婚約破棄された公爵令嬢は真の聖女でした ～偽りの妹を追放し、冷徹騎士団長に永遠を誓う～

第25話: 最終対決

 第25話: 最終対決

王宮の中央広間は、異様な緊張に包まれていた。

すべてが決着する日。

王妃イザベラの主宰で、正式な「王国危機審議会」が開かれていた。  
貴族、重臣、民の代表さえ招かれ、広間は満席。

中央にアプリリアが立つ。  
黒髪を優雅にまとめ、白いドレスに聖女の紋章を纏った姿は、神聖そのもの。

隣にガイア。  
銀髪の騎士団長は、剣を腰に、アプリリアを守るように立っていた。

玉座の近くに、ルキノ。  
憔悴しきった顔で、俯いている。

そして、鎖で繋がれたエテルナ。  
追放判決はすでに下されていたが、  
最後の「王国への脅威」として、公開審議の場に引き出されていた。

王妃が、厳かに宣言した。

「本日、ここにすべての決着をつける。  
アプリリア・フォン・ロズウェルは、真の聖女として王国を救った。  
一方、ルキノ・エドワード王太子の判断ミスと、エテルナの陰謀は、王国を危機に陥れた」

重臣たちが、頷く。

アプリリアが、静かに前に出た。

「王妃様、皆さん。  
私は、復讐のためにここに立っているわけではありません。  
ただ、王国を、正しい道に戻したいだけです」

その言葉に、民の代表たちが歓声を上げる。

ルキノが、ゆっくりと立ち上がった。

「アプリリア……俺は、もう弁解しない。  
お前の言う通りだ。  
俺は、王太子として不適格だった」

彼は、玉座の前に進み出た。

そして――  
膝をついた。

「王位継承権を、放棄する。  
俺は、民の信頼を失った。  
王国を、守れない」

広間が、どよめいた。

王妃が、驚きの声を上げる。

「ルキノ……本気か？」

ルキノは、深く頭を下げた。

「本気です。  
アプリリアを捨て、エテルナの嘘に惑わされ、  
魔物の脅威を招いたのは、俺の無能さです」

エテルナが、鎖を鳴らして叫んだ。

「ルキノ殿下！ どうして！  
私を、見捨てるの！？」

ルキノは、エテルナを見なかった。

「エテルナ。  
お前が、俺を騙した。  
すべてを、壊した」

エテルナの顔が、絶望に歪む。

彼女は、アプリリアに向かって這い寄ろうとした。

「お姉様……許して……  
もう、なんでもするから……  
跪くわ！ ここで、跪くから！」

エテルナは、鎖を引きずりながら、アプリリアの足元に膝をついた。

「ごめんなさい！  
嫉妬して、嘘をついて、  
あなたを傷つけて……  
許してください！」

涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、  
床に額を擦りつける。

ヴェゼルの姿は、もうない。  
彼女はすでに、家族と共に王都を追われていた。

アプリリアは、静かにエテルナを見下ろした。

「エテルナ。  
あなたが跪くのは、私の前じゃない。  
王国と、民の前よ」

エテルナが、震えながら民の方を向いた。

「皆さん……ごめんなさい……  
私が、偽りの聖女で、王国を混乱させて……」

民の代表たちが、冷たい視線を投げる。

「裏切り者め！」  
「聖女様を傷つけた罪は、重い！」

エテルナは、完全に崩れ落ちた。

ルキノも、再び頭を下げた。

「アプリリア。  
お前が、王国を救った英雄だ。  
俺は、もう何も言えない」

アプリリアは、聖女の力を放った。

眩い光が、広間を満たす。

光は、王宮全体を包み、  
残っていた魔力の残滓を、すべて浄化する。

同時に、民の傷ついた心をも、優しく癒す。

民たちが、涙を流す。

「聖女様……！」  
「ありがとう……！」

アプリリアの声が、広間に響く。

「私は、復讐のために力を得たわけではありません。  
皆を、守るために」

王妃が、立ち上がり、宣言した。

「ルキノ・エドワードの王位継承権剥奪を、承認する。  
後継は、重臣会議で選ぶ。  
アプリリア・フォン・ロズウェルは、王国の守護聖女として、永遠に讃えられる」

ルキノとエテルナは、  
完全に跪かされた。

ルキノは、王族の地位を失い、  
隠棲を命じられる。

エテルナは、永久追放。

二人は、アプリリアの足元で、  
ただ震えるだけ。

アプリリアは、優雅に一礼した。

「これで、すべて終わりました」

ガイアが、アプリリアの手を取る。

ゼストが、妹を抱きしめる。

リオが、涙を流しながら拍手。

民の歓声が、王宮を震わせる。

「聖女様！ 万歳！」

最終対決は、  
剣ではなく、光で決着した。

アプリリアは、誰も傷つけず、  
ただ真実と力で、  
ルキノとエテルナを跪かせた。

英雄として、讃えられた。

広間の空は、  
清々しい光に満ちていた。

ザマアのクライマックス。

読者の満足が、頂点に。

アプリリアの瞳に、  
穏やかな勝利の光。

これで、復讐は完結。

あとは、  
幸せだけ。

ガイアの隣で。

王宮の鐘が、  
新しい時代の始まりを告げた。