【完結】その令嬢は可憐で清楚な深窓令嬢ではない

まりぃべる

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15 衝撃

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「全く!礼儀がなっとらんやつだったな!ディーサ、大丈夫だったかい?」

「えぇ、ビリエル様。私は大丈夫よ。
 それより、肩は大丈夫?」

「あぁ、心配してくれるの?マイハニー。君が当たらなくて本当によかった!」


 そう言って、ディーサがビリエルの腕に手を絡め、体を寄せ合って歩いているのをアウロラは目にしてしまう。
 あまりの親密さに、口をあんぐりとしないまでも時が止まったかと錯覚するほどアウロラはじっと見てしまった。


(え?さっき会ったばかりよね?いつの間にそんな親密な関係に?
ぶつからずに歩いていられるのが不思議なくらいくっついているわね。足、踏んだりしないのかしら…。)


「あら…あなたまさかさっきビリエル様と一緒にいた方?」


 その視線に気づいたのか、ディーサはアウロラと目が合うとニタリと笑って近寄って来た。


「ん?…あぁ、本当だ!アウロラじゃないか!僕に置いていかれて、こんな所で一人淋しく佇んでいたのかい?」


 アウロラの対面にはランナルが居るのにそれには気づかないのか、ビリエルはそのように言葉を掛けた。


「…いいえ、私は」

「あぁ、せっかく会えたんだ!伝えとくよ!
残念だけどアウロラ、は無かった事にしてくれ。」


 アウロラが話し出そうとした所で、ビリエルは被せるようにそう言って、一度大袈裟に溜息を吐くと再び言葉を繋ぐ。


「はぁー。僕も、ものすごく悩んだんだけどね。どうやら君よりディーサの方が僕に合いそうだ。
 ほら、どうだい?見てよ。僕が用意した服、ピッタリだろう?」


 ビリエルは、隣にいるディーサの背中を支え、見せつけるようにアウロラへと告げる。
 どうやら、汚れた服の替えにと自分が準備したといいたいのだろう。白いワンピースは確かに似合っているといえば似合っているが、それをさも自分の手柄のように言うビリエルにもはやかける言葉も見つからないアウロラ。しかし、それをビリエルは何を勘違いしたのか謝ってきた。


「あぁ、ごめんねアウロラ!そんなに悲しい顔をしないでくれ。女性にそんな顔をさせるなんて罪作りな僕を、どうか許してくれるかい?
 それより、僕はディーサと結婚を前提にお付き合いをしていくからさ。アウロラ、君とは今日で終わりにしよう。」

「まぁ!先ほどのお話は本当だったの?」


 それにディーサはビリエルの顔を覗き込んで食い入るように大きな声で言う。


「あぁ、もちろん!ディーサと結婚出来るならこれほど嬉しい事はないさ!」

「あーん!私も嬉しい!!」

「ディーサ!」

「ビリエル様ぁ!」


 そう言うや、さながら歌劇のように熱い抱擁をこんな人気のある場で繰り広げるものだから、周りの人達もそれを見て囁いたり、遠巻きに見ていく人までいる。
 ディーサとビリエルは、ぎゅっと一つになっていたかと思えば少し身体を緩めるとお互いの顔を見つめてはまた抱き合った。


 アウロラは、そんな光景を見せつけられ呆然としていたが、ランナルが横から冷たく言い放つ。


「失礼。
 お二人が愛を確かめ合っているところ悪いが、一つ訂正する。
 アウロラ嬢は、君と付き合っていたわけではなく友人としてどんな人物か知ろうとしていたのだから、こんな所で宣言しなくてもそちらの女性と今すぐにでも籍を入れて一緒になる事も何ら問題は無いはずだ。」

「な!誰だ!?失礼な!アウロラは僕の事…って、お前……」

「きゃあ!籍を入れるですって!?
 ねぇビリエル様ぁ、だったらうちへ来て下さらない?両親に挨拶をしてほしいの!」

「いや!ディーサ、このいけ好かない奴をギャフンと言わせてから…」

「いやよ、いいじゃない?そんな人…あら、よく見たら随分と男前じゃないの。お兄さん、どなたぁ?」


 と、アウロラの対面に座っていたランナルに気づき顔を覗き込もうとするディーサに、ビリエルはギョッとし、ディーサを制止して声を益々大きくする。


「ディーサ!分かった!行く、行くよ!
でもどうする?夕食食べるんじゃなかった?」

「それはそうだけどぉ…お兄さん素敵…」

「ディーサ?どうしたの?僕と結婚するんでしょ?」

「は!そうだったわ!ビリエル様、してくれるのよね?」

「当たり前だよ、こんな可愛い僕の天使!ディーサ、ほらこんな所もういいから行こう!」

「あーんビリエル様引っ張ったら痛いわぁ!ゆっくり歩いてぇー!」


 と、ビリエルはディーサを引っ張ってレストランの方へと歩いて行ってしまった。


「…行ったか。」

「そうですね。…あの、ありがとうございました。」

「あぁ、なんかどうしても訂正したくてね、済まない。」


 と、未だ声のするレストランの方を気にしながらお互い目を合わせ、どちらからともなく微笑み、アウロラも一言も言い返せなかったがランナルが代弁してくれたと胸が温かくなった。


「嵐のような人達でしたね。」

「そうだな。でもまぁこれで一区切り出来たのか。
 一応ご両親と、イクセル様にも伝えられた方がいい。これでまた、話をひっくり返されてもよくない。
 まぁ、こんなに大勢の証人がいるところで堂々とあんな事をしていたから、大丈夫だとは思うが。」

「あ、はい。ありがとうございます。そうします。」

「それにしても奴…ビリエル殿はなんというか、初恋をそのまま拗らせてしまった感じなのか?白いワンピースをあの女性に着せて、過去を思い出しているのだろうか?」

「!」

「白いワンピースを着ていたのは、フランソン家の…もしかしたら思い出したくないかもしれないがアウロラ嬢の兄のスティーグ殿、だったんだろう?
 それを、ビリエル殿はアウロラ嬢だと思い込んでいた。」

「えっと…気づかれてました?」

「うーん、違和感は何となくね。ああいう場で変わった格好をしている子はたくさんいるからそこまで思わないけど、顔を隠すようにローブを被ってたし訳ありかな?って。
 でも、会話した時に確信してね。」


(!
 そっか…ランナル様があの時助けてくれた方だったのね。)


 あの時、会話したのは隣にいた出場者だけであったし、そう言われたらランナルはあの日の人物に面影があるかもと思った。


「会えて本当に良かった。
 当時イクセル様には、『余計な詮索はするな』と釘を刺されたんだ。」

「ええ!?」

「でも、さっきのあの話で許しが出たみたいだから誘わせてもらったんだよ。」


 さっきのあの話、とはイクセルと話した時だろうと思ったアウロラは、なんだか探してくれていたようで恥ずかしく、でもあの時の人に会えて嬉しくも思った。


「あの時も、助けてくれていたんですね。ありがとうございます。」

「いや。助けられたのは私の方なんだ。
 あの時はちょっと…自分を過信していた時でね。」


 遠い目をしたランナルだったが、すぐにアウロラに視線を戻し、優しい眼差しで微笑んだ。


「今日は母上と妹も一緒だが、次は二人で食事に行きたいと思うが、どうだろう?
 それとも、見られなかった観劇か、弓を当てに行く方がいいかな?」


(観劇だって私も嫌いじゃないけれど、本来男性がする弓当てをしていた事を知っても私を軽視せずに普通に誘ってくれるなんて!)


 そんな誘われ方をするなんてと思ったが、けれども自分の全てを受け入れてくれ偽らなくてもいいのかもしれないとアウロラは胸がポカポカとしていた。
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