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13 再び
「あ!お兄さま!…と、先ほどの!」
それに気づいてランナルは反応した。
「あれ?クリスティーンに母上。ゆっくりしてくるんじゃ無かったのか?」
「それがいろいろあったのよ。
あら、先ほどの方!ちょうどよかったわ!ランナル、この方とお知り合いだったの?」
ついさっき、アウロラがカフェの店先で会った親子だった。聞いていると母上と呼んでいるしどうやらランナルの家族だったのだとアウロラは驚いた。そして、先ほどまでは弱々しい雰囲気を醸し出していた少女が、ハキハキと話している事に目を奪われた。足も、怪我をしているのにも関わらず駆けてきたのだ。
「あー…はい、母上。
やっと自己紹介が出来ました。」
「やっと?…え、まさかこちらの方が?」
「え?お母様、どういう事?お兄様?」
意味深に告げたランナルの言葉に、その母親は先ほどとは違う笑みを浮かべて早口に話す。対してクリスティーンは意味も分からないと困惑の表情を浮かべた。
「あらあら、まぁまぁ!じゃあお邪魔しちゃ悪いわね!
クリスティーン、とりあえず部屋に行きましょ?あとで聞かせてもらいましょうね?」
「え?いやよ!せっかくまた会えたのですもの!ここでお別れなんて!」
「そんな事言わないで、クリスティーン。そうだわ!私もお話はしたいし時間合わせてお食事、ぜひ一緒にさせてもらいましょう?ね?」
そう言うと、母親の方はアウロラへと視線を向ける。話筋を聞き、三人は家族のようだと感じてはいたアウロラだったが、いきなりの事で咄嗟に言葉が出ない。
「え?えっと…」
「母上!勝手に決める癖を直してといつも言っているでしょう!?
とりあえず、今やっとアウロラ嬢と少し話せる機会をいただいたんだから俺達に構わず先に部屋に…ってクリスティーン、怪我を?」
その間に少し足を気にしたクリスティーンに、気づいたランナルがそう尋ねる。
「そうなの!いろいろあったの!!
ねぇ聞いてよお兄様!全くもってムカつく女と男が居たのよ?私が泣き真似しても効かないし、あり得ないわ!潰してもいいでしょ?」
先ほどとは全く違うはつらつとしたクリスティーンの言葉を聞き、アウロラは口も挟めず成り行きを見守っている。ただ、潰してもいい、という物騒な単語を耳にした時、クリスティーンくらいの年齢の子から発っするものではないだろうから聞き間違いだろうと首を傾げながら。
「はぁ!?クリスティーン、話が見えないから答えられないよ。
とりあえず、アウロラ嬢がいるし、あとで部屋に行った時に話を聞くから!」
そうランナルが追い払うようにクリスティーンへと言葉を告げると、クリスティーンは思い出したかのようにアウロラへと顔を向けお礼を告げてから、再び兄へと直談判する。
「アウロラ嬢、ってアウロラというお名前でいらっしゃるの?先ほども申しましたが本当にありがとうございました!
ねぇお兄様、アウロラ様にも関係あるのよ?
仮にもうちと同じく侯爵家って名乗ってるのに、破落戸のように態度が悪くてあいつら、本当に腹立つったら!!」
クリスティーンがアウロラへと視線を向けた所で、さっきと全く態度が違うと、しかし表情もコロコロと変えている様を見て口は悪いが可愛いと思ってしまい、口角を上げたアウロラ。
と、そこへ。
「あら、アウロラじゃない?」
という声がし、アウロラがそちらへと向けば母カリーネを迎えに行った父シーグルドと、カリーネの父イクセルと母デシレアも伴ったカリーネが昨日よりも幾分元気そうに手を振り近寄ってきた。
「あなた歌劇を見に行ったんじゃなかったの?
って、あら?」
声を掛けた所で、向かいに座るランナルと未だ近くで立っている夫人と小さな少女を見て首を傾げるカリーネに、後ろから来たイクセルが言葉を繋いだ。
「おや、これは久しい。ランナル殿と、先代のご夫人ではないですか。」
それに応えるように腰を上げ、挨拶をするランナル。
「イクセル様ご無沙汰しております。そちらは、奥様でしたか。
今は、アウロラ嬢とお話しさせていただいております。
…八年の時を経てですが。」
「ほう…そうか。
アウロラ、何かあれば言いなさい。」
「え?はい。」
ランナルと話をしていたのになぜ突然こちらへと言葉を向けたのかと疑問に感じたが、きっとビリエルと歌劇場へ行っていなかったからだろうと頷く。
「では、我々今日は歌劇場に用があるため残念ですがこれにて失礼します。
アウロラ、私達は遅くなるから好きに時間を過ごしていなさい。
ランナル殿と過ごすのであればあまり遅くならないように。」
そう言って軽く頭を下げ、早々にデシレアの腰に手を添えて引き上げるイクセルに、シーグルドもランナル達に向かって頭下げながらカリーネをエスコートしつつラウンジを抜けて行った。
(結局お祖父様とお祖母様も一緒に来られたのね。
というか、ランナル様はお祖父様と顔見知りなのだわ。)
ステンホルム侯爵家は、ランナルが既に侯爵として継いでいる。それでも一線を退いている祖父と知り合いなんだと感心していたアウロラだったが、いつの間にか言葉を掛けられていたようで慌てて答えた。
「あ、ごめんなさい!もう一度お願いできますか?」
「だからね、アウロラ様!私達お部屋へ戻るの。
後でまた会えたら嬉しいわ!」
「そうね。またお話出来る機会があったら嬉しいわね。例えば今日の夕食でも、ね。宜しければご一緒しましょう?
さ、クリスティーン部屋に行きましょう。」
そう言うと、クリスティーンを伴い客室へと消えていく。
それを見届けるとランナルがアウロラへと声を掛けた。
「母上やクリスティーンから聞いたが、アウロラ嬢もカフェのところにいたんだとか。
あれからずっと外にいたということなら疲れてもいるだろうし、一度着替えなどして少ししたら、また一緒の時間を過ごせたらと思ったんだがどうだろうか?
それとも、日を改めた方がいいかな?」
アウロラは自分が誘われていると気づいたため少し頬が高揚したが、確かに自分も先ほどの話の続きをしたかったため、前のめりになりそうな気持ちを隠すように努めながら答える。
「よろしいのですか?お祖父様もああ言っていましたし、私はどのようにでも。
夕食も、よろしいのであればぜひご一緒させて下さい。」
アウロラは祖父母もこのホテルに来たのなら、観劇をしたあとも時間を両親とともに過ごすだろうとは思ったが、先ほど祖父から自由に過ごせと言われため、せっかく話す機会があるならと思ったのだ。
「ありがとう。
では、三時間ほどあとにまたここでも?
その…母上もクリスティーンも夕食でもと言ってましたが、それより前に少し二人でも話したくて。
先ほどのアウロラ嬢の問いにも答えてませんし。」
「はい。」
「良かった!
じゃあ疲れているのに長く引き止めて済まなかった。部屋まで送ろう…はまだ早いかな?」
「いえ…お願いします。」
人を天秤に掛けるのは良くないとは思ったアウロラだったが、ランナルはビリエルに比べると随分とアウロラの気持ちを尊重してくれると感じたため、心が温かくなるアウロラであった。
それに気づいてランナルは反応した。
「あれ?クリスティーンに母上。ゆっくりしてくるんじゃ無かったのか?」
「それがいろいろあったのよ。
あら、先ほどの方!ちょうどよかったわ!ランナル、この方とお知り合いだったの?」
ついさっき、アウロラがカフェの店先で会った親子だった。聞いていると母上と呼んでいるしどうやらランナルの家族だったのだとアウロラは驚いた。そして、先ほどまでは弱々しい雰囲気を醸し出していた少女が、ハキハキと話している事に目を奪われた。足も、怪我をしているのにも関わらず駆けてきたのだ。
「あー…はい、母上。
やっと自己紹介が出来ました。」
「やっと?…え、まさかこちらの方が?」
「え?お母様、どういう事?お兄様?」
意味深に告げたランナルの言葉に、その母親は先ほどとは違う笑みを浮かべて早口に話す。対してクリスティーンは意味も分からないと困惑の表情を浮かべた。
「あらあら、まぁまぁ!じゃあお邪魔しちゃ悪いわね!
クリスティーン、とりあえず部屋に行きましょ?あとで聞かせてもらいましょうね?」
「え?いやよ!せっかくまた会えたのですもの!ここでお別れなんて!」
「そんな事言わないで、クリスティーン。そうだわ!私もお話はしたいし時間合わせてお食事、ぜひ一緒にさせてもらいましょう?ね?」
そう言うと、母親の方はアウロラへと視線を向ける。話筋を聞き、三人は家族のようだと感じてはいたアウロラだったが、いきなりの事で咄嗟に言葉が出ない。
「え?えっと…」
「母上!勝手に決める癖を直してといつも言っているでしょう!?
とりあえず、今やっとアウロラ嬢と少し話せる機会をいただいたんだから俺達に構わず先に部屋に…ってクリスティーン、怪我を?」
その間に少し足を気にしたクリスティーンに、気づいたランナルがそう尋ねる。
「そうなの!いろいろあったの!!
ねぇ聞いてよお兄様!全くもってムカつく女と男が居たのよ?私が泣き真似しても効かないし、あり得ないわ!潰してもいいでしょ?」
先ほどとは全く違うはつらつとしたクリスティーンの言葉を聞き、アウロラは口も挟めず成り行きを見守っている。ただ、潰してもいい、という物騒な単語を耳にした時、クリスティーンくらいの年齢の子から発っするものではないだろうから聞き間違いだろうと首を傾げながら。
「はぁ!?クリスティーン、話が見えないから答えられないよ。
とりあえず、アウロラ嬢がいるし、あとで部屋に行った時に話を聞くから!」
そうランナルが追い払うようにクリスティーンへと言葉を告げると、クリスティーンは思い出したかのようにアウロラへと顔を向けお礼を告げてから、再び兄へと直談判する。
「アウロラ嬢、ってアウロラというお名前でいらっしゃるの?先ほども申しましたが本当にありがとうございました!
ねぇお兄様、アウロラ様にも関係あるのよ?
仮にもうちと同じく侯爵家って名乗ってるのに、破落戸のように態度が悪くてあいつら、本当に腹立つったら!!」
クリスティーンがアウロラへと視線を向けた所で、さっきと全く態度が違うと、しかし表情もコロコロと変えている様を見て口は悪いが可愛いと思ってしまい、口角を上げたアウロラ。
と、そこへ。
「あら、アウロラじゃない?」
という声がし、アウロラがそちらへと向けば母カリーネを迎えに行った父シーグルドと、カリーネの父イクセルと母デシレアも伴ったカリーネが昨日よりも幾分元気そうに手を振り近寄ってきた。
「あなた歌劇を見に行ったんじゃなかったの?
って、あら?」
声を掛けた所で、向かいに座るランナルと未だ近くで立っている夫人と小さな少女を見て首を傾げるカリーネに、後ろから来たイクセルが言葉を繋いだ。
「おや、これは久しい。ランナル殿と、先代のご夫人ではないですか。」
それに応えるように腰を上げ、挨拶をするランナル。
「イクセル様ご無沙汰しております。そちらは、奥様でしたか。
今は、アウロラ嬢とお話しさせていただいております。
…八年の時を経てですが。」
「ほう…そうか。
アウロラ、何かあれば言いなさい。」
「え?はい。」
ランナルと話をしていたのになぜ突然こちらへと言葉を向けたのかと疑問に感じたが、きっとビリエルと歌劇場へ行っていなかったからだろうと頷く。
「では、我々今日は歌劇場に用があるため残念ですがこれにて失礼します。
アウロラ、私達は遅くなるから好きに時間を過ごしていなさい。
ランナル殿と過ごすのであればあまり遅くならないように。」
そう言って軽く頭を下げ、早々にデシレアの腰に手を添えて引き上げるイクセルに、シーグルドもランナル達に向かって頭下げながらカリーネをエスコートしつつラウンジを抜けて行った。
(結局お祖父様とお祖母様も一緒に来られたのね。
というか、ランナル様はお祖父様と顔見知りなのだわ。)
ステンホルム侯爵家は、ランナルが既に侯爵として継いでいる。それでも一線を退いている祖父と知り合いなんだと感心していたアウロラだったが、いつの間にか言葉を掛けられていたようで慌てて答えた。
「あ、ごめんなさい!もう一度お願いできますか?」
「だからね、アウロラ様!私達お部屋へ戻るの。
後でまた会えたら嬉しいわ!」
「そうね。またお話出来る機会があったら嬉しいわね。例えば今日の夕食でも、ね。宜しければご一緒しましょう?
さ、クリスティーン部屋に行きましょう。」
そう言うと、クリスティーンを伴い客室へと消えていく。
それを見届けるとランナルがアウロラへと声を掛けた。
「母上やクリスティーンから聞いたが、アウロラ嬢もカフェのところにいたんだとか。
あれからずっと外にいたということなら疲れてもいるだろうし、一度着替えなどして少ししたら、また一緒の時間を過ごせたらと思ったんだがどうだろうか?
それとも、日を改めた方がいいかな?」
アウロラは自分が誘われていると気づいたため少し頬が高揚したが、確かに自分も先ほどの話の続きをしたかったため、前のめりになりそうな気持ちを隠すように努めながら答える。
「よろしいのですか?お祖父様もああ言っていましたし、私はどのようにでも。
夕食も、よろしいのであればぜひご一緒させて下さい。」
アウロラは祖父母もこのホテルに来たのなら、観劇をしたあとも時間を両親とともに過ごすだろうとは思ったが、先ほど祖父から自由に過ごせと言われため、せっかく話す機会があるならと思ったのだ。
「ありがとう。
では、三時間ほどあとにまたここでも?
その…母上もクリスティーンも夕食でもと言ってましたが、それより前に少し二人でも話したくて。
先ほどのアウロラ嬢の問いにも答えてませんし。」
「はい。」
「良かった!
じゃあ疲れているのに長く引き止めて済まなかった。部屋まで送ろう…はまだ早いかな?」
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本編完結済み。番外編を不定期更新中。