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7.避難
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「あんたたち、何としてでもアンリエッタを捕まえなさい! あの小娘、ただじゃ置かないわよぉ……!」
そんなお義母様の声が聞こえる頃には、私は屋敷の裏口から外へ抜け出していた。夜になると正門には施錠されているから。
「はぁはぁ……!」
お義母様に命じられた使用人たちが、どこまで追ってくるか分からない。だから街に出ても休まず、とにかく走り続けた。
夜になると酒場が店開きして、街は人々の喧騒と酒や食べ物の匂いで溢れている。街を歩く人も酔っ払いばかりで、誰も私には目もくれない。ううん、それでいい。万が一絡まれでもして、その最中に使用人たちに追いつかれたら大変だ。
行き先は決まっている。こんな私を受け入れてくれるかは分からない……けれど、頼れる場所はもうあそこしかなかった。
曲がり角にぽつんと佇む一軒の店舗。
昼間は酒の提供を禁止しているレストランで、夜になると酒とそれに合うメニューを出している。そして私の元職場でもあった。
「いらっしゃいま……ありゃ、アンリエッタ? こんな時間にどうしたの?」
「エレナ……!」
店内に逃げ込むように入ると、接客をしていたエレナとすぐに目が合った。
エレナは私の様子を見るとすぐに顔つきを変えて、
「店長、アンリエッタを店の奥に連れて行ってもいい?」
「ああ、いいぜ。顔色もひでぇし、ゆっくり休ませながら話を聞いてやんな」
店長がそう言って私に笑いかける。
店にいたお客様も昔からの常連ばかりで、「アンリちゃん、どうしたんだ!?」や「可哀想に……そんなに痩せちまって何があったんだよ!」と心配そうに声をかけてくれた。
と、一人だけ私を無言で見詰めている女の人がいる。
透けるような銀色の髪と、ルビーを彷彿とさせる鮮やかな深紅の瞳。
そして息を呑むくらい綺麗な顔立ち……思わず見とれてしまっていると、エレナに「はいはーい、こっちにおいで」と店内の奥に押し込められてしまった。
そんなお義母様の声が聞こえる頃には、私は屋敷の裏口から外へ抜け出していた。夜になると正門には施錠されているから。
「はぁはぁ……!」
お義母様に命じられた使用人たちが、どこまで追ってくるか分からない。だから街に出ても休まず、とにかく走り続けた。
夜になると酒場が店開きして、街は人々の喧騒と酒や食べ物の匂いで溢れている。街を歩く人も酔っ払いばかりで、誰も私には目もくれない。ううん、それでいい。万が一絡まれでもして、その最中に使用人たちに追いつかれたら大変だ。
行き先は決まっている。こんな私を受け入れてくれるかは分からない……けれど、頼れる場所はもうあそこしかなかった。
曲がり角にぽつんと佇む一軒の店舗。
昼間は酒の提供を禁止しているレストランで、夜になると酒とそれに合うメニューを出している。そして私の元職場でもあった。
「いらっしゃいま……ありゃ、アンリエッタ? こんな時間にどうしたの?」
「エレナ……!」
店内に逃げ込むように入ると、接客をしていたエレナとすぐに目が合った。
エレナは私の様子を見るとすぐに顔つきを変えて、
「店長、アンリエッタを店の奥に連れて行ってもいい?」
「ああ、いいぜ。顔色もひでぇし、ゆっくり休ませながら話を聞いてやんな」
店長がそう言って私に笑いかける。
店にいたお客様も昔からの常連ばかりで、「アンリちゃん、どうしたんだ!?」や「可哀想に……そんなに痩せちまって何があったんだよ!」と心配そうに声をかけてくれた。
と、一人だけ私を無言で見詰めている女の人がいる。
透けるような銀色の髪と、ルビーを彷彿とさせる鮮やかな深紅の瞳。
そして息を呑むくらい綺麗な顔立ち……思わず見とれてしまっていると、エレナに「はいはーい、こっちにおいで」と店内の奥に押し込められてしまった。
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