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32.セレスタン①
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今日は両親の命日だ。
花束を持って墓地に行く途中、すれ違った神官たちに睨まれた。
彼らは恐らく嵐の神の元神官だろう。
俺のせいで嵐の神の神官たちは全てを失った。恨まれて当然だ。
俺が違法な避妊薬をアンリエッタに飲ませていたこと。
カロリーヌの心を繋ぎ止めるために我が子を利用しようとしたこと。
それらの事実は、俺が逮捕されてからすぐに公表された。
そのせいで、嵐の神の神官全体が厳しく非難されるようになったのだ。
他の神官から元々疎まれてはいたが、俺が起こした事件がトドメとなった。
嵐の神の神殿が取り壊され、御神体を水の神の神官が保管することになった。
神官たちもその殆どが資格を剥奪された。
嵐の神の神官は当初それらを強く反対していたのだが、そんな時に事件が起こった。
御神体の一部が自壊したのだ。かつてと同じように。
そして御神体から漏れ出した神力は、数百年ぶりの大嵐に招いた。
神官たちが昼夜問わず法力を注いでも全く効果がなく、嵐はますます激しさを増していく。
だが、水の神の神官が「嵐の神の神官には任せておけない」と御神体を自分たちの神殿に移した途端、嵐はピタリと止んだ。
以前儀式の最中に封印が解けかけたのも、アンリエッタを屋敷から逃がすためだったのかもしれない。
大昔に暴れ狂い、人々を苦しめたとされる嵐の神。その理由は友人である花の神が人間に菱食されたことだった。
アンリエッタは花の神の神官……
そして嵐の神の神官は、彼女を虐げた。
俺たちの信仰する神が、俺たちを拒絶するのは当たり前のことだった。
資格を剥奪された嵐の神の神官は、惨めな思いをすることを強いられた。
周囲からの視線に耐え切れず、他国へ逃げ出した者も多い。
俺の両親は自ら命を絶っていた。
寝室で首を吊っているところを、使用人が発見したのだという。
遺書も残されておらず、二人がどのような思いでその結末を選んだのか俺には分からない。
十年前のことだった。
その間、俺はずっと独房の中で過ごしていた。
元神官だからか、扱いは割りといいほうだったと思う。
それに一週間に一度、精神医によるカウンセリングも受けていた。
最初は悪態ばかりついていた俺だったが、その言葉にも次第に耳を傾けることができるようになった。
自分がどれだけ異常者だったのか。
そのことをを自覚してからは、地獄のような日々だった。
俺は愛されることばかり考えていて、誰かを愛そうという気持ちが欠落していた。
アンリエッタやカロリーヌの気持ちなんて、どうでもいい。
ただ俺を想ってくれることが重要だった。
子供など、邪魔な存在でしかなかった。
なんと悍ましい人間なのだろう。
誰か殺してくれと、本気で願った。
だが俺に課せられたのは懲役刑で、自死する勇気もなかった。
独房の中で嵐の神の神官が存在しなくなったことや、両親の死を知らされた。
全部、全部俺のせいだ。
押し寄せる罪悪感で頭がおかしくなりそうだった。
俺にカウンセリングを受けさせたのは、こうして罪の意識を自覚させるためだったのかもしれない。
そして長い服役を終えて、俺は外の世界に出ることになった。
花束を持って墓地に行く途中、すれ違った神官たちに睨まれた。
彼らは恐らく嵐の神の元神官だろう。
俺のせいで嵐の神の神官たちは全てを失った。恨まれて当然だ。
俺が違法な避妊薬をアンリエッタに飲ませていたこと。
カロリーヌの心を繋ぎ止めるために我が子を利用しようとしたこと。
それらの事実は、俺が逮捕されてからすぐに公表された。
そのせいで、嵐の神の神官全体が厳しく非難されるようになったのだ。
他の神官から元々疎まれてはいたが、俺が起こした事件がトドメとなった。
嵐の神の神殿が取り壊され、御神体を水の神の神官が保管することになった。
神官たちもその殆どが資格を剥奪された。
嵐の神の神官は当初それらを強く反対していたのだが、そんな時に事件が起こった。
御神体の一部が自壊したのだ。かつてと同じように。
そして御神体から漏れ出した神力は、数百年ぶりの大嵐に招いた。
神官たちが昼夜問わず法力を注いでも全く効果がなく、嵐はますます激しさを増していく。
だが、水の神の神官が「嵐の神の神官には任せておけない」と御神体を自分たちの神殿に移した途端、嵐はピタリと止んだ。
以前儀式の最中に封印が解けかけたのも、アンリエッタを屋敷から逃がすためだったのかもしれない。
大昔に暴れ狂い、人々を苦しめたとされる嵐の神。その理由は友人である花の神が人間に菱食されたことだった。
アンリエッタは花の神の神官……
そして嵐の神の神官は、彼女を虐げた。
俺たちの信仰する神が、俺たちを拒絶するのは当たり前のことだった。
資格を剥奪された嵐の神の神官は、惨めな思いをすることを強いられた。
周囲からの視線に耐え切れず、他国へ逃げ出した者も多い。
俺の両親は自ら命を絶っていた。
寝室で首を吊っているところを、使用人が発見したのだという。
遺書も残されておらず、二人がどのような思いでその結末を選んだのか俺には分からない。
十年前のことだった。
その間、俺はずっと独房の中で過ごしていた。
元神官だからか、扱いは割りといいほうだったと思う。
それに一週間に一度、精神医によるカウンセリングも受けていた。
最初は悪態ばかりついていた俺だったが、その言葉にも次第に耳を傾けることができるようになった。
自分がどれだけ異常者だったのか。
そのことをを自覚してからは、地獄のような日々だった。
俺は愛されることばかり考えていて、誰かを愛そうという気持ちが欠落していた。
アンリエッタやカロリーヌの気持ちなんて、どうでもいい。
ただ俺を想ってくれることが重要だった。
子供など、邪魔な存在でしかなかった。
なんと悍ましい人間なのだろう。
誰か殺してくれと、本気で願った。
だが俺に課せられたのは懲役刑で、自死する勇気もなかった。
独房の中で嵐の神の神官が存在しなくなったことや、両親の死を知らされた。
全部、全部俺のせいだ。
押し寄せる罪悪感で頭がおかしくなりそうだった。
俺にカウンセリングを受けさせたのは、こうして罪の意識を自覚させるためだったのかもしれない。
そして長い服役を終えて、俺は外の世界に出ることになった。
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