11 / 68
第2章 図書館での冒険
第11話 とじられた扉と記憶の迷宮[3]
しおりを挟む
書棚の迷宮を突き進むふたりの間に立ちはだかる古い書物に誇りを被った本棚。
キョロキョロと周囲を見渡すなつみの姿にそらたは声をそっと声をかけた。
「どうしたの?なっちゃん」
「ここ……昔、来たことある」
なつみがそっとつぶやいた。
その声には懐かしさと、ほんの少しの緊張がにじんでいた。
そらたは振り返り、小さくうなずく。
「お姉ちゃんと?」
「うん。……小さいころ、よくここに連れてきてもらったの。ふつうの図書館じゃ読めない、むずかしい本がいっぱいあるって、教えてくれた」
どことなく懐かしい匂い。
ほのかに手を引かれ案内してもらった遠い記憶。
「落ち着くから」という理由で毎度侵入してはここで本を読んでいた。
そう、ここはお姉ちゃんが好きだった場所。
「ここ……お姉ちゃんが、通ってた部屋なんだ」
なつみの指先がそっと、貼り紙に触れた。
そらたはそれ以上何も言わずに、なつみのすぐ後ろに立って、静かに見守る。
「……そらたは、帰ってもいいよ。わたし、ひとりで――」
「やだよ」
その言葉に、なつみがはっと振り向く。そらたは、彼女の目をまっすぐ見ていた。
「僕、勇者だから」
そう言って笑ったそらたに、なつみは「そらたはまほうつかいでしょ」と言わんばかりにくすりと笑った。
「じゃあ、わたしは……まほうつかいかな」
「え?なっちゃんは“ゆうしゃ”でしょ?」
「ううん。お姉ちゃんのことを、見つけに来たんだもん。“まほう”みたいな気持ちを探すの。だから、今だけは“まほうつかい”」
そらたは少しだけ驚いた顔をしてから、うなずいた。
「うん。……じゃあ、“まほうつかい”と“勇者”で行こう」
やがて、図書館の最奥――旧資料室の奥の、誰も入らないような空間にたどり着いた。
「ここ……なんだか静かだね」
「うん。でも、こわくはない」
そらたが言ったそのときだった。
棚の奥――小さな木の机の上に、一冊のノートが置かれているのが見えた。
なつみは迷わず、その机に向かって歩いていった。
そらたもあとに続く。
ノートの表紙には、色あせたマスキングテープでこう書かれていた。
『ゆうしゃのしるし』
なつみはそっと、そのノートを開いた。
最初のページにあったのは、子どもの字だった。
だけど、それは間違いなく、お姉ちゃんの字だった。
「え……これって……お姉ちゃんの……」
ノートを手に取るなつみの横でそっとそらたは見守っていた。
キョロキョロと周囲を見渡すなつみの姿にそらたは声をそっと声をかけた。
「どうしたの?なっちゃん」
「ここ……昔、来たことある」
なつみがそっとつぶやいた。
その声には懐かしさと、ほんの少しの緊張がにじんでいた。
そらたは振り返り、小さくうなずく。
「お姉ちゃんと?」
「うん。……小さいころ、よくここに連れてきてもらったの。ふつうの図書館じゃ読めない、むずかしい本がいっぱいあるって、教えてくれた」
どことなく懐かしい匂い。
ほのかに手を引かれ案内してもらった遠い記憶。
「落ち着くから」という理由で毎度侵入してはここで本を読んでいた。
そう、ここはお姉ちゃんが好きだった場所。
「ここ……お姉ちゃんが、通ってた部屋なんだ」
なつみの指先がそっと、貼り紙に触れた。
そらたはそれ以上何も言わずに、なつみのすぐ後ろに立って、静かに見守る。
「……そらたは、帰ってもいいよ。わたし、ひとりで――」
「やだよ」
その言葉に、なつみがはっと振り向く。そらたは、彼女の目をまっすぐ見ていた。
「僕、勇者だから」
そう言って笑ったそらたに、なつみは「そらたはまほうつかいでしょ」と言わんばかりにくすりと笑った。
「じゃあ、わたしは……まほうつかいかな」
「え?なっちゃんは“ゆうしゃ”でしょ?」
「ううん。お姉ちゃんのことを、見つけに来たんだもん。“まほう”みたいな気持ちを探すの。だから、今だけは“まほうつかい”」
そらたは少しだけ驚いた顔をしてから、うなずいた。
「うん。……じゃあ、“まほうつかい”と“勇者”で行こう」
やがて、図書館の最奥――旧資料室の奥の、誰も入らないような空間にたどり着いた。
「ここ……なんだか静かだね」
「うん。でも、こわくはない」
そらたが言ったそのときだった。
棚の奥――小さな木の机の上に、一冊のノートが置かれているのが見えた。
なつみは迷わず、その机に向かって歩いていった。
そらたもあとに続く。
ノートの表紙には、色あせたマスキングテープでこう書かれていた。
『ゆうしゃのしるし』
なつみはそっと、そのノートを開いた。
最初のページにあったのは、子どもの字だった。
だけど、それは間違いなく、お姉ちゃんの字だった。
「え……これって……お姉ちゃんの……」
ノートを手に取るなつみの横でそっとそらたは見守っていた。
0
あなたにおすすめの小説
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
白苑後宮の薬膳女官
絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。
ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。
薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。
静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。
12年目の恋物語
真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。
だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。
すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。
2人が結ばれるまでの物語。
第一部「12年目の恋物語」完結
第二部「13年目のやさしい願い」完結
第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中
※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
悪徳公主と冷徹皇帝陛下の後宮薬膳茶
菱沼あゆ
キャラ文芸
冷徹非道と噂の皇帝陛下のもとに、これまた悪しき評判しかない異国の王女、琳玲がやってきた。
琳玲は皇后の位は与えられたが、離宮に閉じ込められる。
それぞれの思惑がある離宮の女官や侍女たちは、怪しい薬草で皇帝陛下たちを翻弄する琳玲を観察――。
悪徳公主と冷徹皇帝陛下と女官たちの日々は今日も騒がしい。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる