神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎

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 僕はマール王からの頼みで王国全土をカバーするホーリーシールドの作成に取り掛かった。

 そして、その準備として商業ギルドへ出向いて石工職人に設計図を渡し、大きな四角錐のオベリスクの製作を依頼する。

「高さ100Mのモノですが」
「はっは、ちょろいちょろい!この程度のものなら1月で出来ますよ」

 図面を見せながら言うと髭面の組合長は余裕の口ぶりで言う。

「それは有難い、よろしくお願いしますね」

 僕は王都の中心にそれを建てる予定でマールに許可を貰った。

 それから精霊の力をフルに使い、王国全土の山々の山頂の位置を正確に計算し、それぞれの位置関係を図面に起して使用するホーリー魔宝玉と転送玉の量を綿密に算出していく。

 全体を設計し終えてマールに報告すると、それは以前想定していたよりも少ない資源の使用で完成することが解り彼は喜んだ。

「実に素晴らしい……しかし、なぜ君にはそれが出来ると解るのだ?」
「僕は元々鑑定師ですから」
「鑑定師というのは凄いものなのだな」

 マールは僕の目を見て言った。
 構造の解析や設計は僕の本業である。

「それと、今日判明した事を知らせに来ました」
「ん?なんだい?」
「ドラゴンの集団が帝国からやって来ています」
「なんだと」

 マールの顔色が直ぐに変わる。ドラゴンなんていう怪物は普通は自分の住み家から出てこないのだ。それが集団で巣を出てやってくると言うのは異例も異例だ。

「それに甲殻系のモンスターも複数いるようです、バースト火炎弓部隊と、ホーリー部隊を街道に派遣すべきでしょう」
「うぬ、そうしよう!」
「王都の城壁部隊にも持たせた方が良いと思われます……」

 飛龍が追加でやってくる事を警戒して、最後に僕が付け加えた。
 マールがセスを呼ぶと早速迎撃部隊を派遣させる。

 僕は急ぎ屋敷に戻ってアイテム類の製造にとりかかった。



 翌日、屋敷の連絡約のサムから連絡が入り僕は王宮に向かった。

「おはよう、ニース君」
「ニアから連絡が入ったそうですが」
「そうなのだ、セスによればニアは公国の救援に成功してそのまま帝国の潜入調査を行ったようだ」

 マールは嬉しそうに言う。たった5人の戦士が一国の危機を救うというのは、派遣した彼にとっても驚きであり、そして誇りであった。

「何か判りましたか?」
「うむ、公国に攻め入っていたのは帝国兵のアンデッドだ」
「……となると、間違いなく帝国の中枢は魔使に汚染されていますね」

 推測では魔使によって汚染され、帝国兵がアンデッドに作り変えられて公国に侵略した。
 王国に来なかったのは我々の戦力を事前に把握していたからだろう。武装したアンデッドごときではバースト火炎弓の餌食になるだけと知っているのだ。

 そして、今回僕の探知力に引っかかったドラゴンと甲殻系の鈍足なモンスターの集団は魔使によるものだと考えられた。

「では、ホーリーシールドの製作を急ぎましょう」

「よろしく頼む」

 僕はその報せを受けて更に力が入り、急ピッチでホーリー魔宝玉の製作を進めた。

 屋敷ではカレンやリーサの2人も僕の作業を手伝ってくれる。
 けれど、カッツ達は王国の防衛の為に街道の防衛隊の補助に駆り出されていた。

「カッツ達は大丈夫なのだろうか……」

 カレンは、自分の弟子のようになっていたカッツを心配していた。
 カレンからしたらアイテムを装備しないカッツはまだまだ下級の戦士に見えていたのだ。

「フル装備だから心配には及ばないよ」
「だからこそ、気になるのよ」

 僕が大丈夫だと言うとリーサが代わりに答える。
 カッツが戦功を急いでいるように2人には見えていたのだ。

 実際、最強装備を手に入れたカッツは舞い上がっていて、その力を見せたくて仕方ないのだろう事は僕にも判った。

 けど、カッツはこれまでも散々クエストをこなして来ているのである。

 未経験のようなドジは踏むまい、と僕は楽観した。

「カッツの事が心配かい?」
「は!……いや、何て言うか……」

 カレンは自分の中の変化に戸惑っていた。これまでのカレンだったら弱者は死ぬのが当たり前だ!で全て切り捨ててきていた。
 それだけに、カレンのパーティーに集まって来た最強のスカウトとモンクの2人も戦闘の実力だけある尖った奴らだったのだ。

「うふふ、カレンちゃんは優しい子になったの」

 リーサがそう言うとカレンが真っ赤になっている。

 僕はこんなカレンを見たことが無くて、今の僕達の関係が凄く気に入っていた。

「僕もそう思う、カレンちゃんは可愛くなったよ」
「な!……そんな事はないだろう」

 カレンはわざと男言葉を使い恥ずかしがる。
 その姿も僕には可愛らしく見えていた。

「ふふ」

 思わず「二人とも大好きだぞ」と言おうとしている自分に気がつき、口を閉じた。
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