32 / 33
32.セレスタン①
今日は両親の命日だ。
花束を持って墓地に行く途中、すれ違った神官たちに睨まれた。
彼らは恐らく嵐の神の元神官だろう。
俺のせいで嵐の神の神官たちは全てを失った。恨まれて当然だ。
俺が違法な避妊薬をアンリエッタに飲ませていたこと。
カロリーヌの心を繋ぎ止めるために我が子を利用しようとしたこと。
それらの事実は、俺が逮捕されてからすぐに公表された。
そのせいで、嵐の神の神官全体が厳しく非難されるようになったのだ。
他の神官から元々疎まれてはいたが、俺が起こした事件がトドメとなった。
嵐の神の神殿が取り壊され、御神体を水の神の神官が保管することになった。
神官たちもその殆どが資格を剥奪された。
嵐の神の神官は当初それらを強く反対していたのだが、そんな時に事件が起こった。
御神体の一部が自壊したのだ。かつてと同じように。
そして御神体から漏れ出した神力は、数百年ぶりの大嵐に招いた。
神官たちが昼夜問わず法力を注いでも全く効果がなく、嵐はますます激しさを増していく。
だが、水の神の神官が「嵐の神の神官には任せておけない」と御神体を自分たちの神殿に移した途端、嵐はピタリと止んだ。
以前儀式の最中に封印が解けかけたのも、アンリエッタを屋敷から逃がすためだったのかもしれない。
大昔に暴れ狂い、人々を苦しめたとされる嵐の神。その理由は友人である花の神が人間に菱食されたことだった。
アンリエッタは花の神の神官……
そして嵐の神の神官は、彼女を虐げた。
俺たちの信仰する神が、俺たちを拒絶するのは当たり前のことだった。
資格を剥奪された嵐の神の神官は、惨めな思いをすることを強いられた。
周囲からの視線に耐え切れず、他国へ逃げ出した者も多い。
俺の両親は自ら命を絶っていた。
寝室で首を吊っているところを、使用人が発見したのだという。
遺書も残されておらず、二人がどのような思いでその結末を選んだのか俺には分からない。
十年前のことだった。
その間、俺はずっと独房の中で過ごしていた。
元神官だからか、扱いは割りといいほうだったと思う。
それに一週間に一度、精神医によるカウンセリングも受けていた。
最初は悪態ばかりついていた俺だったが、その言葉にも次第に耳を傾けることができるようになった。
自分がどれだけ異常者だったのか。
そのことをを自覚してからは、地獄のような日々だった。
俺は愛されることばかり考えていて、誰かを愛そうという気持ちが欠落していた。
アンリエッタやカロリーヌの気持ちなんて、どうでもいい。
ただ俺を想ってくれることが重要だった。
子供など、邪魔な存在でしかなかった。
なんと悍ましい人間なのだろう。
誰か殺してくれと、本気で願った。
だが俺に課せられたのは懲役刑で、自死する勇気もなかった。
独房の中で嵐の神の神官が存在しなくなったことや、両親の死を知らされた。
全部、全部俺のせいだ。
押し寄せる罪悪感で頭がおかしくなりそうだった。
俺にカウンセリングを受けさせたのは、こうして罪の意識を自覚させるためだったのかもしれない。
そして長い服役を終えて、俺は外の世界に出ることになった。
花束を持って墓地に行く途中、すれ違った神官たちに睨まれた。
彼らは恐らく嵐の神の元神官だろう。
俺のせいで嵐の神の神官たちは全てを失った。恨まれて当然だ。
俺が違法な避妊薬をアンリエッタに飲ませていたこと。
カロリーヌの心を繋ぎ止めるために我が子を利用しようとしたこと。
それらの事実は、俺が逮捕されてからすぐに公表された。
そのせいで、嵐の神の神官全体が厳しく非難されるようになったのだ。
他の神官から元々疎まれてはいたが、俺が起こした事件がトドメとなった。
嵐の神の神殿が取り壊され、御神体を水の神の神官が保管することになった。
神官たちもその殆どが資格を剥奪された。
嵐の神の神官は当初それらを強く反対していたのだが、そんな時に事件が起こった。
御神体の一部が自壊したのだ。かつてと同じように。
そして御神体から漏れ出した神力は、数百年ぶりの大嵐に招いた。
神官たちが昼夜問わず法力を注いでも全く効果がなく、嵐はますます激しさを増していく。
だが、水の神の神官が「嵐の神の神官には任せておけない」と御神体を自分たちの神殿に移した途端、嵐はピタリと止んだ。
以前儀式の最中に封印が解けかけたのも、アンリエッタを屋敷から逃がすためだったのかもしれない。
大昔に暴れ狂い、人々を苦しめたとされる嵐の神。その理由は友人である花の神が人間に菱食されたことだった。
アンリエッタは花の神の神官……
そして嵐の神の神官は、彼女を虐げた。
俺たちの信仰する神が、俺たちを拒絶するのは当たり前のことだった。
資格を剥奪された嵐の神の神官は、惨めな思いをすることを強いられた。
周囲からの視線に耐え切れず、他国へ逃げ出した者も多い。
俺の両親は自ら命を絶っていた。
寝室で首を吊っているところを、使用人が発見したのだという。
遺書も残されておらず、二人がどのような思いでその結末を選んだのか俺には分からない。
十年前のことだった。
その間、俺はずっと独房の中で過ごしていた。
元神官だからか、扱いは割りといいほうだったと思う。
それに一週間に一度、精神医によるカウンセリングも受けていた。
最初は悪態ばかりついていた俺だったが、その言葉にも次第に耳を傾けることができるようになった。
自分がどれだけ異常者だったのか。
そのことをを自覚してからは、地獄のような日々だった。
俺は愛されることばかり考えていて、誰かを愛そうという気持ちが欠落していた。
アンリエッタやカロリーヌの気持ちなんて、どうでもいい。
ただ俺を想ってくれることが重要だった。
子供など、邪魔な存在でしかなかった。
なんと悍ましい人間なのだろう。
誰か殺してくれと、本気で願った。
だが俺に課せられたのは懲役刑で、自死する勇気もなかった。
独房の中で嵐の神の神官が存在しなくなったことや、両親の死を知らされた。
全部、全部俺のせいだ。
押し寄せる罪悪感で頭がおかしくなりそうだった。
俺にカウンセリングを受けさせたのは、こうして罪の意識を自覚させるためだったのかもしれない。
そして長い服役を終えて、俺は外の世界に出ることになった。
あなたにおすすめの小説
妹の方がかわいいからと婚約破棄されましたが、あとで後悔しても知りませんよ?
志鷹 志紀
恋愛
「すまない、キミのことを愛することができなくなった」
第二王子は私を謁見の間に連れてきて、そう告げた。
「つまり、婚約破棄ということですね。一応、理由を聞いてもよろしいですか?」
「キミの妹こそが、僕の運命の相手だったんだよ」
「そうですわ、お姉様」
王子は私の妹を抱き、嫌な笑みを浮かべている。
「ええ、私は構いませんけれど……あとで後悔しても知りませんよ?」
私だけが知っている妹の秘密。
それを知らずに、妹に恋をするなんて……愚かな人ですね。
【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね
との
恋愛
離婚したいのですか? 喜んでお受けします。
でも、本当に大丈夫なんでしょうか?
伯爵様・・自滅の道を行ってません?
まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。
収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。
(父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる)
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
ただ誰かにとって必要な存在になりたかった
風見ゆうみ
恋愛
19歳になった伯爵令嬢の私、ラノア・ナンルーは同じく伯爵家の当主ビューホ・トライトと結婚した。
その日の夜、ビューホ様はこう言った。
「俺には小さい頃から思い合っている平民のフィナという人がいる。俺とフィナの間に君が入る隙はない。彼女の事は母上も気に入っているんだ。だから君はお飾りの妻だ。特に何もしなくていい。それから、フィナを君の侍女にするから」
家族に疎まれて育った私には、酷い仕打ちを受けるのは当たり前になりすぎていて、どう反応する事が正しいのかわからなかった。
結婚した初日から私は自分が望んでいた様な妻ではなく、お飾りの妻になった。
お飾りの妻でいい。
私を必要としてくれるなら…。
一度はそう思った私だったけれど、とあるきっかけで、公爵令息と知り合う事になり、状況は一変!
こんな人に必要とされても意味がないと感じた私は離縁を決意する。
※「ただ誰かに必要とされたかった」から、タイトルを変更致しました。
※クズが多いです。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※独特の世界観です。
※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
もう愛は冷めているのですが?
希猫 ゆうみ
恋愛
「真実の愛を見つけたから駆け落ちするよ。さよなら」
伯爵令嬢エスターは結婚式当日、婚約者のルシアンに無残にも捨てられてしまう。
3年後。
父を亡くしたエスターは令嬢ながらウィンダム伯領の領地経営を任されていた。
ある日、金髪碧眼の美形司祭マクミランがエスターを訪ねてきて言った。
「ルシアン・アトウッドの居場所を教えてください」
「え……?」
国王の命令によりエスターの元婚約者を探しているとのこと。
忘れたはずの愛しさに突き動かされ、マクミラン司祭と共にルシアンを探すエスター。
しかしルシアンとの再会で心優しいエスターの愛はついに冷め切り、完全に凍り付く。
「助けてくれエスター!僕を愛しているから探してくれたんだろう!?」
「いいえ。あなたへの愛はもう冷めています」
やがて悲しみはエスターを真実の愛へと導いていく……
◇ ◇ ◇
完結いたしました!ありがとうございました!
誤字報告のご協力にも心から感謝申し上げます。
初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。
梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。
王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。
第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。
常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。
ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。
みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。
そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。
しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。
【完結】都合のいい女ではありませんので
風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。
わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。
サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。
「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」
レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。
オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。
親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです
よどら文鳥
恋愛
貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。
どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。
ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。
旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。
現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。
貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。
それすら理解せずに堂々と……。
仕方がありません。
旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。
ただし、平和的に叶えられるかは別です。
政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?
ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。
折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――