永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾

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第38話 暴かれた“正義”

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第38話 暴かれた“正義”

 夜明け前の王都は、ひどく静かだった。

 霧が石畳を這い、街灯の灯りが滲む。
 だがその静けさは、平穏ではない。
 ――嵐の前触れだ。

     ◆ ◆ ◆

 王城・地下監察室。

 拘束された数名の男たちが、鉄柵越しに俯いていた。
 彼らは昨夜、一斉に摘発された“信仰団体”の中核。

「……我々は、正義のために動いていたのだ」

 ひとりが震える声で言った。

「不老の存在は、世界の理から外れている。
 放置すれば、必ず災いを呼ぶ!」

 その言葉を、アルフェリットは冷ややかに見下ろしていた。

「だから、誘拐と暗殺未遂が“正義”になると?」

「必要な犠牲だ!」

     ◆ ◆ ◆

 その瞬間、監察室の扉が開いた。

 ゆっくりと足音を立てて現れたのは、キクコだった。

 深い影を纏うような佇まい。
 だが、その表情は静かで、感情が読めない。

「……三百年前にも、同じことを言われたわ」

 その声に、男たちが顔を上げる。

「“理から外れた存在は、排除すべきだ”って」

     ◆ ◆ ◆

「結果はどうなったと思う?」

 キクコは淡々と続ける。

「私を排除しようとした国は、例外なく滅んだわ。
 私が復讐したからじゃない。
 ――正義を口実に、人を壊したから」

 男たちは、言葉を失った。

     ◆ ◆ ◆

「あなたたちの正義は、世界を守るためじゃない」

 キクコの瞳が、冷たく光る。

「“理解できないものを消したい”
 ただそれだけ」

     ◆ ◆ ◆

 アルフェリットは、一歩前に出た。

「この国は、恐怖で秩序を保たない」

「だが、陛下!」

 別の男が叫ぶ。

「もし彼女が本当に……!」

「もしも、で国は裁かない」

 きっぱりとした声。

「行為で裁く。
 君たちは、罪を犯した。それだけだ」

     ◆ ◆ ◆

 監察官が合図し、男たちは連行されていく。

 扉が閉まり、室内には二人だけが残った。

     ◆ ◆ ◆

「……やりすぎたかしら」

 キクコが、ぽつりと呟く。

「いいや」

 アルフェリットは即答した。

「必要だった。
 “正義”を名乗る連中には、現実を突きつけなければならない」

 キクコは、少し驚いたように彼を見る。

「王様、ずいぶん割り切ってるわね」

「君に教えられた」

     ◆ ◆ ◆

 そのとき、監察官が戻ってきた。

「陛下。
 団体の記録から、もう一つ判明しました」

「何だ?」

「彼らは、“公開の場”を準備していました」

 空気が、一気に張りつめる。

「公開……?」

「はい。
 “不老の聖女を白日の下に晒す儀式”を」

     ◆ ◆ ◆

 キクコは、静かに目を閉じた。

「……来たわね」

 三百年の間、何度も避けてきた局面。

 隠れるか、
 消すか、
 あるいは――

     ◆ ◆ ◆

 アルフェリットは、彼女を見た。

「逃げるか?」

「逃げない」

 即答だった。

「でも、暴れもしない」

 扇子を閉じ、まっすぐ前を見る。

「――今度は、あなたが王として選びなさい」

     ◆ ◆ ◆

 “正義”を暴いた先に残されたのは、
 避けられない“公開”という選択。

 永遠の十七歳が隠れ続ける時代は、
 終わりを告げようとしていた。

 次に問われるのは――
 真実を、誰が、どう語るのか。

――第39話へ続く。
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