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20 呼び出し ーランナルー
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「クソ!あいつめ…」
ランナルは、王宮へと向かう馬車の中で思わず悪態をついた。
「まぁ、仕方ありませんよね。マックス王子殿下に知られてしまったのですから。」
向かいに座っている、侍従のソーレンがそれに口を開いた。ソーレンは、ランナルが小さい頃から侍従をしている為兄のような友人のような存在である。若くして侯爵家の当主となったランナルを支える大切な存在だ。
「分かってる。だけどせっかく…」
「アウロラ様の事ですか?確かにお会い出来ましたからね。念願叶ったとの事おめでとうございます。」
ソーレンは、あの弓当て会の時にはすでに侍従として傍にいた為、当日も会場にいたし、その後あの日会った弓を引いた人物の事を気にしていた事ももちろん知っている。そのためやっと会えて食事まで誘えたのは感慨深いと言葉を掛けた。
「あ、あぁ…。
早く帰って、アウロラへ次会う約束を取り付けたい。」
そう。食事は共にしたが、気持ちを告げたわけではなく、ましてやクリスティーンも母もいたため思ったほど話が出来なかったのだ。
「王子殿下も忙しいですから、長く拘束はされないでしょう。
それに、殿下も予定がお有りだからこの朝早い時間だったわけでしょうし。」
「あぁ、だといいんだが…。」
今、ランナルはソーレンと共にすぐ近くの王宮へ向かっている。昨日夜遅くに、マックス王子の側近から滞在しているホテルへと連絡があり、『迎えをやるから明日朝日が昇る前に執務室へ来るように』と、告げたのだ。
☆★
ランナルはそう時間も掛からずに王宮へとたどり着く。馬車を降り、勝手知ったるマックス王子の執務室へと向かう。朝、というべきか太陽が顔を出してもいないため辺りは暗いが、部署によっては一日中稼働しているため近衛兵が見張る入り口から入っていった。
「俺だ。入るぞ。」
執務室の扉を軽く叩き、返事も聞かずに入ったランナル。普段、侯爵として訪れる時にはもちろん礼儀を持って接するが、このような非公式の場では、マックスのたっての願いでもあり学生の頃と同じように接しているのだ。
「あ、来た?ありがとう。早いね。ちょっとそっちに座ってて。」
マックスはこの時間からすでに仕事をしていたのか、正面にある執務机に向かって座り書類を捲ったりしていた。
ランナルは促され、手前にある布張りのソファに腰を下ろした。
「ふう。
…急に呼び出して済まないね。」
一区切りついたのか、マックスはその内の一つの束になった書類を持ってランナルの対面に座った。
「なんだよ、いつもの事だろ。気にするな。
…で、俺に聞きたい事があるのか?どうせ大まかにはすでに分かってるんだろ?」
王族は諜報に長けている者を雇っている。公にはされていないが、情報が早くなければひいては国の存亡にも関わるためである。それを暗に言っているのだ。
「まぁね。
昨日ランナルに名前を聞いたし、おれとドロテーアが観劇を観てる間に大体わかったよ。」
マックスはお忍びで出掛けていたが、それは仰々しく近衛騎士を引き連れてはいなかっただけで、民衆に溶け込みながらもしっかり警備は距離を保って付いていた。その中の一人が調べるために警備を離れても、残りの人数で充分守り抜ける程の能力を持つ者が付けられているのだ。
「そうか。」
ランナルも、その程度の時間であれば全貌が分かるだろうと思った。それほど、あの二人は単純でわかりやすく周囲にもまるで印象付けるかのように大きな声で常に過ごしていたからだ。
「それにしても…ククッ…やってくれたよねー。こんな酷い奴がエーレブルー国にいたとはね。
兄貴の治世になった時にこんな奴が侯爵家当主になってたら困るから、今の内に悪い芽は摘んでおかないといけないよね。
ついでに、一緒にいた女もさ。あんなのが社交場に出てこられてドロテーアに被害があってもいけないし…どうする?ランナル?」
調べた内容を思い出したのか、鼻で笑いながらそう唇を上げたマックスに、ランナルもまた鼻で短く息を吐くと口を開く。
「どうせもう決めてんだろ。」
「まぁ、ね。でもさ、ランナルも腹立ってるんでしょ?
だったらランナルの要望も付け加えようかなって。
あ、安心してね?親父にも兄貴にも、ちゃんと報告してあって、おれが対処していいって許可もらってるから。」
「いや…それは心配してない。
確かに、態度も言葉遣いも気に入らない奴らだったが、勝手にアウロラ嬢から手を引いたから、その点だけは褒めてやりたい所だ。」
「ふーん…アウロラ、ねぇ…。」
「あ?あ、いや、別に…」
「いつの間にか大人っぽくなったアウロラとランナルが、ねぇ…。そりゃ格好つけたいよねー。てか、そっちの話も聞きたいけど?
イクセル爺ちゃんに詮索するなって言われてふて腐れて、〝結婚なんてしない〟って諦めてたランナルが、気になってたオンナと二人で会ってるんだもんなー。」
「うるせーよ!」
「はいはい。ま、それはじゃあ今度ゆっくり酒でも飲みながらって事で。
えっとねー、とりあえずショールバリ産のワインは入荷停止!王宮でも賓客相手に出してたんだけどさ、やめるよ。
あと、父親のインマルだっけ?王宮で仕事はしてるみたいだけど、それは先代からの縁故入宮だったみたいでさ。先代と同じ仕事を振っても全くこなせなくて、だんだん仕事内容も簡単なのにされてたみたいでね。それでも最近は庶民課に回されて、文句言ってくるって周囲からも相談に来た庶民からも苦情が出てきてたみたいだから、解雇ね!」
「…」
王宮が今まで使用していたワインをこれからは必要としない、という事は切り捨てられたということ。もちろん味が落ちたとか、不作だったとか理由があれば、仕方ない事ではあるが、今回は表立った天候の理由は無い。それを国内の貴族が知れば、自ずとなぜそうなったのか様子をみようと取引を止めようとする者が増えたり遠巻きに距離を置く者も増えるだろうという事は火を見るよりも明らか。
それに加えて、現当主が解雇。何かあったと噂されるのは目に見えていた。
「あとさ、あの二人せっかくあんなに堂々と昼間から腕を組んで歩いてたりいちゃいちゃしてんだからすぐにでも結婚させちゃおう!
きっと離れたくないんだろうね。愛って恐ろしーね。ハハハハ。」
「目が笑ってねーぞ?」
「え?おれ?
だってさぁ、おれ相手に因縁付けてくるんだもんねぇ。あ、おれだったからまだいいよ?でも、他国の貴族とかだったらどーすんの?国際問題になるよね?
誰彼かまわず絡むなんて、騎士道学校で何学んでたんだって感じ。
もちろん、あのホテルはトルンロース家が御用達だったらしいけど出入り禁止。
んー、いっそのこと二人だけで暮らすってのも手だよね。ほら、あんな絡み合ったイチャイチャ、誰も見たくないじゃん?」
どこかいい場所ないかなー、とマックスは黒い笑顔を浮かべながら考えている様子を見て、やはり王族だったんだと今さらながら思った。普段、口調は砕け、飄々としているがその実冷酷に物事を見定めけじめをつけるのだ。
しかしその顔を見て、自分も同類だと気づく。
自分は特に何かされた訳ではないが、ビリエルはアウロラに酷い言葉を投げかけたりしていたし、嫌な思いをさせていたのだと思うと、アウロラの代わりに密かに自分が痛めつけてやろうと考えていた。
母と妹も世話になったのだが、エメリとクリスティーンがその気にさえなれば、仕返しは倍以上に行うと思っており、それよりもアウロラがされたというのが気に入らない。
一時とはいえ、アウロラの隣にいたという嫉妬も含まれていたのだが、ランナルはそこまでは思い当たらずただ腹立たしいという思いを胸に持っていた。
「引き取るところなんてねーよ、国内じゃどこにもさ。」
「!
あ、じゃあカルロッテに聞いてみよっと!あいつ、アウロラを実の妹のように可愛がってたからね。きっと、経緯を話したら烈火の如く怒って引き取ってくれるよ。」
「て、帝国に!?」
「いい考えじゃね?帝国にはさ、炭鉱村がいくつもあるし。人手が欲しい所っていくらでもあるよね。早速、皇帝に急速便で手紙送ろっと!
四六時中二人っきりにはなれないかもだけど、ああいうところって小さいけど住む場所は支給されるし、二人暮らしにはもってこいじゃん?」
「つまり、貴族籍は抜かせるって事か?」
「当たり前だよね、あんな品位を欠く奴らに家名なんて必要ないよ。」
「なるほどな。」
「十分待ってて、急いで手紙書くから。
書いたら確認してよランナル。」
「え?俺が?」
「うん。あ、でもショールバリ家とトルンロース家にも書かないとね。じゃあ二十分ちょうだい。
ショールバリ侯爵家は、次期当主がいなくなって大変だね!ま、きっと今の侯爵の手腕も大した事ないし、きっとそのうち潰れるからどうでもいいけど。」
「当主はそのまま続けさせるって事か。ま、あの感じじゃ一年も持たないだろうな。」
「だよね。もし、ワイン好きの奴が出資するってしゃしゃり出ても、おれがいるからムリだし。」
「その、ワインは?辛口好きには受けがいいんだろ?
俺は好きな味じゃないが。国営にするのか?」
「んー…そうだね。確かに領民がいるし、その時は国営化にしよう。ランナル、いい考えだよ!」
マックスはそう言って、執務机に戻ると手紙を書き出した。
☆★
結局、太陽が昇る前から王宮にやって来たランナルは四時間ほどマックスと過ごしていた。
時間はもうすぐ八時。早い者がちらほらと出勤してくる時間だ。
(意外と長く掛かったな。けどまぁ、処遇が決まったし仕方ないか。)
マックスと一緒に軽く食事も食べ、正門へと向かう時に正面から声が掛けられた。
「失礼。君は、ランナル殿ではないですか?」
「はい?そうですが…」
「あぁ、申し遅れました。私、クリストフ=レイグラーフと申します。
アウロラとは従兄弟にあたります。」
「!
このように挨拶をさせて頂くのは初めてですね。お初にお目に掛かります。」
「警戒を解いてくれてありがとう。
せっかくここでお会い出来たのだから、差し支えなければ少しお話できないだろうか?」
「私は所用は済みましたから構いませんが、クリストフ様は今から仕事ではないのでしょうか?」
「確かに僕は年上だけど、様、だなんて止めてくれないか?
…あぁ確かに。でもせっかくだし…では少しここで待っていてくれませんか?ちょっと時間をもらってきます。」
「よろしいのですか?」
「ん?どっちに対して?もしかしたら親族になるかもしれないし?どちらかといえば友人になれたら嬉しいなぁ。
今は切羽詰まった案件は無いし、多分大丈夫!すみません、少し待っていて下さい!!」
そう言うと、クリストフは駆けて行ったのだった。
(俺と話があるって…アウロラ嬢との事だろうか?何を言われるんだろう)
ランナルは少しソワソワとしながら木陰で待つ事としたのだった。
ランナルは、王宮へと向かう馬車の中で思わず悪態をついた。
「まぁ、仕方ありませんよね。マックス王子殿下に知られてしまったのですから。」
向かいに座っている、侍従のソーレンがそれに口を開いた。ソーレンは、ランナルが小さい頃から侍従をしている為兄のような友人のような存在である。若くして侯爵家の当主となったランナルを支える大切な存在だ。
「分かってる。だけどせっかく…」
「アウロラ様の事ですか?確かにお会い出来ましたからね。念願叶ったとの事おめでとうございます。」
ソーレンは、あの弓当て会の時にはすでに侍従として傍にいた為、当日も会場にいたし、その後あの日会った弓を引いた人物の事を気にしていた事ももちろん知っている。そのためやっと会えて食事まで誘えたのは感慨深いと言葉を掛けた。
「あ、あぁ…。
早く帰って、アウロラへ次会う約束を取り付けたい。」
そう。食事は共にしたが、気持ちを告げたわけではなく、ましてやクリスティーンも母もいたため思ったほど話が出来なかったのだ。
「王子殿下も忙しいですから、長く拘束はされないでしょう。
それに、殿下も予定がお有りだからこの朝早い時間だったわけでしょうし。」
「あぁ、だといいんだが…。」
今、ランナルはソーレンと共にすぐ近くの王宮へ向かっている。昨日夜遅くに、マックス王子の側近から滞在しているホテルへと連絡があり、『迎えをやるから明日朝日が昇る前に執務室へ来るように』と、告げたのだ。
☆★
ランナルはそう時間も掛からずに王宮へとたどり着く。馬車を降り、勝手知ったるマックス王子の執務室へと向かう。朝、というべきか太陽が顔を出してもいないため辺りは暗いが、部署によっては一日中稼働しているため近衛兵が見張る入り口から入っていった。
「俺だ。入るぞ。」
執務室の扉を軽く叩き、返事も聞かずに入ったランナル。普段、侯爵として訪れる時にはもちろん礼儀を持って接するが、このような非公式の場では、マックスのたっての願いでもあり学生の頃と同じように接しているのだ。
「あ、来た?ありがとう。早いね。ちょっとそっちに座ってて。」
マックスはこの時間からすでに仕事をしていたのか、正面にある執務机に向かって座り書類を捲ったりしていた。
ランナルは促され、手前にある布張りのソファに腰を下ろした。
「ふう。
…急に呼び出して済まないね。」
一区切りついたのか、マックスはその内の一つの束になった書類を持ってランナルの対面に座った。
「なんだよ、いつもの事だろ。気にするな。
…で、俺に聞きたい事があるのか?どうせ大まかにはすでに分かってるんだろ?」
王族は諜報に長けている者を雇っている。公にはされていないが、情報が早くなければひいては国の存亡にも関わるためである。それを暗に言っているのだ。
「まぁね。
昨日ランナルに名前を聞いたし、おれとドロテーアが観劇を観てる間に大体わかったよ。」
マックスはお忍びで出掛けていたが、それは仰々しく近衛騎士を引き連れてはいなかっただけで、民衆に溶け込みながらもしっかり警備は距離を保って付いていた。その中の一人が調べるために警備を離れても、残りの人数で充分守り抜ける程の能力を持つ者が付けられているのだ。
「そうか。」
ランナルも、その程度の時間であれば全貌が分かるだろうと思った。それほど、あの二人は単純でわかりやすく周囲にもまるで印象付けるかのように大きな声で常に過ごしていたからだ。
「それにしても…ククッ…やってくれたよねー。こんな酷い奴がエーレブルー国にいたとはね。
兄貴の治世になった時にこんな奴が侯爵家当主になってたら困るから、今の内に悪い芽は摘んでおかないといけないよね。
ついでに、一緒にいた女もさ。あんなのが社交場に出てこられてドロテーアに被害があってもいけないし…どうする?ランナル?」
調べた内容を思い出したのか、鼻で笑いながらそう唇を上げたマックスに、ランナルもまた鼻で短く息を吐くと口を開く。
「どうせもう決めてんだろ。」
「まぁ、ね。でもさ、ランナルも腹立ってるんでしょ?
だったらランナルの要望も付け加えようかなって。
あ、安心してね?親父にも兄貴にも、ちゃんと報告してあって、おれが対処していいって許可もらってるから。」
「いや…それは心配してない。
確かに、態度も言葉遣いも気に入らない奴らだったが、勝手にアウロラ嬢から手を引いたから、その点だけは褒めてやりたい所だ。」
「ふーん…アウロラ、ねぇ…。」
「あ?あ、いや、別に…」
「いつの間にか大人っぽくなったアウロラとランナルが、ねぇ…。そりゃ格好つけたいよねー。てか、そっちの話も聞きたいけど?
イクセル爺ちゃんに詮索するなって言われてふて腐れて、〝結婚なんてしない〟って諦めてたランナルが、気になってたオンナと二人で会ってるんだもんなー。」
「うるせーよ!」
「はいはい。ま、それはじゃあ今度ゆっくり酒でも飲みながらって事で。
えっとねー、とりあえずショールバリ産のワインは入荷停止!王宮でも賓客相手に出してたんだけどさ、やめるよ。
あと、父親のインマルだっけ?王宮で仕事はしてるみたいだけど、それは先代からの縁故入宮だったみたいでさ。先代と同じ仕事を振っても全くこなせなくて、だんだん仕事内容も簡単なのにされてたみたいでね。それでも最近は庶民課に回されて、文句言ってくるって周囲からも相談に来た庶民からも苦情が出てきてたみたいだから、解雇ね!」
「…」
王宮が今まで使用していたワインをこれからは必要としない、という事は切り捨てられたということ。もちろん味が落ちたとか、不作だったとか理由があれば、仕方ない事ではあるが、今回は表立った天候の理由は無い。それを国内の貴族が知れば、自ずとなぜそうなったのか様子をみようと取引を止めようとする者が増えたり遠巻きに距離を置く者も増えるだろうという事は火を見るよりも明らか。
それに加えて、現当主が解雇。何かあったと噂されるのは目に見えていた。
「あとさ、あの二人せっかくあんなに堂々と昼間から腕を組んで歩いてたりいちゃいちゃしてんだからすぐにでも結婚させちゃおう!
きっと離れたくないんだろうね。愛って恐ろしーね。ハハハハ。」
「目が笑ってねーぞ?」
「え?おれ?
だってさぁ、おれ相手に因縁付けてくるんだもんねぇ。あ、おれだったからまだいいよ?でも、他国の貴族とかだったらどーすんの?国際問題になるよね?
誰彼かまわず絡むなんて、騎士道学校で何学んでたんだって感じ。
もちろん、あのホテルはトルンロース家が御用達だったらしいけど出入り禁止。
んー、いっそのこと二人だけで暮らすってのも手だよね。ほら、あんな絡み合ったイチャイチャ、誰も見たくないじゃん?」
どこかいい場所ないかなー、とマックスは黒い笑顔を浮かべながら考えている様子を見て、やはり王族だったんだと今さらながら思った。普段、口調は砕け、飄々としているがその実冷酷に物事を見定めけじめをつけるのだ。
しかしその顔を見て、自分も同類だと気づく。
自分は特に何かされた訳ではないが、ビリエルはアウロラに酷い言葉を投げかけたりしていたし、嫌な思いをさせていたのだと思うと、アウロラの代わりに密かに自分が痛めつけてやろうと考えていた。
母と妹も世話になったのだが、エメリとクリスティーンがその気にさえなれば、仕返しは倍以上に行うと思っており、それよりもアウロラがされたというのが気に入らない。
一時とはいえ、アウロラの隣にいたという嫉妬も含まれていたのだが、ランナルはそこまでは思い当たらずただ腹立たしいという思いを胸に持っていた。
「引き取るところなんてねーよ、国内じゃどこにもさ。」
「!
あ、じゃあカルロッテに聞いてみよっと!あいつ、アウロラを実の妹のように可愛がってたからね。きっと、経緯を話したら烈火の如く怒って引き取ってくれるよ。」
「て、帝国に!?」
「いい考えじゃね?帝国にはさ、炭鉱村がいくつもあるし。人手が欲しい所っていくらでもあるよね。早速、皇帝に急速便で手紙送ろっと!
四六時中二人っきりにはなれないかもだけど、ああいうところって小さいけど住む場所は支給されるし、二人暮らしにはもってこいじゃん?」
「つまり、貴族籍は抜かせるって事か?」
「当たり前だよね、あんな品位を欠く奴らに家名なんて必要ないよ。」
「なるほどな。」
「十分待ってて、急いで手紙書くから。
書いたら確認してよランナル。」
「え?俺が?」
「うん。あ、でもショールバリ家とトルンロース家にも書かないとね。じゃあ二十分ちょうだい。
ショールバリ侯爵家は、次期当主がいなくなって大変だね!ま、きっと今の侯爵の手腕も大した事ないし、きっとそのうち潰れるからどうでもいいけど。」
「当主はそのまま続けさせるって事か。ま、あの感じじゃ一年も持たないだろうな。」
「だよね。もし、ワイン好きの奴が出資するってしゃしゃり出ても、おれがいるからムリだし。」
「その、ワインは?辛口好きには受けがいいんだろ?
俺は好きな味じゃないが。国営にするのか?」
「んー…そうだね。確かに領民がいるし、その時は国営化にしよう。ランナル、いい考えだよ!」
マックスはそう言って、執務机に戻ると手紙を書き出した。
☆★
結局、太陽が昇る前から王宮にやって来たランナルは四時間ほどマックスと過ごしていた。
時間はもうすぐ八時。早い者がちらほらと出勤してくる時間だ。
(意外と長く掛かったな。けどまぁ、処遇が決まったし仕方ないか。)
マックスと一緒に軽く食事も食べ、正門へと向かう時に正面から声が掛けられた。
「失礼。君は、ランナル殿ではないですか?」
「はい?そうですが…」
「あぁ、申し遅れました。私、クリストフ=レイグラーフと申します。
アウロラとは従兄弟にあたります。」
「!
このように挨拶をさせて頂くのは初めてですね。お初にお目に掛かります。」
「警戒を解いてくれてありがとう。
せっかくここでお会い出来たのだから、差し支えなければ少しお話できないだろうか?」
「私は所用は済みましたから構いませんが、クリストフ様は今から仕事ではないのでしょうか?」
「確かに僕は年上だけど、様、だなんて止めてくれないか?
…あぁ確かに。でもせっかくだし…では少しここで待っていてくれませんか?ちょっと時間をもらってきます。」
「よろしいのですか?」
「ん?どっちに対して?もしかしたら親族になるかもしれないし?どちらかといえば友人になれたら嬉しいなぁ。
今は切羽詰まった案件は無いし、多分大丈夫!すみません、少し待っていて下さい!!」
そう言うと、クリストフは駆けて行ったのだった。
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