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14 親交
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あれから部屋に帰ったアウロラは早速侍女のボエルに今日のあった事を軽い食事を摂りながら話した。
ボエルは、ビリエルとディーサの話の時には自分の事のように憤慨していたが、ランナルの話を聞くや、両手を胸の前で組み目をキラキラさせていた。
「素敵な殿方ですね!
この後お会いするのですよね。服はどうされますか?腕が鳴ります!!」
「ボエル、あとからランナル様のお母様と妹さんもいらっしゃるのよ?」
「まぁ!家族ぐるみで!!
それにイクセル様にも了承を得ていらっしゃるなんて。」
どうしましょう!と行ったり来たりしているボエルを見て、苦笑するアウロラだったが、服装を選んだりしていると三時間はすぐ経ってしまい、慌ててロビーへと向かった。
結局、クリーム色に彩り豊かな小さな花柄のワンピースと先ほど付けたカメオも胸元に付け、髪は両サイドをまとめて後ろで緩く縛った姿に落ち着いたアウロラ。
階段を下りると、先ほどとはまた別の席に座っているランナルを見つけたアウロラだったが、ランナルも気づいたようで手を軽く振ってくれた。
「来てくれてありがとう。慌ただしかったかな。」
そう言って、近くにいた係員に珈琲と、アウロラにも尋ねてくれて紅茶を頼んだ。
「いえ、お誘いいただき嬉しかったです。」
「そ、そう?
あ!えっと、改めて妹を助けてくれてありがとう。さっき部屋で事の顛末を聞いたよ、済まなかったね。」
「とんでもない!
思ったよりも酷い怪我ではなくて良かったです。」
「アウロラ嬢君は…心優しいね。昔も今も変わらない。」
「そんな事ありませんわ。」
「いや…そんな心清らかな君が、どうして…」
「?」
「あ、いや…そもそも、何故ショールバリ侯爵家の彼と…?」
アウロラは、ビリエルと一緒にいた所を助けてもらったし、クリスティーン親子へ汚い言葉を浴びせられていた事もあって説明をする事とした。
「ーーーー…という事だったのです。」
「なるほど。お父様同士が学友で…それは何とも言い難いな。
それで、アウロラ嬢はどうするつもりなの?」
「はい。本当は、一度一緒にいたくらいで相手を見定める事は失礼にあたるとは思っております。けれども、どうにも話も合いませんしその…一緒にいるのも…」
ランナルに自分の気持ちをさらけ出そうとしたが、上手い言葉が見つからず、言葉を濁すとランナルがすかさず苦笑いしながら後をつないだ。
「まぁ、そうだね。あまり一緒に居たい相手ではないよね。
さっきも、自分で身分証を忘れたのに顔パスで通せと職員に詰め寄っていたし。」
「ええ、あの時は助かりました。」
アウロラも、注目も集めてしまうしあの時は本当に困ったのだった。
「じゃあ、奴…ビリエル殿がどうなってもアウロラ嬢は心を痛まないかな?」
「え?」
「いや、クリスティーンと母上がかなりご立腹でね。自分たちだけでなく、アウロラ嬢にも酷い言葉を投げつけていたと。」
「あ、先ほどの事ですね。私よりも、お二人の方が…」
「あのカフェには、うちで育てた林檎が使われた飲み物があってね。それを飲みに、服装も軽装で出掛けたみたいだったんだがそれが良くなかったのか。クリスティーンも、庶民の町娘の設定で出掛けたらしく年相応に対応したのが相手をつけ上がらせたのかと怒っていたよ。」
「まぁ!
…でも、だからって罵っていい理由にはなりませんものね。」
だからクリスティーンはあの場ではしおらしく口数もそれほど多い訳でもなかったのだと思った。ロビーで話していた時とは別人のようであったからだ。
「それに、アウロラ嬢という連れがいたのに、難癖を付けていた女性と去って行ったんだろう?男としてあり得ないと憤慨していた。」
「そうですか…確かに驚きましたが、これで良かったのですわ。」
「ああ、そうだね。俺もこれで遠慮無くいける。」
「え?」
「あ、いや…アウロラ嬢はビリエル殿と交流を続けたいのであれば、とは思ったんだがそうでないのなら…こうやって会う機会がこれからもあるといいと思ったんだがどうかな?」
「…はい、私もそう思います。」
そう問われ、アウロラは顔を赤らめながら答える。
「良かった!」
そう言ってお互い少し恥ずかしさからか気持ちを落ち着かせていると、何やらホテルの入り口の方から大きな声が聞こえてきた。
『おい!もう少しで肩の骨が折れる所だったぞ!謝れ!!』
「…なんだか、聞いた事のある声だが。」
それにランナルは反応し、声を上げる。アウロラも、確かに聞き覚えのある男性の声だと入り口を見遣ると、今度は女性の甲高い声で加勢が入った。どうやら、入り口扉で、ぶつかるぶつからないと難癖を付けているようだ。
『そうよ!どこ見て歩いてるのよ!?私達に道を譲りなさいよ!!』
少し距離もあり、姿こそ見えないが人もそれなりに行き交い賑わうホテルのロビーで、そのように聞こえるとはよほど声を荒げているのだろう、フロントから職員が慌てた様子で駆けつけているのが見えた。
「…もしかしたら、またこのホテルに用があるのかな。ビリエル殿、だよね?」
「違うと思いたいのですが声は似ていましたね。
女性の方も、先ほど一緒に出掛けられたディーサ=ショールバリと言われる、侯爵家のご令嬢の声に似ておりましたが。」
せっかく夕食の時間までゆっくり二人で話そうと思っていたのにと、苦々しい表情でお互い吐き出していると、その声が再び聞こえ、しかも近づいてくるのかはっきりと聞こえてきた。
ボエルは、ビリエルとディーサの話の時には自分の事のように憤慨していたが、ランナルの話を聞くや、両手を胸の前で組み目をキラキラさせていた。
「素敵な殿方ですね!
この後お会いするのですよね。服はどうされますか?腕が鳴ります!!」
「ボエル、あとからランナル様のお母様と妹さんもいらっしゃるのよ?」
「まぁ!家族ぐるみで!!
それにイクセル様にも了承を得ていらっしゃるなんて。」
どうしましょう!と行ったり来たりしているボエルを見て、苦笑するアウロラだったが、服装を選んだりしていると三時間はすぐ経ってしまい、慌ててロビーへと向かった。
結局、クリーム色に彩り豊かな小さな花柄のワンピースと先ほど付けたカメオも胸元に付け、髪は両サイドをまとめて後ろで緩く縛った姿に落ち着いたアウロラ。
階段を下りると、先ほどとはまた別の席に座っているランナルを見つけたアウロラだったが、ランナルも気づいたようで手を軽く振ってくれた。
「来てくれてありがとう。慌ただしかったかな。」
そう言って、近くにいた係員に珈琲と、アウロラにも尋ねてくれて紅茶を頼んだ。
「いえ、お誘いいただき嬉しかったです。」
「そ、そう?
あ!えっと、改めて妹を助けてくれてありがとう。さっき部屋で事の顛末を聞いたよ、済まなかったね。」
「とんでもない!
思ったよりも酷い怪我ではなくて良かったです。」
「アウロラ嬢君は…心優しいね。昔も今も変わらない。」
「そんな事ありませんわ。」
「いや…そんな心清らかな君が、どうして…」
「?」
「あ、いや…そもそも、何故ショールバリ侯爵家の彼と…?」
アウロラは、ビリエルと一緒にいた所を助けてもらったし、クリスティーン親子へ汚い言葉を浴びせられていた事もあって説明をする事とした。
「ーーーー…という事だったのです。」
「なるほど。お父様同士が学友で…それは何とも言い難いな。
それで、アウロラ嬢はどうするつもりなの?」
「はい。本当は、一度一緒にいたくらいで相手を見定める事は失礼にあたるとは思っております。けれども、どうにも話も合いませんしその…一緒にいるのも…」
ランナルに自分の気持ちをさらけ出そうとしたが、上手い言葉が見つからず、言葉を濁すとランナルがすかさず苦笑いしながら後をつないだ。
「まぁ、そうだね。あまり一緒に居たい相手ではないよね。
さっきも、自分で身分証を忘れたのに顔パスで通せと職員に詰め寄っていたし。」
「ええ、あの時は助かりました。」
アウロラも、注目も集めてしまうしあの時は本当に困ったのだった。
「じゃあ、奴…ビリエル殿がどうなってもアウロラ嬢は心を痛まないかな?」
「え?」
「いや、クリスティーンと母上がかなりご立腹でね。自分たちだけでなく、アウロラ嬢にも酷い言葉を投げつけていたと。」
「あ、先ほどの事ですね。私よりも、お二人の方が…」
「あのカフェには、うちで育てた林檎が使われた飲み物があってね。それを飲みに、服装も軽装で出掛けたみたいだったんだがそれが良くなかったのか。クリスティーンも、庶民の町娘の設定で出掛けたらしく年相応に対応したのが相手をつけ上がらせたのかと怒っていたよ。」
「まぁ!
…でも、だからって罵っていい理由にはなりませんものね。」
だからクリスティーンはあの場ではしおらしく口数もそれほど多い訳でもなかったのだと思った。ロビーで話していた時とは別人のようであったからだ。
「それに、アウロラ嬢という連れがいたのに、難癖を付けていた女性と去って行ったんだろう?男としてあり得ないと憤慨していた。」
「そうですか…確かに驚きましたが、これで良かったのですわ。」
「ああ、そうだね。俺もこれで遠慮無くいける。」
「え?」
「あ、いや…アウロラ嬢はビリエル殿と交流を続けたいのであれば、とは思ったんだがそうでないのなら…こうやって会う機会がこれからもあるといいと思ったんだがどうかな?」
「…はい、私もそう思います。」
そう問われ、アウロラは顔を赤らめながら答える。
「良かった!」
そう言ってお互い少し恥ずかしさからか気持ちを落ち着かせていると、何やらホテルの入り口の方から大きな声が聞こえてきた。
『おい!もう少しで肩の骨が折れる所だったぞ!謝れ!!』
「…なんだか、聞いた事のある声だが。」
それにランナルは反応し、声を上げる。アウロラも、確かに聞き覚えのある男性の声だと入り口を見遣ると、今度は女性の甲高い声で加勢が入った。どうやら、入り口扉で、ぶつかるぶつからないと難癖を付けているようだ。
『そうよ!どこ見て歩いてるのよ!?私達に道を譲りなさいよ!!』
少し距離もあり、姿こそ見えないが人もそれなりに行き交い賑わうホテルのロビーで、そのように聞こえるとはよほど声を荒げているのだろう、フロントから職員が慌てた様子で駆けつけているのが見えた。
「…もしかしたら、またこのホテルに用があるのかな。ビリエル殿、だよね?」
「違うと思いたいのですが声は似ていましたね。
女性の方も、先ほど一緒に出掛けられたディーサ=ショールバリと言われる、侯爵家のご令嬢の声に似ておりましたが。」
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