永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾

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第24話 王が選び、少女が見送る

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第24話 王が選び、少女が見送る


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 王都は、久しぶりに忙しそうだった。

 だがそれは、混乱ではない。
 争いでも、騒乱でもない。

 ――**「決めるための忙しさ」**だった。

     ◆ ◆ ◆

 アルフェリット・ロワイヤルは、執務室で一人、地図を眺めていた。

 イソファガス領。
 南部農業地帯。
 王都周辺の魔導研究区画。

(……全部、動いている)

 キクコが引いたあとも、国は止まらなかった。
 完璧ではない。
 失敗も、摩擦もある。

 だが、それでいい。

(彼女がいなければ回らない国なら、
 最初から壊れていたんだ)

     ◆ ◆ ◆

 扉が叩かれる。

「陛下、評議会が揃いました」

「通してくれ」

 アルフェリットは椅子に深く腰を下ろし、
 国王としての顔を作った。

     ◆ ◆ ◆

 評議会の議題は、ひとつ。

「キクコ・イソファガスの今後の扱い」

 誰もが慎重だった。
 発言は遠回しで、言葉は濁る。

「功労者として、名誉職を……」
「王宮顧問として籍だけでも……」
「婚姻による安定を……」

 アルフェリットは、静かに手を上げた。

「――却下します」

 一瞬、空気が凍る。

「彼女は、王宮に縛られる存在ではない」

「しかし陛下、それでは――」

「それでは、何だ?」

 アルフェリットは、淡々と続けた。

「彼女がいなければ不安だというなら、
 それは我々が未熟だという証拠だ」

     ◆ ◆ ◆

「私は決めました」

 王は、はっきりと言った。

「キクコ・イソファガスを、
 “特別な存在”として扱うのを、やめます」

 ざわめき。

「功労者ではある。
 だが、監視対象でも、切り札でもない」

「ただの――」

 一呼吸。

「自由な一個人です」

     ◆ ◆ ◆

 その決断は、王都に静かに広がった。

 派手な布告はない。
 英雄譚も作られない。

 ただ、空気が変わった。

「……もう、頼れないらしいぞ」
「じゃあ、自分たちでやるしかないな」

 それだけだった。

     ◆ ◆ ◆

 数日後。

 イソファガス領。

 庭で紅茶を飲んでいたキクコの元へ、
 一通の手紙が届いた。

 差出人は、アルフェリット。

 短い文章。

『私は、王として立ちます。
 貴女がいなくても回る国を作ります。
 だから――
 貴女は、貴女のままでいてください』

     ◆ ◆ ◆

「……やっと、合格かしらね」

 キクコは、小さく笑った。

 胸の奥が、少しだけ軽くなる。

「これなら……」

 空を見上げる。

「私が“選ばなくても”いい未来が、
 ちゃんと来る」

     ◆ ◆ ◆

 夕方。

 ファイエルとレオンが剣の稽古を終え、
 息を整えている。

「師匠」

「なに?」

「王、立派ですね」

「ええ」

「……少し、寂しそうでした」

 キクコは、目を細めた。

「それでいいのよ」

「え?」

「誰かが大人になるときって、
 だいたい、少し寂しいものなの」

     ◆ ◆ ◆

 夜。

 日記に、一文だけ書く。

――王は、王になった。
――私は、私のまま。

 ペンを置き、灯りを消す。

 永遠の十七歳は、
 誰にも選ばれず、
 誰も選ばず――

 それでも確かに、
 自分の居場所を守り続けていた。

 物語は、後半へ。
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