【完結】いつも微笑んでいる侯爵様とニコリともしない伯爵令嬢のお話

まりぃべる

文字の大きさ
26 / 31

26. 結婚式

しおりを挟む
 今日は待ちに待った、アルフォンシーナとヴァルフレードの結婚式の日である。




 アルフォンシーナは、いろいろと考えてしまい昨夜なかなか眠る事が出来なかった。


(いろいろあったけれど、結婚するのね。私には縁遠いものだと思っていたけれど。)


 アルフォンシーナは、長い事笑わなかった。幼い頃に言われた言葉に傷つき、自分の笑い顔はそんなにも醜いものなのかと思ったからだった。
 それからは、笑わないように意識していた。

 舞踏会などでも、笑う事をしないからダンスも断っていた。

 それが、いつの間にか笑えるようになり好きだと思える人と結婚する事になったのだ。


(人生って、どうなるのか分からないものだわ。)




☆★

 結婚式は、ウディネの領内にある一番家から近い教会で挙げる事にした。ウディネ領には、王城を守る為に教会が幾つもあるのだ。他の領地に比べ、かなりたくさんある。だが、両親も挙げたこの住んでいる所から一番近い教会にしたのだ。
 招待客は親族だけである。




「綺麗ね、アルフォンシーナ。」

「本当に!素晴らしいわ!」

「ええ。綺麗!
…淋しくなるわね。」


 控室には、ビオンダ達侍女が忙しなく動いている中、カンディダとブルニルタとベルティーナが準備を見に来ていた。

 アルフォンシーナは、純白の足首まで隠れるドレスを身に纏っていた。


「ありがとう。
お母様、また遊びに来ますから。」

「分かっているわ。結婚はおめでたい事で、幸せになりに旅立つのだものね。でも、母親として淋しいのよ。」

「お母様…。」

「いやだわ、お母様ったら!私達の時より泣いてない?」

「本当ね、カンディダお姉様。そんな気がするわ。」

「いえね、だって三人目よ?みんなうちから居なくなってしまうのだもの。ただでさえ、うちって昔の王城だったから広いじゃない?地震で壊れた箇所があるとしても、それでも広いもの。アルフォンシーナまで居なくなったら淋しいわ。」

「じゃあ、私達と交換する?住む場所。」

「あら、良いわね!ブルニルタ。サムエレくん達がいいならうちの方に越してきてもいいのよ?」

「ふふふ。そうねぇ、お父様にも聞いてみましょうよ。」


 コンコンコン。


 家族で話していると、扉が叩かれる。ビオンダが確認をするとバジーリオだった。

「どうかな?私の可愛い娘よ。あぁ…!」


 入ってくるなり、アルフォンシーナの姿を見て固まるバジーリオ。娘達にからかわれたバジーリオは、やっと言葉を発した。


「済まない…アルフォンシーナがあまりにも綺麗でね。ベルティーナとの結婚式を思い出したよ。」

「あら!嬉しいわ。でも、アルフォンシーナに言葉を掛けてあげて下さる?」


 ベルティーナが照れながらそうバジーリオへと催促をした。


「あぁ、もちろんだよ。アルフォンシーナ、大きくなったね。そしてとても綺麗だよ。ヴァルフレードと幸せになりなさい。」

「ええ、お父様。ありがとうございます。お父様とお母様に負けないくらい、幸せな夫婦になってみせますわね!」

「あら、私とベルトルドには勝てないわよ?」

「そんな事ないわよ、私とサムエレには勝てないから!」


 そう言って家族みんなで笑った後、バジーリオが促した。


「さぁ、行こうアルフォンシーナ。」

「はい。」


 アルフォンシーナは、バジーリオの腕に手を添える。
 部屋を出ると、赤い絨毯が廊下に敷いてあり、それを進むとヴァルフレードや親族が待つ、礼拝堂に続いている。

 二人はゆっくりと進んで行った。
 他の三人も、礼拝堂へと進んだ。




「娘をよろしく頼むよ。」


 ヴァルフレードの所まで来たバジーリオは、そう言ってアルフォンシーナを託し、自身の席へと向かう。
 アルフォンシーナは、ベール越しではあるがヴァルフレードに視線を向けてにっこりと笑った。


「アルフォンシーナ、おいで。」

「はい!」


 ヴァルフレードが少し引き寄せて隣に立たせ、祭壇の奥にいる神父へと向き合うと、神父は一つ頷いてから、式を始めた。


「ヴァルフレード=アンドレイニ。あなたは、隣にいるアルフォンシーナ=ソルディーニを命尽きるまで愛し、互いに尊重し合い、苦しい時も共に乗り越えると誓いますか?」

「はい、誓います。」

「アルフォンシーナ=ソルディーニ。あなたは、隣にいるヴァルフレード=アンドレイニを命尽きるまで愛し、互いに尊重し合い、苦しい時も共に乗り越えると誓いますか?」

「はい、誓います。」

「それでは、誓いの証として、指輪を互いに付けて下さい。」


 ヴァルフレードは、祭壇に置いてある指輪の一つをゆっくりと取り、アルフォンシーナの左手をそっと触れ、薬指に嵌めた。
 アルフォンシーナも、もう一つの指輪をヴァルフレードへと嵌める。
 それを確認すると、神父は一つ咳払いをしてから言葉を続ける。


「では、誓いの証として、キスをお願いします。」


 ヴァルフレードは、うつむいているアルフォンシーナのベールを頭上へと上げ、アルフォンシーナの顎を優しく持って上を向かせる。


「アルフォンシーナ。愛してるよ。」


 そう呟いたヴァルフレードは、顔を赤くするアルフォンシーナへ優しく触れるだけのくちづけをした。


「これより、二人は夫婦となりました。神は二人に祝福を与えるでしょう。皆様も、新しい夫婦にどうぞ祝福を。」


 そう言った神父は拍手をする。それに合わせて、参列者も二人に心を込めて拍手を送った。


「ありがとう!ありがとうございます!」


 ヴァルフレードは周りの人達へ向かってそう言いながら、赤い絨毯の上をアルフォンシーナの手を添えて歩き出す。
 アルフォンシーナも弾けんばかりの笑顔を向けて、ヴァルフレードに連れられて歩いて行った。



 教会の外に出たヴァルフレードとアルフォンシーナは、親族の皆が帰るのを見送ろうと二人寄り添っていた。


「アルフォンシーナ。今日から夫婦だよ。嬉しい。やっとだよ。」

「フフフ。そう言ってくれてありがとう。私も、嬉しいわ。」


 二人して、皆が出てくるまでの短い間も仲良く話している。


「ああ幸せだよ、同じ家に帰れるのだからね。
帰ってからも、まだまだアルフォンシーナを楽しませるからね。」

「ええ…え?」


 アルフォンシーナは、まだ何かあったかしらと首を傾げる。


「二人きりの時間に決まってるだろう?濃厚な時間にするよ。」


(濃厚……?そうね!確かにヴァルフレードと話す時間は楽しいもの!)


「ええ、楽しみね!」


 アルフォンシーナは、侯爵家の屋敷に帰ってからもヴァルフレードとこれからは時間を気にしないで話が出来ると、ヴァルフレードが想像している事とは違う事を思ってワクワクとしていた。





しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

割込み王女に祝福を(婚約解消いただきました。ありがとうございました)

久留美眞理
恋愛
 没落貴族の令嬢ベアトリックスは、父を亡くした後、母の再婚相手のブライトストーン子爵の養女となった。この義父の借金を返済するために、義父によって新興成金の息子エドワードとの縁談を画策されてしまう。家門を救い、母を守るため、彼女はこの結婚を受け入れる決意をし、エドワードと婚約が成立した。ところが、王宮の茶会で会った王家の第三王女が、エドワードにひと目惚れ、ベアトリックスは婚約を解消されてしまった。借金を肩代わりしてもらえたうえ、婚約破棄の慰謝料まで貰い、意に添わぬ結婚をしなくてよくなったベアトリックスはしてやったりと喜ぶのだが・・・次に現れた求婚者はイトコで軍人のレイモンド。二人は婚約したが、無事に結婚できるのか?それともまた一波乱あるのか?ベアトリックスの幸福までの道のりを描いた作品 今度の婚約は無事に結婚というゴールにたどり着けるのか、それとも障害が立ちはだかるのか?ベアトリックスがつかむ幸福とは?

殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!

さら
恋愛
 王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。  ――でも、リリアナは泣き崩れなかった。  「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」  庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。  「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」  絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。  「俺は、君を守るために剣を振るう」  寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。  灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜

白川
恋愛
病弱に生まれてきたことで数多くのことを諦めてきたアイリスは、無慈悲と噂される騎士イザークの元に政略結婚で嫁ぐこととなる。 たとえ私のことを愛してくださらなくても、この世に生まれたのだから生き抜くのよ────。 そう意気込んで嫁いだが、果たして本当のイザークは…? 傷ついた不器用な二人がすれ違いながらも恋をして、溺愛されるまでのお話。

何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました

海咲雪
恋愛
「ロイド様、今回も愛しては下さらないのですね」 「聖女」と呼ばれている私の妹リアーナ・フィオールの能力は、「モノの時間を戻せる」というもの。 姉の私ティアナ・フィオールには、何の能力もない・・・そう皆に思われている。 しかし、実際は違う。 私の能力は、「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」。 つまり、過去にのみタイムリープ出来るのだ。 その能力を振り絞って、最後に10年前に戻った。 今度は婚約者の愛を求めずに、自分自身の幸せを掴むために。 「ティアナ、何度も言うが私は君の妹には興味がない。私が興味があるのは、君だけだ」 「ティアナ、いつまでも愛しているよ」 「君は私の秘密など知らなくていい」 何故、急に私を愛するのですか? 【登場人物】 ティアナ・フィオール・・・フィオール公爵家の長女。リアーナの姉。「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」能力を持つが六回目のタイムリープで全ての力を使い切る。 ロイド・エルホルム・・・ヴィルナード国の第一王子。能力は「---------------」。 リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。 ヴィーク・アルレイド・・・アルレイド公爵家の長男。ティアナに自身の能力を明かす。しかし、実の能力は・・・?

遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした

おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。 真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。 ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。 「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」 「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」 「…今度は、ちゃんと言葉にするから」

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

処理中です...