絶対に笑える作者の日常・爆笑した話集

湯川仁美

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㊺ヒゲと通報と育休

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「出産・・・おめでとう・・・どうした!ヒゲ!」
夫の友人。安井弘樹は妻里美の出産2人目に伴って、1ヶ月の育休を取った。
出産祝いを兼ねてそんな安井家にお邪魔したのは土曜の昼下がり。
明日で育休が終わると嘆く弘樹を励まし、里美を応援に湯川夫妻で行った時だった。

"育休中は髭を一度も剃らない!トライアルゲームをする!子供の成長と髭の成長を楽しむ!"

そんな決意表明をした弘樹の髭は1,2㎝ほど伸びておりなんというか・・・。
172㎝、102キロ、髭のアラフォーは日本人ならば分かるだろう。
”山で一か月遭難した小太りのおじさん”
つまり”怪しい”人。

「ねー。驚くよね。髭!」
里美は呆れたように言うと、弘樹はニヤリと笑う。
弘樹は外資系企業でバリバリ働く世間的に見ても優秀な営業マン。
「髭を剃る暇があれば里美の肩を揉んだり。子供のおむつ替え、寝かしつけをする」
彼の交渉術は上手い。
里美には上手く媚を売り。
「ヒゲも生え際が1番チクチクする。ある程度、伸びてしまう方がチクチクしない」
弘樹は妻を言いくるめた。

「一昨日。事件が起きたの。聞いてくれる?」
里美はそう言うと湯川夫婦はワクワク顔で里美を見る。

***
「気分転換にお散歩に行ってくるね~」
5月半ば。
寒くもなく暑くもなく過ごしやすい気候のその日、里美は7時半にコンビニで気に入ったお菓子を変えるよう1000円札だけ持って家を出た。
「行ってらっしゃい」
弘樹は髭を伸ばす交渉として使った宣言通りせっせと家事を育児をこなす。
その日も子供は待ったなしで色んな事を要求してきた。
まずは1か月の娘だ。
彼女は起きるなり大きな声で鳴き起きたこと、おむつ替えをオーダーしてくる。
そしてその鳴き声をアラーム代わりに目を覚ますのが3歳になる息子だ。
彼は今まで両親を独占し、彼中心の生活を送っていたのに1か月前に母親が1週間消えた(出産・出産)したかと思えば見知らぬ赤子を連れて帰って来たのだ。
理解できるはずがない。

「おっ!長男はお目覚めですか。ちょっと、待ってくれ。生後1か月のお前のおむつが先だ」

弘樹はそう言って3歳の長男が動き回らないように赤子を床に下ろすと代わりにベビーサークルの中に長男をいれる。
何といっても今年の5月半ばの気温は快適で窓を開けていると涼しい風が入り込む。
そよ風よ!長男の子守りをしてくれ。機嫌を取ってくれ。
漫画やアニメでは風が吹きキャラクター達がその風になごんだり、涼んだり、癒されたりしている!
そんな風に過度な期待をするのだが現実はけしてそうならない。

「出してー!!!出してー!!!ママぁーどこぉー!たーすーけーてー!出してー!」

どこから助けてなんて言葉を覚えてきたのか。
3歳児の語彙力は素晴らしい。
弘樹は一人黙々と新生児のおむつを替え、着替えをさせ長男のご飯を用意している時だった。
パトカーのサイレンの音に折角眠った新生児が起きてしまうではないか!
国よ!国家よ!警察よ!
いやまて、その前に・・・。
事件よ!なぜ起きたんだ!朝から事件など起こさなくていいんだ!
弘樹の心が荒れそうになった時だった。

――――ピンポーン。

玄関の呼び出しインターホンに反応するのは眠ったはずの赤子。
「おぎゃー!」
うわぁ。
平日の朝の8時前に誰だ?!折角、寝たのにと弘樹の心は荒れるのだが表に出す事はない。

「はい。何の用ですか?」

俺はさっさと長男の朝ごはんを済ませて、里美が返ってくる前に風呂を洗い。
里美の朝食も準備をしなければならない。
必死なんだぞと思いながらインターホンを見ると警察が6人。
まさか!事件がこのマンションで起きているのか。

「お子さんの鳴き声と助けを求める声が聞こえると近所から通報があり。確認させてください」

「おぉ!事件は俺の家かっ!」
勿論、弘樹と里美は虐待などはしていない。
「1万件に6件くらいは虐待があるので申し訳ございません」
警察は丁寧に子供の身体検査。
家の中の整いきっているとは言えないが、荒れていない家に安心すると直ぐに退散をしようとするのだが。
「小太りで長髪、髭面。育休中で仕事にも行ってない家から子供の泣き声が聞こえたら通報しますよ。ねー。お巡りさん。育休中でも髭はそるべきでるよね?」
里美はこれ見よがしに警察を味方に付ける。
「いやぁ~。まぁ、そうですね」
警察は苦笑いをしながら帰宅。

ことの顛末を聞いた湯川夫婦はお腹を抱えて笑い出す。
「あはははははは。最高。もう、ギャグじゃない」
「日本の警察素晴らしいな」
同時に日本警察を称賛するのを忘れない。

「笑いごとじゃないぞ?折角、寝たのに起こされて一からやり直し。一人見ながら動き回る3歳児の安全確保は一体、どうしたらいい事やら。ベビーサークルに5分くらい放り込んでも虐待じゃないだろう」
弘樹はそう言うとため息をついた。
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