ゆうしゃの夏、まほうつかいの空

えんびあゆ

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第3章 ゆうしゃのしるしを巡る冒険

第13話 秘密の地図とゆうしゃのしるし[1]

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図書館を出たのは、日が傾きかけた夕方だった。

空はオレンジ色に染まり、雲の端が金色に光っている。
夕陽はもうすぐ街並みに隠れようとしていた。
蝉の声がかすれはじめて、代わりに虫の声が、静かに耳に届くようになっていた。

なつみはポニーテールの髪をひとつ結び直して、静かに歩きはじめた。
栗色の髪が夕陽を受けて、やわらかく光っている。
紺色のミニスカートの下に履いた黒いスパッツが、歩くたびにリズムを刻み、その足取りに、迷いはなかった。

そのすぐ隣を、そらたが歩く。
黒髪は少し寝ぐせの名残を残し、眼鏡の奥の目がやさしくなつみを見守っている。
Tシャツの裾を軽く直しながら、ハーフパンツのポケットに片手を入れて、時折、小さな石を蹴りながら歩いていた。

ふたりの間に、言葉はなかった。
けれど、沈黙は重くなかった。

言葉にしなくても伝わる気持ちが、たしかにあった。
あの資料室で見つけたノート。お姉ちゃん――ほのかが残した言葉。
それを読みきったなつみの横顔が、少しだけ強く、少しだけ大人びて見えた。

「そらた」

なつみがぽつりとつぶやいた。

「ん?」
「このノートの、最後のページ……あの部分」

なつみは胸元から、大切に抱えていた紫色のノートを取り出した。
もうページは何度も開かれていて、角がほんの少し丸くなっていた。

そらたが歩みを止める。
なつみも足を止め、ページをそっと開いた。
夕陽の光の中で、ページの文字がきらめいて見えた。

【あなたがまた、なにかを探したくなったら
このとびらを開けてね。
そしたら、きっと“まほうつかい”が一緒にいてくれる。
その子は、きっとあなたを見てるから。】

その下に、小さな文字で、もうひとつの言葉が続いていた。

【――なつみへ だいすきだよ お姉ちゃんより】

「……やっぱり、お姉ちゃんは、ぜんぶ分かってたんだね」

なつみの声が、ふるえなかった。
それは、あの図書館で流した涙が、心の奥にやさしく染みこんで、少しだけ強くなれた証だった。

そらたは黙って、ノートをのぞきこむ。
そのときだった。

「あっ……!」

なつみが、ふとページの間に何かを見つけた。

そっと指を入れて、取り出したのは、折りたたまれた一枚の紙だった。
薄くて、やや古びていて、それでも丁寧に折られている。

なつみは慎重にそれを開いた。

そこには、色鉛筆で描かれた地図があった。
手描きの地図。けれど、どこか懐かしい雰囲気がある。
なつみの家の近所。小学校。公園。川沿いの道。
そして、見慣れた場所が、いくつも描きこまれていた。

「……地図?」

そらたが小さく言った。
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