【完結】周りの友人達が結婚すると言って町を去って行く中、鉱山へ働くために町を出た令嬢は幸せを掴む

まりぃべる

文字の大きさ
14 / 27

14. 不慮の事故からの出会い

しおりを挟む
「あーよく寝た!
じゃ、おれ、新しい作業場で仕事だから!」

「はあ?」
「え?」


 もう少しで午後の作業時間となる頃、グイドがジャンパオロを起こして、作業場へと移動しようとした時にジャンパオロは、そういきなり言ったので、グイドは何を言っているんだと細めた目でジャンパオロを見つめる。


「いやー、あんまり言うなってチーロ採掘長に言われたから詳しくはいえないんだけどよ、さっきいろいろと話して作業する場所が変わったんだ。終わったら、また食堂にくるからよ、またそん時にな!」

「ちょちょちょちょっと待って下さい!どーいう事か説明が足りませんよ!」

「だーかーら!」


 グイドはいつもの澄ました表情とは打って変わって今日は再び焦りを見せた表情でジャンパオロに詰め寄り、顔をグイッと近づけて言うので、ジャンパオロは面倒そうな顔をしながらグイドの耳元で何かボソボソと言うと、グイドの背中をポンポンと叩き、いつもとは違う逆の出口へとジャンパオロは向かった。


「そ…本当に?」


 グイドは呆然と突っ立って、ジャンパオロの後を目で追いながら呟いた。その姿を見て、アレッシアは何と声を掛けようかと迷いながら遠慮がちに声を掛ける。


「えっと…グイドさん。もし心配だったら、ついて行ったら?作業場を変更きてもらえるかもしれないわ。」


 それを聞いたグイドは、アレッシアに視線を合わせたあと、頭を振ってから言葉を発した。


「いえ…ジャンパオロを信じます。すみません、遅れるといけませんね、作業場へと向かいましょう。」


 グイドは気持ちを切り替えると、アレッシアへとそう言って歩き出した。








☆★

「うわー!」

「こらー!何やってんだ!?」


 アレッシアは相変わらず土壁をスコップで掘り進めていた時、後ろで台車に掘り出した土を乗せていたグイドが、乗せ終わって台車を運び出そうとした時に体制を崩したのか盛大に横に倒れ込むように転んだ。


「おーい、大丈夫か!?」

「おい、おーい!!」


(え?何が起こったの?)


 後ろでパオロや他の人達が叫ぶそのような声が聞こえたのでアレッシアが振り返ると、グイドが横向きに地面に倒れていた。


「グイドさん!?大丈夫?」


(大変だわ!)


「おい誰か、先生を呼んで来てくれ!食堂かどっかにいるから!」


 と、そのようにパオロが周りに集まってきた人だかりに向かって言ったので、アレッシアは呼びに行こうと走り出した。





☆★

(大丈夫よね?グイドさん…)


 そう思いながらアレッシアは食堂にたどり着くと、息を整えながら、先ほどとは打って変わってガランとした人気のない食堂で先生と言われる人がいないか見渡して探してみる。確か、以前白衣を着ていた人を見掛けたがその人の事かもしれないと思った。

 と、こちらからは顔が見えないが一人椅子に座っている人が確認出来たアレッシアは、その人に向かって再度駆け出し、声を掛ける。


「あの!すみません、〝先生〟知りませんか?」

「ん?」


 振り向いたその人は、真っ黒い髪で瞳は透き通るように青く、とても整った顔をしていた。


(綺麗な顔……)


 アレッシアは思わずみとれてしまい、その次の言葉がすぐには出て来なかった。


「あれ?…どうした?」

「あ!あ、あの!怪我人が出たんです!助けて下さい!」


 正確には、怪我人が出たので先生医師をつれて行かないといけなかったのだが、アレッシアは焦りのあまり目の前の人に助けを求めてしまった。


「怪我人?それはいけない。どこ?一緒に行こう。」


 立ち上がると背がアレッシアよりも頭三つほども高いその青年は、アレッシアに案内するように促す。
ホッとしたアレッシアはその人と一緒に元来た道を急ぎ足で戻った。


(この人も先生なのかしら。でも、これでグイドさんも大丈夫よね?)






「あちらです!」


 パオロや他の発掘作業人が未だグイドを取り囲んで居るのが見えた。


「おい、どうした?」


 黒髪の青年はそのようにパオロに声を掛ける。


「え?あれ?どうして…!」

「それはいい。パオロ、状況は?」

「はい。彼が移動しようとして倒れたようで…」

「ふむ…グイド?おい、大丈夫か?…まぁいい。とりあえず救護室へ連れて行こう。」

「承知いたしました!…おい、お前!」


 パオロがそう言い、体格の大きな人物に声を掛けるとその人物はグイドを軽々と横抱きに抱え、パオロが先導して連れて行く。


「他の奴らは通常通り作業を再会しとけー!」


 と声を掛けてその場を去る。


「大丈夫かな…」


 アレッシアもついて行こうとは思ったが、何も出来る事はないからと作業を再開する。が、頭の中はグイドがどうなったかが気になり、先ほどよりも作業の手が緩やかになってしまう。


(ぐったりとしていたよね…動かなかったよね……あーだめだわ!暗くなっては!集中しなければ私も怪我したら大変だもの。)


 頭を二度ほど左右に振って意識を変えると、アレッシアはスコップを持つ手に力を入れた。





「おーし、そろそろ昼休憩だ!お疲れー!」


 いつの間にかパオロが帰ってきたようで、パオロが皆にそう声を掛けた。
 作業場の人々はみな、荷物をそれぞれ所定の位置に適当に置き、食堂へと向かう。


「パオロさん!」

「あ?」

「あの、グイドさんはどうですか?」

「あぁ…彼ね、大丈夫。でもまぁ大事を取って別室で休んでいるから、お前さんも心配だろうが今日の所は自分の事をしっかりやってくれな。」


 そう言ってアレッシアの肩をポンと叩くと、そこから移動していった。


(そっか…大丈夫なら良かった。)


 アレッシアもパオロの後ろ姿を見ながらそのように考えつつ、食堂へ向かう。






☆★

 食堂についたアレッシアは、食事を配るカウンターへ行ったあと、どこに座ろうかと周りをキョロキョロと見渡す。と、アレッシアに向かってスタスタと歩いてくる人物がいた。


(あ!)


 それに気づいたアレッシアは視線をそちらに向ける。黒髪で、背の高い先ほどの男性であった。


「いたいた。アレッシア、一緒に食べようか。おいで。」


 そう言うと、その人はアレッシアが両手で持っていたお盆をさりげなく取って運んでいく。


「あ、ありがとうございます。」


 アレッシアは思わずそう言うと、その人はちらりとアレッシアの方を振り向いて少し口角を上げた。


「さ、どうぞ。」


 アレッシアのお盆を向かいに置き、その人はすでに置かれていた食べ物が乗ったお盆がある席に座る。


「アレッシアは、グイドの事が気になるかと思ってね。さ、とりあえずは食べよう。」


 そう言うと、その人は目の前にある食べ物に感謝の言葉を述べてから食べ始めた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】手の届かない桃色の果実と言われた少女は、廃れた場所を住処とさせられました。

まりぃべる
恋愛
アンネッタは、この国では珍しい桃色の髪をしている。 幼い頃母親に待っててねと言われたがいつまでたっても姿を現さず、泣いているところを拾われ、町の食堂につれていかれる。そして、その食堂を営む大将と女将と生活する事になり、そこの常連客達にもよくしてもらい、町の皆にアンネッタは育てられたようなものだった。 境遇も相まってか、幼い頃より周りの人達にとても可愛がられていた。 少し成長すると、偶然にも貴族の目に留まり養子に入る事となった。 平民だった時からは考えられないほどの裕福な生活を送る事で、アンネッタはだんだんと贅沢を覚えていく。 しかしあるとき、問題に巻き込まれてしまう。 責任を取らされる事となったアンネッタは、追放という形で国の端にある、廃れた場所でその後の生涯を送る事となる。 そんなお話。 ☆『王道』ではなく、まりぃべるの世界観です。それを楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界と似ている名前、地名、などがありますが、関係ありません。 また、現実世界と似たような単語や言葉があっても、若干言い回しや意味が違う場合があります。

【完結】溺愛される意味が分かりません!?

もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢 ルルーシュア=メライーブス 王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。 学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。 趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。 有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。 正直、意味が分からない。 さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか? ☆カダール王国シリーズ 短編☆

義妹がやらかして申し訳ありません!

荒瀬ヤヒロ
恋愛
公爵令息エリオットはある日、男爵家の義姉妹の会話を耳にする。 何かを企んでいるらしい義妹。義妹をたしなめる義姉。 何をやらかすつもりか知らないが、泳がせてみて楽しもうと考えるが、男爵家の義妹は誰も予想できなかった行動に出て――― 義妹の脅迫!義姉の土下座!そして冴え渡るタックル! 果たしてエリオットは王太子とその婚約者、そして義妹を諫めようとする男爵令嬢を守ることができるのか?

【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません

Rohdea
恋愛
──愛されない契約の花嫁だったはずなのに、何かがおかしい。 家の借金返済を肩代わりして貰った代わりに “お飾りの妻が必要だ” という謎の要求を受ける事になったロンディネ子爵家の姉妹。 ワガママな妹、シルヴィが泣いて嫌がった為、必然的に自分が嫁ぐ事に決まってしまった姉のミルフィ。 そんなミルフィの嫁ぎ先は、 社交界でも声を聞いた人が殆どいないと言うくらい無口と噂されるロイター侯爵家の嫡男、アドルフォ様。 ……お飾りの妻という存在らしいので、愛される事は無い。 更には、用済みになったらポイ捨てされてしまうに違いない! そんな覚悟で嫁いだのに、 旦那様となったアドルフォ様は確かに無口だったけど───…… 一方、ミルフィのものを何でも欲しがる妹のシルヴィは……

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

【完結】今更、好きだと言われても困ります……不仲な幼馴染が夫になりまして!

Rohdea
恋愛
──私の事を嫌いだと最初に言ったのはあなたなのに! 婚約者の王子からある日突然、婚約破棄をされてしまった、 侯爵令嬢のオリヴィア。 次の嫁ぎ先なんて絶対に見つからないと思っていたのに、何故かすぐに婚約の話が舞い込んで来て、 あれよあれよとそのまま結婚する事に…… しかし、なんとその結婚相手は、ある日を境に突然冷たくされ、そのまま疎遠になっていた不仲な幼馴染の侯爵令息ヒューズだった。 「俺はお前を愛してなどいない!」 「そんな事は昔から知っているわ!」 しかし、初夜でそう宣言したはずのヒューズの様子は何故かどんどんおかしくなっていく…… そして、婚約者だった王子の様子も……?

【完結】花に祈る少女

まりぃべる
恋愛
花祈り。それは、ある特別な血筋の者が、(異国ではいわゆる花言葉と言われる)想いに適した花を持って祈ると、その花の力を増幅させる事が出来ると言われている。 そんな花祈りが出来る、ウプサラ国の、ある花祈りの幼い頃から、結婚するまでのお話。 ☆現実世界にも似たような名前、地域、単語、言葉などがありますが関係がありません。 ☆花言葉が書かれていますが、調べた資料によって若干違っていました。なので、少し表現を変えてあるものもあります。 また、花束が出てきますが、その花は現実世界で使わない・合わないものもあるかもしれません。 違うと思われた場合は、現実世界とは違うまりぃべるの世界と思ってお楽しみ下さい。 ☆まりぃべるの世界観です。ちょっと変わった、一般的ではないまりぃべるの世界観を楽しんでいただけると幸いです。 その為、設定や世界観が緩い、変わっているとは思いますが、まったりと楽しんでいただける事を願っています。 ☆話は完結出来ていますので、随時更新していきます。全41話です。 ★エールを送って下さった方、ありがとうございます!!お礼が言えないのでこちらにて失礼します、とても嬉しいです。

『婚約破棄された聖女リリアナの庭には、ちょっと変わった来訪者しか来ません。』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
王都から少し離れた小高い丘の上。 そこには、聖女リリアナの庭と呼ばれる不思議な場所がある。 ──けれど、誰もがたどり着けるわけではない。 恋するルミナ五歳、夢みるルーナ三歳。 ふたりはリリアナの庭で、今日もやさしい魔法を育てています。 この庭に来られるのは、心がちょっぴりさびしい人だけ。 まほうに傷ついた王子さま、眠ることでしか気持ちを伝えられない子、 そして──ほんとうは泣きたかった小さな精霊たち。 お姉ちゃんのルミナは、花を咲かせる明るい音楽のまほうつかい。 ちょっとだけ背伸びして、だいすきな人に恋をしています。 妹のルーナは、ねむねむ魔法で、夢の中を旅するやさしい子。 ときどき、だれかの心のなかで、静かに花を咲かせます。 ふたりのまほうは、まだ小さくて、でもあたたかい。 「だいすきって気持ちは、  きっと一番すてきなまほうなの──!」 風がふくたびに、花がひらき、恋がそっと実る。 これは、リリアナの庭で育つ、 小さなまほうつかいたちの恋と夢の物語です。

処理中です...