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第2章 図書館での冒険
第12話 とじられた扉と記憶の迷宮[4]
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薄い紫色のカバー。
表紙には、小さな字でこう書かれていた。
【なつみへ
わたしの大好きな“ゆうしゃ”へ
このノートを見つけたら、もう一度、笑ってください】
震える指先でページをめくる。
そこには、お姉ちゃん――ほのかの文字で綴られた日々の記録と、妹への手紙が残されていた。
【なつみへ
このノートを見つけたってことは、
あなたはまた、“ゆうしゃ”になろうとしてるんだね。
そのときが来たんだね。】
震える手で、ページをめくる。
そこには、お姉ちゃんとふたりで遊んだ「冒険」の記録が綴られていた。
木の杖をつくって、一緒に迷宮を探索した日のこと。
なつみが泣いたとき、「だいじょうぶ。あなたは“ゆうしゃ”だから」と言ってくれた日のこと。
なつみの好きなもの、ふたりで遊んだ冒険ごっこ、困ったときの対応マニュアルまで書いてあった。
どのページも、涙があふれて読めなくなりそうだった。
けれど、なつみは必死に目を見開いたまま、最後のページまで読みきった。
最後の行だけは、ふるえるような字でこう書かれていた。
【あなたがまた、なにかを探したくなったら
このとびらを開けてね。
そしたら、きっと“まほうつかい”が一緒にいてくれる。
その子は、きっとあなたを見てるから。
――なつみへ だいすきだよ お姉ちゃんより】
ノートを閉じたとき、なつみの目から、一筋の涙がこぼれた。
「……お姉ちゃん」
なつみはつぶやき、そっと目を閉じた。
そらたは、なつみの隣に立ったまま、何も言わなかった。
ただ、その背中をそっと支えるように、近くに立ち続けた。
「……お姉ちゃん……わたし、がんばるね」
「(ほのかさん、なっちゃんがここに来るとわかってたんだ―――)」
今はもういない―――ほのかがなぜこのノートをここに隠したのかそらたは理解できた気がしていた。
「……そらた」
「ん?」
「わたしね、やっと“まほう”を見つけた気がする」
そらたは、やわらかく笑った。
「うん、ぼくも。……ゆうしゃと、まほうつかいの冒険、だね」
図書館の古い資料室。
それは、たしかに現実に存在していた。
だけど、ふたりにとっては、まぎれもなく“まほうのとびら”だった。
大人にはただの古い扉でも、ふたりの心のなかでは、それは大切な約束の場所であり、絆の記憶が宿る扉だった。
図書館を出たあと、ふたりは並んで歩いた。
夏の日差しはまだ強く、空はどこまでも高かった。
なつみの栗色のポニーテールが、風にそよいでいた。
スカートの下に履いたスパッツが、元気な足取りを軽やかに見せる。
そらたは黒髪をくしゃりと指でいじりながら、眼鏡を直し、ハーフパンツのポケットに手を突っ込んで、言った。
「なっちゃん。次の冒険、どこに行く?」
なつみは小さく息を吸い、まっすぐ前を見据えた。
「――今度は、“ほんとうのしるし”を探しに行くよ」
その声は、かつての“ゆうしゃ”のものではなかった。
これは、きっと―――新しい冒険の、はじまり。
表紙には、小さな字でこう書かれていた。
【なつみへ
わたしの大好きな“ゆうしゃ”へ
このノートを見つけたら、もう一度、笑ってください】
震える指先でページをめくる。
そこには、お姉ちゃん――ほのかの文字で綴られた日々の記録と、妹への手紙が残されていた。
【なつみへ
このノートを見つけたってことは、
あなたはまた、“ゆうしゃ”になろうとしてるんだね。
そのときが来たんだね。】
震える手で、ページをめくる。
そこには、お姉ちゃんとふたりで遊んだ「冒険」の記録が綴られていた。
木の杖をつくって、一緒に迷宮を探索した日のこと。
なつみが泣いたとき、「だいじょうぶ。あなたは“ゆうしゃ”だから」と言ってくれた日のこと。
なつみの好きなもの、ふたりで遊んだ冒険ごっこ、困ったときの対応マニュアルまで書いてあった。
どのページも、涙があふれて読めなくなりそうだった。
けれど、なつみは必死に目を見開いたまま、最後のページまで読みきった。
最後の行だけは、ふるえるような字でこう書かれていた。
【あなたがまた、なにかを探したくなったら
このとびらを開けてね。
そしたら、きっと“まほうつかい”が一緒にいてくれる。
その子は、きっとあなたを見てるから。
――なつみへ だいすきだよ お姉ちゃんより】
ノートを閉じたとき、なつみの目から、一筋の涙がこぼれた。
「……お姉ちゃん」
なつみはつぶやき、そっと目を閉じた。
そらたは、なつみの隣に立ったまま、何も言わなかった。
ただ、その背中をそっと支えるように、近くに立ち続けた。
「……お姉ちゃん……わたし、がんばるね」
「(ほのかさん、なっちゃんがここに来るとわかってたんだ―――)」
今はもういない―――ほのかがなぜこのノートをここに隠したのかそらたは理解できた気がしていた。
「……そらた」
「ん?」
「わたしね、やっと“まほう”を見つけた気がする」
そらたは、やわらかく笑った。
「うん、ぼくも。……ゆうしゃと、まほうつかいの冒険、だね」
図書館の古い資料室。
それは、たしかに現実に存在していた。
だけど、ふたりにとっては、まぎれもなく“まほうのとびら”だった。
大人にはただの古い扉でも、ふたりの心のなかでは、それは大切な約束の場所であり、絆の記憶が宿る扉だった。
図書館を出たあと、ふたりは並んで歩いた。
夏の日差しはまだ強く、空はどこまでも高かった。
なつみの栗色のポニーテールが、風にそよいでいた。
スカートの下に履いたスパッツが、元気な足取りを軽やかに見せる。
そらたは黒髪をくしゃりと指でいじりながら、眼鏡を直し、ハーフパンツのポケットに手を突っ込んで、言った。
「なっちゃん。次の冒険、どこに行く?」
なつみは小さく息を吸い、まっすぐ前を見据えた。
「――今度は、“ほんとうのしるし”を探しに行くよ」
その声は、かつての“ゆうしゃ”のものではなかった。
これは、きっと―――新しい冒険の、はじまり。
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