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33.セレスタン②
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両親の墓の周りには、ゴミが散乱していた。
それを片付けてから花束を置く。
死んでからようやくまともに親孝行できるようになった。そんな息子を持った二人を哀れに思う。
いや、彼らは彼らで異常な人間だったか。
俺はそのことに気づこうともせず、アンリエッタとカロリーヌを苦しませた。
墓参りを終えて帰路についている途中、新聞を購入した。
人気のないベンチに腰を下ろし、それに目を通していく。
すると、ある記事が目に留まる。
それはクロードという他国の有名な庭師が、結婚したという内容だった。
その妻の名はアンリエッタ。
胸がざわついた。
アンリエッタとあの庭師の男は恋仲ではない。カロリーヌはそう言っていた。
けれどその後。彼は悲しみに暮れるアンリエッタに寄り添い、慰めているうちに関係を深めたのかもしれない。
怒りも悲しみもなかった。むしろよかったと安堵する気持ちのほうが強い。
アンリエッタは妊娠もしており、現在三ヶ月だという。
俺が飲ませた避妊薬の影響が、このまま起こらないことを祈りたい。
そう思いながら立ち上がった直後、一人の子供がぶつかってきた。
「あっ、ごめんおじちゃん!」
「いや、構わな……」
俺は途中で言葉を止めた。
歳は……まだ十歳ほどだろうか。その少年は、カロリーヌとどこか似た顔立ちをしていた。
まさかこの少年は……いや、そんな……
様々な考えが脳裏で交錯していると、一人の女性がこちらへ駆け寄って来た。
「こーら、エリック。走り回るなって言ったじゃない」
「ご、ごめんおばちゃん!」
少年が謝った相手を見て、思わず目を見張る。
何故なら彼女は、エレナというアンリエッタの友人だったからだ。
「エレナ……」
「あれ? あなた、私と知り合い? 初めて会ったと思うけど……」
エレナは不思議そうに首を傾げた。
長い牢獄生活で人相が変わっていたのか、俺がセレスタンだと気づいていないらしい。
「……失礼。以前、店で見かけたことがあったもので」
「あ、そうだったの。だけどごめんなさいね、この子が失礼しちゃって」
「その少年はあなたの……」
そこまで言いかけると、エレナは苦笑気味に笑った。
「エリックは赤ん坊の頃に親に捨てられちゃったみたいでね。誰かが保護して、孤児院に預けたんだって。それで週に一度、店内清掃のバイトでうちの店に来てるの」
「へへっ、おばちゃんの店結構いいとこなんだぜ? ちゃんと給料くれるし、ウマいメシも食わせてくれるし!」
二人で笑い合う姿は、端から見れば親子のようだ。
俺が泣きたい気持ちになっていると、エレナはさらに話を続けた。
「それに今孤児院に手続きしててさ。もうすぐでうちの子になんの」
「そしたら、おばちゃんじゃなくて母ちゃんって呼ばなくちゃなー」
腕を組んで悩む振りをしつつ、少年の口元は緩んでいた。
そんな少年の表情をじっと見詰めてから、俺はその場から立ち去った。
かつて愛した二人目の女性とよく似た少年。
引き取りたいと思う。あの子がいてくれるなら、寂しさを感じることはきっとないだろう。
けれど、彼が一緒にいたいと望むのはエレナだ。
俺には、その願いを無視する権利などない。
それに、父親としてあの子を愛する自信もなかった。
人を愛し、慈しむ方法が分からない。
精神医も、それだけは教えてくれなかった。
「うっ、うぅぅぁ、あぁぁぁ……っ」
だから孤独に苛まれても、こうして涙を流すことしかできない。
俺はポケットからチェーンの壊れたペンダントを取り出すと、それを強く握り締めた。
それを片付けてから花束を置く。
死んでからようやくまともに親孝行できるようになった。そんな息子を持った二人を哀れに思う。
いや、彼らは彼らで異常な人間だったか。
俺はそのことに気づこうともせず、アンリエッタとカロリーヌを苦しませた。
墓参りを終えて帰路についている途中、新聞を購入した。
人気のないベンチに腰を下ろし、それに目を通していく。
すると、ある記事が目に留まる。
それはクロードという他国の有名な庭師が、結婚したという内容だった。
その妻の名はアンリエッタ。
胸がざわついた。
アンリエッタとあの庭師の男は恋仲ではない。カロリーヌはそう言っていた。
けれどその後。彼は悲しみに暮れるアンリエッタに寄り添い、慰めているうちに関係を深めたのかもしれない。
怒りも悲しみもなかった。むしろよかったと安堵する気持ちのほうが強い。
アンリエッタは妊娠もしており、現在三ヶ月だという。
俺が飲ませた避妊薬の影響が、このまま起こらないことを祈りたい。
そう思いながら立ち上がった直後、一人の子供がぶつかってきた。
「あっ、ごめんおじちゃん!」
「いや、構わな……」
俺は途中で言葉を止めた。
歳は……まだ十歳ほどだろうか。その少年は、カロリーヌとどこか似た顔立ちをしていた。
まさかこの少年は……いや、そんな……
様々な考えが脳裏で交錯していると、一人の女性がこちらへ駆け寄って来た。
「こーら、エリック。走り回るなって言ったじゃない」
「ご、ごめんおばちゃん!」
少年が謝った相手を見て、思わず目を見張る。
何故なら彼女は、エレナというアンリエッタの友人だったからだ。
「エレナ……」
「あれ? あなた、私と知り合い? 初めて会ったと思うけど……」
エレナは不思議そうに首を傾げた。
長い牢獄生活で人相が変わっていたのか、俺がセレスタンだと気づいていないらしい。
「……失礼。以前、店で見かけたことがあったもので」
「あ、そうだったの。だけどごめんなさいね、この子が失礼しちゃって」
「その少年はあなたの……」
そこまで言いかけると、エレナは苦笑気味に笑った。
「エリックは赤ん坊の頃に親に捨てられちゃったみたいでね。誰かが保護して、孤児院に預けたんだって。それで週に一度、店内清掃のバイトでうちの店に来てるの」
「へへっ、おばちゃんの店結構いいとこなんだぜ? ちゃんと給料くれるし、ウマいメシも食わせてくれるし!」
二人で笑い合う姿は、端から見れば親子のようだ。
俺が泣きたい気持ちになっていると、エレナはさらに話を続けた。
「それに今孤児院に手続きしててさ。もうすぐでうちの子になんの」
「そしたら、おばちゃんじゃなくて母ちゃんって呼ばなくちゃなー」
腕を組んで悩む振りをしつつ、少年の口元は緩んでいた。
そんな少年の表情をじっと見詰めてから、俺はその場から立ち去った。
かつて愛した二人目の女性とよく似た少年。
引き取りたいと思う。あの子がいてくれるなら、寂しさを感じることはきっとないだろう。
けれど、彼が一緒にいたいと望むのはエレナだ。
俺には、その願いを無視する権利などない。
それに、父親としてあの子を愛する自信もなかった。
人を愛し、慈しむ方法が分からない。
精神医も、それだけは教えてくれなかった。
「うっ、うぅぅぁ、あぁぁぁ……っ」
だから孤独に苛まれても、こうして涙を流すことしかできない。
俺はポケットからチェーンの壊れたペンダントを取り出すと、それを強く握り締めた。
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