽に言葉を紡ぐこともままならず、それでも何とか苦しみから逃れたくて、ぐずる子どものように首を横に振る。
「うぐ、うう、うううっ……!」
「いい加減、酒も抜けてきただろう」
月島の言う通り、酔いも醒めてきていた。
しかしそれでも達することが出来ず、先走りばかりがぽたぽたとシーツに染みを作っていく。一体、この男は何処まで嬲れば気が済むのだろうか。
「あ、ぐ……! ————ッ! ひああっ、ああッ!」
やっとの思いで絶頂を迎えるが、焦らされていたせいか、なかなか波が引かない。月島の手の動きにそって、次から次へと白濁が溢れ出してくる。
狂ったように嬌声を上げながら、延々と終わらない絶頂に恐怖を覚える。
「つき、しま、つきしまぁぁ……!」
「篠崎」
不安な気持ちに追い立てられ、縋るように月島の名を呼ぶ。情けない痴態を嘲笑われるかと思ったが、意外にも月島は優しく口付けてきた。
柔らかく触れるだけのキスが思いの外心地よくて、俺は目を閉じ——そのまま意識を手放した。
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